序章 深遠な夜への長い旅路②
「国王様!! どうか、この
ホールデンは
謁見の間にいるのは国王、それに
王妃は
「……
「はい!」
ホールデンは一瞬で立ち上がると、直立不動になる。
昨夜の事をメグに泣きつき、父親である国王に助けを求められるように計らってもらったのだ。なんだかんだ言って、こうしてありえない速度で国王に謁見を段取ってくれた。
「あの……いかがでせうか国王様……?」
ホールデンは
「結論から言おう……そなたが申している事は
「えっ!?」
最高権力者である国王に
「そ、そ、それはどうして……?」
「そなたには借りがあるゆえ、なんとかしてやりたいのだが、今回の件に関してはいかんともしがたい」
「王でもなんとかできないんすか!?」
ホールデンは取り乱したようにノアに近づく。が、行く手を近衛兵に防がれてしまう。
「債権回収課……あそこには余の力が§及[およ]ばぬ」
「そ、そんな馬鹿な!」
「余はこの国の最高責任者ではあるが、全権を
権力の乱用を防ぐために、いくつかに分立されている。債権回収課はそのウチの一つだ。余が口を出しても彼らの取り立ては止められない」
ホールデンは泣き笑いのような顔になる。
「それに、
ノアが言っていることは一分の
「そ、そんなぁ……」
ホールデンの情けない声が謁見の間に響き渡ると、メグは深いため息を
「……これは忠告だが、そなたの所にやってきた債権回収課の2人には気をつけろ」
ノアは
「えっ?それはどうしてですか?」
「あのまるで似ていない
ホールデンは昨晩の事を思い出す。確かに色々とおかしな言動が多かった気がする。
「彼女らが言っていることに一つの
それを聞いたホールデンの気持ちはさらに
◆◆◆
夜の
カースティはとある墓地の中を歩きながらそう思った。
昼の
やがて目的地に
「俺はジョン・ドゥ・インク
トーマスの足元にはカースティの部下5人が
カースティはゆっくりとした足取りで、トーマスに近づく。
「……カ、カースティさん……」
トーマスに
「これが
トーマスは気を失っている部下の
「
カースティはその光景を静かに見ていた。
「噂に名高い〝
その言葉を聞いたカースティの
「……ウチの社員が脆弱だって?」
カースティは静かな口調で初めて口を開いた。
「ああ! 口ほどにもない!」
トーマスは自分が絶対強者だと言わんばかりに口角を
名前 トーマス・エリソン
職業 【
職業価値 S
「なるほど、【上忍】か。確かに増長するのも少しはわかるな」
「貴様を
「……お前は三つ
つまらなそうな口調で話し出す。それを
「一つ、お前ごときがジョン・ドゥ・インクの正社員になどなれない」
トーマスは気分を害し、カースティを睨みつける。
「二つ、ウチの社員は脆弱ではない」
「はははは! こいつらが脆弱じゃないだと?」
転がっているカースティの部下を再度
「一人も俺に傷一つつける事ができなかった連中だぞ。脆弱以外の何物でもないだろ!」
カースティの表情は動じない。
「……はぁ。これだから小物はタチが悪い」
トーマスは笑いを止める。
「小物だと……?」
「私が今まで会ってきた中でもトップクラスの小物だ。いいか、よく聞け。こいつらの任務は私が到着するまでの時間
カースティは
「三つ、私は〝悲恋の〟魔術師なんかじゃない!!」
トーマスはその瞬間スキル
[
《
トーマスの
一瞬でカースティは何十人ものトーマスに囲まれてしまう。
「誰が小物かもう一度言ってみろ!!」
「やれやれ……耳まで悪いようだな。小物で耳まで悪いとは、いよいよ救いがない」
「……っ! ほざいてろ!」
トーマスは
[身を
スキル詠唱を静かに終えたカースティ。
《
【
トーマスの拳が届く前に、カースティは炎を
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