第三章 Absolute Beginners④
「で? 社長どういうつもりですか?」
新入社員が全員出て行った後、カースティは
「どうって? 一体何の事だ?」
「あの
カースティは手を
「……脆弱だって?」
ヴィンセントは不敵に口を
「社長……?」
「いいかカースティ。俺の今まで出会ってきた固有職を
煙草を乱雑に
「全員
「……あいつが化け物? そうは見えませんが」
「ホールデンが化け物かどうかはこれから見ようじゃねーか。使えればよし、使えなければあいつの価値はそれだけのものだったつーことだな」
ヴィンセントは肩をすくめ、いつもの調子に
「そういう事ですか。ならとりあえずは様子見ということですね」
「まっアイツが固有職だからとったわけじゃねーんだけどな」
ヴィンセントは小さくつぶやいた。
「では、私は業務があるので失礼します。社長、今日はちゃんと仕事してくださいよ」
カースティは小言を言い、部屋から出て行く。
ヴィンセントはそれに手をひらひらさせて
「見せてもらおうじゃねーか。お前の価値ってやつをよ」
心底楽しいといった表情でそうつぶやくと、会議室の
◆◆◆
「──ラロケット・インク
「──
「──シス・インクの荷物
その部屋の中は戦場だった。
1階の一番大きい部屋にある
ラロケット・インク
そんなラロケット・インクの主力事業に回されたのは、サリー、メグ、ティア、そしてホールデンであった。
「で、俺たちはどうすればいいんだ」
ホールデンは誰に言うでもなくつぶやいた。
4人が部屋に入室するとすぐに『今手が
「……ホールデン。
「ああ。そうだな。もうお前が期待している様な男じゃなくなっただろ。これで少しは自分の気持ちと向かい合えるんじゃないか」
「……なぜそんな
「いや、お前無駄って……せっかく俺っていう
「……そんな人生の無駄
「相変わらずブレないやつだな。じゃ、がんばってその優秀な子孫を残せそうな奴を探してくれよ」
ホールデンが至極適当に手をブラブラさせて言うと、ティアは
「……期限は半年」
「はい?」
「期限は半年。貴方の固有職【遊び人】の真価を見定める期間」
「な、なんだよそれ……?」
「……この期間内で貴方の価値が認められれば、貴方は私と
「そこに俺の意思は全く
「……貴方に
ホールデンはただでさえ大変な
そんなやり取りをしていると、
「うぃーす。お前ら何でそんな
くわえ煙草でヴィンセントがのろのろと中に入ってきた。
「……ラロケット社長」
ティアがヴィンセントを呼ぶと、静かに
「……ったく。どこもかしこも禁煙禁煙って、
肩身が狭くなるなどと
「小さくなってるって当たり前だろ! ここにきてからその辺にテキトーにいてくれって言われたきり放置されてんだからな!」
ホールデンは昨日のノリのままヴィンセントに
「まぁまぁ、そう興奮すんなっての。皆忙しいから新人の相手はしてられねーってわけさ。でだ、この
「お久しぶりです。ラロケット様。これからご指導ご
メグはどうやらヴィンセントに会った事があるらしく、
に一礼した。
「昔みてーに『おじさん』て呼んでくれよ。俺は様づけされるような大層な人間じゃねーっての。つーかしばらく見ないうちにイロイロな所が成長したなーメグちゃん」
へらへらした
「しっかしなぁ、ホールデンさんよぉ。こんな上物中の上物のクチビルを
ヴィンセントは軽口のつもりで言っているが、メグの顔がどんどん赤らんでいく。
「ちょっ! おじ様何を!」
「おい! 社長がそんなセクハラ発言していいのかよ!」
ホールデンとメグは
メグは1つ
「相変わらずですね。ちょっとびっくりしました。思い返せば〝
メグにしては
「メグちゃんにはかなわねぇな……」
とヴィンセントは困った様に
「見ての通りこの2人は面識があんだけど、
ヴィンセントがそういうと
「僕はサリー・バーンズと申します。社長に
「おー。お前がサリー・バーンズか。国王と同じく【勇者】が
「
「そんなに
サリーはその言葉に深く
次いでティアが静かに自己紹介を始める。
「……ティア・ラブ・ヒューイット。クートヴァス・インクから出向してきた。よろしく」
「おいおい。今年の新人はどうなってるんだ。
ヴィンセントのその相変わらずな発言にティアは別段なんのリアクションもしない。
「……で、おっさん、俺らは何をすればいいんだ?」
「まぁそう
ヴィンセントは
「お前らにはこの依頼をやってもらう事になった」
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