第28話 ~2007年~ 2
因子姉さんと僕は男女の双子として生まれたが、ほとんどまったく、似ていなかった。
歯車家の四女、因子姉さんは、どこにでもいる女の子である。この当時、見た目も素行も、どこにでもいる十七歳の女子高生だった。その普通さは、登校中に通り過ぎる人全員に挨拶をしてしまう僕よりも普通である。すれ違っても誰の記憶にも残らないくらいに。
身長は155センチ。量子姉さんの次に小柄である。体重はわからないが、こちらも量子姉さんの次に軽いことだろう。
髪の長さは中学校からセミロングを保持している。光子姉さんのように短くしたこともなければ、量子姉さんのように長くしたことも染めたこともないし、陽子姉さんのように頻繁に髪型を変えたりもしない。
丸い顔だが、よく見れば目鼻立ちは整っているようにも思える。が、目を引くほどではないし、因子姉さんが人の目を敏感に気にして化粧をしたところを見たことがない。「よく見れば美人」というのは、つまるところ頻繁には見られないからだ。
因子姉さんは、制服を着て同級生といれば、奈良公園にいる鹿と同じくらいに個体差を感じさせない女子である。
ただし、因子姉さんは鹿ではない。比喩的にも似つかわしくない。
言葉を選ばなければ、因子姉さんは、草食動物なんかよりももっと荒々しく猛々しい、到底理解しあえない―――獣だ。
僕が因子姉さんを獣と思わせるのは、つまるところ因子姉さんの「特異体質」のせいだ。
その部分だけが、ほとんどまったく似ていない因子姉さんと僕との、微かな共通点でもある。
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