第二巻 序章 深遠な夜への長い旅路
序章 深遠な夜への長い旅路①
(な、なんで……こんな事に……)
現在時刻は夜半過ぎ。
自室の
目の前には
「ちょ、ちょっと待ってくれって……」
「
身長が高く、スラッとした手足、出るところは出ており、非常に
「おねーちゃん、かわいそうデスよ。そんなに
身長が低い方の少女は口では
「ヒィイ!」
その切っ先に本気の殺意が
(な、なんてこった……少し
話は10日前に
「腹減った……」
ホールデンは昼時の第1区画を、腹を鳴らしながら歩いていた。昼飯時なので飲食店からはいい
「アンタ……お店の前で匂いを
「ふふふ……」
不敵な
「ハハ! 今日はそんなみみっちい事はしない! なぜなら金があるからだ!」
腹が減りすぎてついに頭が変になったのかと、メグは気の毒そうにホールデンを見る。
「なんだよ、その目は! これを見やがれ!」
ホールデンは
「ア、 アンタ……いくらお金がないからって、
「なんで、盗んだことが前提なのっ!? 違うから!この金は俺が
「……そういう
メグはホールデンの首根っこを
「いやいやいや! どんだけ信用ないんだよ俺は!」
ホールデンはメグの
「給料を全部
「……アンタ確か毎月どれだけ稼いでも手元に3万7830ルードしか残らないのよね? どうせ払うなら一度自分の手元に入れる意味あるの?」
「
「……それって結局自分の首を
メグは呆れた顔でホールデンを見て言うが、その言葉はホールデンに届いていなかった。
「フハハ! 俺は天才だ! どれ、
「……はぁ。典型的な庶民はアンタでしょうが」
メグのボヤキは、テンションが高いホールデンの耳には届かなかった。
金がある生活を初めて送ったホールデンは気が大きくなり、
そんなある意味シアワセな生活を送っていたある日の夜。自室で
「る……」
ベッドから身を起こすホールデン。
「ずーるっ♫ずーるっ♫ずーるっ♫」
「なんだ……どんどん音が近く……」
ホールデンは扉の前まで移動する。その
「いててて……な、なんだ……何が起き……」
ホールデンは
「ホールデン君、
「おねーちゃん……そんな乱暴な言葉
次いで舌ったらずな声が
電気がついていない暗い部屋なので、相手の顔は見えない。しかし、声からその人物が2人で、両方ともに若い女性ということだけはわかった。
「もう10日の
窓から
「ちょ、ちょっと待ってくれって……」
「
「おねーちゃん、可哀想デスよ。そんなに脅したら」
身長が低い方の少女は口ではかわいそうと言うが、手に持つイカつい死神の鎌を連想させる大鎌をホールデンの首元にかざしている。
「ヒィイ!」
(な、なんてこった……少し魔が差しただけなのに、どえらい事になっちまった……)
「は、払いたいけど……もうお金がありません……」
(助けてくれるの……か?)
「そうなんデスね。ホールデンちゃんお金ないデスか……かわいそうデス……」
そう言いつつも
「メアリーちゃん、待って!すぐに
身長が高い方の子が手でメアリーと呼ばれた子を止める。
「そうデスよね、かわいそうなホールデンちゃんにはチャンスを与えましょうネ」
チャンスと言っているが大鎌をホールデンの首にかけたままだ。ホールデンはあまりのことに
「さて、ホールデンくん?
身長が高い方が長く細い指をホールデンの顔に妖しく
「ひゃ、ひゃい……」
「国が定めた返済計画だと、どれだけ稼いでも手元に3万7830ルードが残るように設定されているよねぇ? 今月、ホールデンくんの給料は80万5500ルード。だから今月の返済分は76万7670ルードになるわ」
「す、すみません……先ほどもお伝えしたんですが、もうお金がない……」
ホールデンは
「……あらあらあら? アタシのこと
「ヒィィ! そんな事全然
「ホールデンちゃんもこんなに
(怯えてんのはお前の大鎌が俺の命を
「うふふ。そんなに
(ギャンギャンに感じてるよ!! 死の危険をなぁああああ!!)
「貴方にお金がないのは
「か、快楽でつか……」
「貴方が今月
「ぶふっ!! 307万680ルードぉぉぉぉぉぉ!?」
「ウチの国では借金の
「ヒサンってなんなんだよぉ!
「ホールデンちゃん、ヒサンって日に3割の利息って意味デスよ」
「日に3割!? な、なんだよその暴利は!!」
姉の方の、小さい2つの鎌がホールデンの
「ホールデン君、これは
「ヒサンは
「し、心配も何もすでにとんでもない金額だし……」
「貴方はこれを毎日返していく義務があるの。今月中に遅延料を含めた金額を返済できない場合、
「……か、体を使う?」
ホールデン君は
「正直、ソレは私も
「はい!
直立不動になりハキハキと返答した。そんなホールデンの首元に大
「ホールデンちゃん、心配しないで下サイ。もし払えなくても私が
メアリーは大鎌の腹の部分をホールデンの
「は、はひ!」
「メアリー、いくわよ」
そう言われたメアリーは大鎌を
「……そういえばまだ名乗ってなかったわね。アタシはクートヴァス・インク
エミリーはウィンクをした。
「同じく、クートヴァス・インク 債権回収課所属【取り立て屋】のメアリー・ヴィシャスですヨ。ホールデンちゃんよろしくデス」
2人は自己
「ずーるっ♫ずーるっ♫ずーるっ♫」
メアリーは大鎌を引きずりながら出て行く。先ほど聞こえたのはメアリーの口から出る
「と、とんでもねー事になっちまった……」
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