第二章 大胆は無知と卑劣の子であって、他の資格よりもはるかに劣る③
「う、うめぇ! なんだこれ!」
ホールデンは
「……そう。よかった」
ティアが予約していた店は、ホールデンが逆立ちしても入れない
「……どうしたの? そわそわして」
もぞもぞと
「あ、あははは……なんでもないって……」
何か
「そ、そういえば、お前の今日の格好いつもと
「……うん。可愛いでしょ?」
「そうだな! すげーかわいいと思う!」
「ホールデン、こういう服好きなんでしょ?」
ティアは先日ホールデンがジゴロになった時にチェルシーの服装を
「もう最高! ティアは美少女だから何着てもいいと思うぜ!」
言っていて
「……じゃあ、ここにサインして」
すっと出されたのは定番の
「いやいや、書かねーから!」
「……なんで? 今ホールデンは私のことを美少女だと言った。ならサインしないのは
「それはどんな理屈だよ!」
理解できないといった感じで可愛く小首を
「俺にはとんでもねー借金があるから、仮に俺と結婚しても苦労しかないからやめておいたほうがいいぞ……」
「……それは
ティアの父は、
ホールデンはほんの少しだけ気持ちが
「ず、ずいぶん買われてんだな俺は……」
「ホールデンの[
ティアが言う通り、
「い、いやぁ……そんな褒められてもな……」
「……だから私とホールデンの子供はものすごい優秀な子になるとも言っていた」
「だから話が
と、そこでホールデンの
「っと……
自然な感じで言ったつもりだったが、少し舌がもつれてしまう。しかしティアは、別段
「待たせて申し訳ない!」
ホールデンはさも今来ましたと言わんばかりの様子でメグの目の前に
「アンタ、人のお金だと思って高そうなお店選んだわね」
「ははは……普段ほぼ社食しか食べてないからたまにはいいもの食いたいと思ってさ」
「まっ、いいんだけどね……」
そう言うとそわそわしだすメグ。どうやらこの店の
「2人でのご飯にいいお店を選ぶなんて
ポツリとつぶやくメグ。
しかしホールデンはすぐにウェイターを呼んでいたのでその言葉は聞こえなかった。
ウェイターがやってくると、先ほどティアといた時に注文を取りに来た男性であった。
ホールデンと目が合うと、何かを察したらしくにこやかに笑った。それはまるで『お客様、この私に任せていただければ何も問題ありません』と言っているようだった。ホールデンは『よろしくお願いします』といった念を
(このウェイターさんは仕事できそうで助かったぜ……)
「それじゃー高いやつ上から5つ持ってきてくださいー」
その頼み方にメグはため息をつくが、同じ頼み方を前もしていたので注意しなかった。
「お客様、それですと先ほどのご注文と
す。こちらのメニューもオススメなので次はぜひこちらをご賞味ください」
ホールデンの顔から血の気が引く。そのウェイターは悪気なく言っている様子であった。
(おいいいいいいいいいい! 何言っちゃってくれてんのこいつぅぅぅぅぅぅぅ!)
「えっ? 先ほど……?」
「ははは……何を言ってるんだねチミは……ボキはこのお店の料理食べたことないでございますですよ」
「失礼いたしました。よく似た常連のお客様と
「ははは……わかってくれればええんやで。
ウェイターが一礼してテーブルから
「そ、そういえば、今日の格好いつもと違うな」
と、先ほどティアに言った言葉と寸分
「えっ……あっ……うん……最近買ったんだ……どう……似合うかな?」
メグはホールデンにそう言われると顔を赤らめたどたどしい口調で聞いてくる。
「そうだな! うん! すげー似合うと思う!」
「アンタ、こういう服が好きなんでしょ?」
メグも先日ホールデンがジゴロになった時にチェルシーの服装を褒めていたことを覚えていたのだ。
「もう最高! メグは美少女だから何着てもいいと思うぜ!」
またしても言っていて恥ずかしくなったが、いつも《《
「……何着てもって、それ褒めてるわけ?」
口調は強めだが、
「褒めてる褒めてるってー!」
そんなやり取りをしていると、料理がやってきた。
持ってきたのは先ほどと同じウェイターだったので、
「あっ……
メグは運ばれてきた
「うん?」
ホールデンは口に運んだところで気がつく。
(さっきとソースが違う。ソースが違うだけでこんなに変わるのか。これはこれで絶品だ)
ホールデンの様子を見たウェイターはニコリと笑い
「お気づきになりましたか?
「うんうんうんうんうん!!! 最高に
ホールデンは食い気味に大きな声でそれをかき消した。
「な、何よいきなり大きな声出して……せっかくおいしいもの食べてるんだから少しは落ち着いて食べなさいよね」
メグは非難の視線をホールデンに送る。
「あはあは……」
気味の悪い笑みを
机の下で
『ホールデンどこにいるの?』
(やばい……いかねぇと……)
「すまん、トイレ行ってくる!」
「えっ、あ、うん」
勢いよく立ち上がるホールデンに
ホールデンは急いでティアがいる個室に
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