第20話 ~2002年から、2003年~ 8

 自分ひとりでは回答が定まらなかったので、姉さんたちに話を聞いてみることにした。

 光子姉さん曰く―――

「……私にはわかんないな。格子はどうしたいの?」

「僕はどちらとも。………『いいよ』って答えるのは簡単だし、相手の女の子の気持ちを考えるとそうしてあげたいけど、本当にそうしていいのかわからない」

「不思議ね。男の子はそういうのに躊躇しないものだと思ってた」

「どうして?」

「…………その、なんていうか、中学生くらいの男の子って、女の子に、一番興味がある年頃じゃないの?」

「そうかな?」

「………………まあ、相手を好きになれるかどうかっていうのは、大切なことよ。好きでもないのに恋人になったら、相手を傷つけちゃうからね。参考になった?」

「うん、ありがとう」

 次に、陽子姉さん曰く―――

「私もクラスの女の子から相談を受けることはあるけど。こうくんは、どうしたいのかな?」

「わからない。相手を好きになれそうになかったら、受け容れてはだめなんだと、光子姉さんには言われた」

「告白されても、こうくんの気持ちは変わらない? ちょっとでも、いいな、って思わない?」

「変わらない。嫌いではないけど、恋愛としては少しも思わない。………だから、困ってるんだけどね」

「そう。………でもね、私たちが言ったから、じゃなくて、最後はちゃんと、こうくんが決めるのよ?」

「わかってるよ」

「女の子と付き合うのもいいわ。……ただ、……そうね、もし付き合うことになったら、自分たちで責任を取れる程度に、遊ぶのよ?」

「つまり?」

「………………将来を棒に振ったり、相手の女の子を傷つけちゃだめってこと」

「うん、わかった」

 また、量子姉さん曰く―――

「いんじゃない? 男女交際しちゃえば?」

「いいのかな?」

「ラッたんはどうしたいのさ」

「僕は、………どんどんわからなくなってきた」

「ラッたんがもっと単純で、嘘をつけたら迷わなかったのにね」

「嘘をついてもいいの?」

「ダメに決まってるじゃん。恋愛で嘘を混ぜるのは、執行猶予なしの重罪だよ」

「量子姉さんは、恋をしたことがある?」

「ないない。嘘をついたらだめなんて考えてたら恋愛なんてできないよ。……でもねえ、やっぱり、付き合ってみるのもいいんじゃない?」

「そうかな?」

「多分だけどね、ラッたんの世界観が、少しだけ変わると思う。経験はないけど、恋は、そういうもんらしいよ?」

「………そうかなあ……」

「ああ、でも一応、ラッたんのお姉ちゃんとして、ひとつだけ忠告」

「なに?」

ときは、絶対に避妊すること」

 最後に、因子姉さん曰く―――

「私に訊いてどうするのよ」

「やっぱり?」

「私としては、友達だから、まりあが泣くのは見たくないけど、どっちにしろ最後は泣くなら、早いほうがいいんじゃないかな、って思う」

「恋愛って、最後は泣くものなの?」

「…………さあ。それは格子の気持ち次第よ。あんたはどうしたいの?」

「姉さんたちに話を聞いたんだけど、わからなくなってきた」

「そりゃそうでしょ。結局決めるのはあんたなんだから。………それに第一、私に訊くのが間違ってるのよ」

「そうかな」

「そうよ。私の意見が参考になるわけないのよ」

「……うん」

「おじいちゃんに訊いてみたら? 年は離れてても、男同士なんだから」

「そっか」

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