第五章 Wave Of Mutilation
第五章 Wave Of Mutilation①
数字という
人を生かす事もあれば、人を殺す事もある。
幸せにする事もあれば、不幸にする事もある。
指針になる事もあれば、迷わせる事もある。
ホールデン・ドハーティ。
[残高《マイナス》99億6450万ルード]
「はぁ……」
ホールデンは今数字に殺されそうになっていた。もちろん精神的にではあるが。それは頭にマイナスがついてしまっていることに起因する。これがプラスであったのならどれだけ幸せになるのだろうかなどと
ちなみに今日が、ホールデンが入社して3回目の給料日であったが、すでに手元には3万7830ルードしかなかった。毎月どれだけ
「はぁ……」
何回しても
この3ヶ月で様々な
「腹減ったな……」
ホールデンは
「相変わらずさもしいわね」
と、スメルだけの食事をしているホールデンの後ろからメグが声をかける。
「ほっとけ。俺だって好き好んでこんな事やっている訳じゃない。あっちに行きやがれ」
ホールデンはメグに向き合いもせず、ぞんざいに
「はぁ……仕方がないわね。こんな事されたんじゃ、同じ
「
ホールデンは
「……アンタ、プライドってモノはないの?」
「プライド? なにそれ?」
「まぁこんな所で立ち話もなんだから飯食いながらそのお願いってやつを聞く事にしよう」
「おごるのは今すぐじゃないわよ?」
「えっ!?」
「今日の夕方私の荷物持ちをした後ね」
「パシリかよ! 俺はお前の
「課長に買い物を
「……そのかわり、店は俺に決めさせろよ?」
「問題ないわ。それじゃ、今日の17時に時計
「わかった。17時な」
そう言うとメグはどこかに行ってしまった。ホールデンは引き続き定食屋の
◆◆◆
「やぁ、ホールデン君お昼何食べたの?」
と、横合いからサリーがいつもの
「なんも食ってねーよ」
ホールデンは
「それはまたどうして? ダイエットでもしてるの?」
サリーに悪気は無いようだが、ひどく腹が立つ。しかし、ここで
「……まあそんなとこだ」
「ダイエットは体に良くないからほどほどにね」
「ああ。
そんな茶番の様なやりとりをしていると、先ほどの歩く宝箱の男が席を立ち部屋から出て行った。
「あの人、ヴァリス・ラニスターだね。顔色悪いけどどうしたのかな?」
「……有名な
「あれ、ホールデン君知らないの?」
「ああ、あの身なりからして成金だってことはわかるけどな」
「一代で今のラニスター・インクを築いたやり手だよ。主に小麦粉とヒヒイロカネ、ミスリル、オリハルコン等の
「なぜに
「飲食店も経営しているからじゃないかな? ラニスター・インクのパンは今大人気で行列ができているよ」
パン屋と聞いてホールデンの腹は空腹を思い出したかのように鳴った。
「へぇ。そんな有名人がなんの依頼を持ってきたんだろうな」
「もしかしてラニスター氏の
「……最近、誘拐が
「そうだね。例の事件全然手がかりも何も
この3ヶ月で、クートヴァス内では誘拐が
2人がそんな事を話していると、課長から招集がかかる。
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