第25話 ~2002年から、2003年~ 13
翌日の日曜日、午後十時。
僕たち姉弟は全員で、おじいちゃんの病院を訪れた。病棟の廊下を歩く中で、五人の先頭を切るのは、量子姉さんである。
その量子姉さんの出で立ちを見かけた看護師さんや、車椅子に乗る患者さんは、皆が皆、我がことのように嬉しそうな顔をして、僕たちを見送った。
病室を訪ねると、おじいちゃんはベッドの上で寝ていた。が、天井を見つめていた瞳を量子姉さんに向けると、にっこりと微笑んだ。
―――おじいちゃんの、量子姉さんへのサプライズプレゼントの計画には、光子姉さんが協力していた。
光子姉さんは女性下着メーカーで働いていることから、下着については試作品や社販で割り引かれた品をときどき、家族の分も家に持ってきた。ただ、やはり下着であることからサイズが合わなければ用を為さないため、光子姉さんは自分も含めた女性陣の、大まかな体のサイズについては前から知っていた。
だからこそ、おじいちゃんは直前まで、量子姉さんに秘密にできた。
「……きれいだよ、りょうちゃん」
ベッドの上で、量子姉さんに手を握られるおじいちゃんは、鎮痛剤でぼんやりとしながら、そう語りかけた。
長い金髪を、頭の上で纏め上げた量子姉さんは答えた。
「ありがとう、おじいちゃん。……おじいちゃんのおかげで、二十歳になれたよ」
赤い振袖から伸びる量子姉さんの両手が、おじいちゃんの細い手を、しっかりと包んでいた。
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