第六章 世界は割れ響く耳鳴りの様だ
第六章 世界は割れ響く耳鳴りの様だ①
「暑い……」
空に
ホールデンはあれから一晩中メグを探し回ったが、
「おはよう、ホールデン君。いい朝だね」
いつも通りの
「おう……」
「だいぶ疲れてるみたいだね。どうしたの?」
そんな疲れたホールデンを
「わりーな。助かる」
ホールデンはもらった珈琲を半分まで飲む。珈琲の苦味と熱さで
「その
「……ああ、ちょっと
「
サリーは
「それは……心配だね。部屋には戻ってないのかな?」
「さっき管理室で確認したけど戻ってないってさ」
「……何か事件に巻き込まれたのかな」
「わからない……ひとまず
「どうぞ! 開いてますよ」
サリーがそう言うと、
「……ホールデン・ドハーティはいるか?」
ホールデンは
「……俺だけど……おっさん
「……相変わらず無礼な
その人物はそう言うと
「あなたは!」
「げっ!」
二者二様の反応だが、
「久しぶりだな、
ホールデンはバツが悪そうに笑った。
「フラワーズ様……このような場所にお供も連れずいかがなされたのでしょうか?」
そうサリーが
「……メグが
ホールデンの胸に重い何かが落ちる。それは昨日から感じていた不安が現実のものとしてホールデンの中で認識された事を示していた。
「今朝、余の
ノアは
「フラワーズ……」
ホールデンはぽつりとつぶやいた。そしてメグの言葉を思い出す。
『あのさ……その……もし私が一連の
皮肉にもその言葉が現実のものとなってしまった。ホールデンは視線を下方に向ける。
「ノア様。公にするなと書かれているのに、なぜ僕たちに話されたのですか?」
それはもっともな話であった。同じ話すにしても、国王直属の最強部隊
「
「そうですね……急いで引き返しても、社長達がいる場所からは2週間は確実にかかりますし……
「ああ……だが、時間がかかりすぎる。それだと間に合わない……」
そこでノアはうろんげな視線をなぜかホールデンに投げる。
「……
ノアはそう言うと、ホールデンを
「余はお前の事を
それもそうだろう。
「だが、余はヴィンセントの事は信頼しておる。余が信頼する者が信頼するお前を見込んで
すると深々とホールデンの眼前で一国の王が頭を下げる。
「これは王としてではなく、メグの父親として頼みたい」
国王の声は
「どうか……あの子を助けてやってはくれないだろうか……」
ホールデンは頭を下げ続けるノアを見る。サリーはただただ黙ってその光景を見守ることしかできなかった。その
「正直、なんで王様が俺に頭を下げているのかわからないね」
ノアは頭を下げたまま無言である。
「ホ、ホールデン君いくらなんでも失礼じゃないかな……?」
「失礼? それも意味がわからん」
サリーは引きつった顔になる。ホールデンは大きく息を吸うと
「頼まれて助けるものなのか? 違うだろ! 親が頭を下げたから? 社長の命令だから? 違う! あいつは俺らの仲間だ! 助けるのに理由はそれで
ゆっくりと頭を上げるノアは、静かにホールデンの
「……ありがとう」
一言、明確な意思を乗せた声で告げた。ホールデンは照れを隠すように頭を
「サリー行こう。こうしている時間も
サリーは力強くうなずく。2人が部屋を出ようとすると、ノアが引き止める。
「君たち……この件の
「報酬なんていらないですよ……ねっ! ホールデン君?」
サリーは先ほどの言葉に感動した。仲間のために立ち上がるその姿勢に。なので当然そんなものはいらないと辞退する。
「で、いくらくれるの?」
ホールデンはサリーの期待と先ほどまでの
「ホールデン君……君ってやつは……」
「もらえるものを断る道理はないからな」
サリーはどんな
「よい。ドハーティの言うことは何も間違ってはおらん。正当な報酬を受け取るのがこの世界の
ノアは何の失望の色も浮かべなかった。
「……メグを無事取り戻してくれれば100億ルードだそう」
「陛下、この私めにお任せ下さい。さあ、ぐずぐずするなサリー!
「……さすがという言葉以外見つからないよ僕は……」
ホールデンの目はルードマークになる。そんな様子のホールデンにノアも若干引いている様子であった。
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