第二章 Once in a Lifetime

第二章 Once in a Lifetime①

 ホールデン・ドハーティ15歳 職業ジヨブ 【遊び人The Neet】。

 そんな【遊び人】に相応ふさわしいのかわからないが、自室のまんねんどこに体と心をしずませていた。

 当然であろう。人生最良の日になる予定が、人生最悪の日になるとは想像のらちがいの出来事であり、なんという皮肉であろうか。この世界の神って名の無能をのろった。

 時刻は春の太陽が沈み、うすぐらくなって行くとき。ホールデンはとうとつに立ち上がった。


「まだだ……。まだだいじようだ。1ヶ月のゆうがある」


 ブツブツとつぶやく様に独り言をり返す。

 ホールデンが言う1ヶ月の猶予とは、会社インクに就職するための就活期間の事だ。

 ゆうしゆうな者、特に授職の儀レンダージヨブで先んじた上位100名に関しては例外はあるがほとんどスカウトを受けて就職している。受けたスカウト数は、ホールデンが歴代でもトップだ。が、昨日のあの結果を見るに、暗雲が立ちこめまくっている事をホールデンは感じていた。事実、この時間になるまでただの1社とて、ホールデンの家におもむ会社インクはなかった。

 ホールデンは、今までもらっていためいをかき集めて履歴書ウオークオブライフにてれんらくをしようとする。

 そのしゆんかん

 すさまじいさい音がホールデンのふるわせ、屋内の明かりすべてが一瞬で消灯した。と、同時に何処どこまでも冷たい声が聞こえてくる。それはスキル発動のえいしようであった。


[一の罪は、千の善行にてあがなう事ができるのだろうか]


「な、なんなんだよ、おい!」


 いきなりの事で動揺するホールデン。


断罪の刻ジヤツジメント #1》


 スキル名が発音される。


「対象者──ホールデン・ドハーティ。罪状 不敬罪および強制わいせつ罪 ちようばつ──10秒間対象者の行動の制限」


 するとホールデンの身動きがいつさいとれなくなる。急におのれの体の支配権が無くなり、その場にてんとうしてしまう。その転倒したホールデンの頭に足が乗る。

 スキル《断罪の刻ジヤツジメント #1》は対象者が今まで行って来た悪行を罪状化し、死を除く懲罰を科す事ができる。


「……しやこうそく。次の指示を」


 しゆうげき者は履歴書ウオークオブライフで上長に事務的な感じで報告をする。


「ぐえっ! い、一体なんなんだよ!」


 地面をいずりながらもホールデンは毒づく。


「……静かに。大人しくしないと今より痛い目にあってもらう事になる」


 その声に聞き覚えがあった。

 うつせになっていたホールデンを足であおけにする。


「ティア!」


 薄暗い中、ホールデンの目に入ってきたのはティアの姿であった。


「お、おい! これは一体どういうことか説明しぐえっ!」


 ティアはいきどおるホールデンの腹にケリを入れる。


「私のスキル《断罪の刻ジヤツジメント #1》の力」


「力がどうって事じゃなくて、どうしてお前が俺にこんな事をするのかって話だよ!」


 そんな彼の様子にティアはじやつかんいらだった様子になる。


「昨日あんなれんな事しておいてそんな態度はない。それに《断罪の刻ジヤツジメント #1》が効いているという事は罪を感じているって事」


 その声にはいろく失望の色がにじんでいた。


「……いや、確かにあれは悪い事したなんてレベルじゃないくらいの事をしたと思っているが、それと今お前が俺をこんな状況にしている事が全然結びつかない……」


 と、ホールデンがそこまで言うとある事に気がついた。


「お、お前……その格好……」


「……私はクートヴァス・インク国王特務部 第2課ティア・ラブ・ヒューイット。被疑者 ホールデン・ドハーティを不敬罪の容疑で連行する」


「ふ、不敬罪!?」


 ホールデンはしようげきを受けた。が、昨日の己の行動をかんがみると当然の事だと思い至る。


「ご苦労。ヒューイット君。君の言った通り、効果的に対象をちんもくさせることができたな」


 すると、数人のティアと同じ格好をした者達が入ってきた。

 ティアは上長が来たのでホールデンのうでじようをかけがらを引きわたした。


「お、おい! 俺をどこに連れて行くんだよ!?」


「……どこって、被疑者に罪を確定させるのに相応しい場所。その為の【裁判官】」


「な、なぁちょっと待てって」


「……もう、ホールデンには価値が無い」


 そういうと、ティアは立ち去って行く。

 ホールデンはそのままほかの2課の面々に連行されて行った。



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