第40話 

『良いのかね?何なら、今からでも仲間を連れて来ても構わないが?』


 自分にも、この戦人に絶対の自信があるのだろう。ドゥナルドJrは本当に心配毛に言う。


 きっと彼は本当に心配しているのだろう。だって彼は失敗した事がのだ。

 今まで、生きている中で……。


 可哀想な人だ。


「ミスターポーカーJr」

 

『おぅ、気が変わったのかな?』


「いえ、そちらは良いのですが、もし良かったら少しの時間だけ待っては頂けませんか?」


『ほぅ?どうしたのかな?』意外に思ったのか?ドゥナルドJrが不思議そうな声をする。


「私の部下いえ友が、今運ばれて行ったので、状況を確認したいのです」


『そう言えば、そうだったね、無事だと良いが』その一言に僕は今日一番にキレかかる。


「誰のっ!!」誰のせいでこうなった!?と叫びそうになった時、


『六花少尉、私だ』理司令官からの言葉に、それを止める。


「司令官、道力に何かあったのですか!?」雄二からでなく司令官から直接の通信に何かあったのだろうかと少し慌てる。


『慌てるな道力は無事だ。元気過ぎて起きて直ぐお前の元へ行きたがって暴れる位だ』


「本当ですか!?良かった〜」


『言い訳があるか!!今だって『勝利やっちゃえー!!』ほら、聞こえたか?』ため息と共にフッと笑う司令官。奥から聞こえる道力の声に、ホッとする。

「それでも、良かった……。あんな攻撃の後だったですから……」今でも、あの時の攻撃を思い出すと寒気がする。


『荷電粒子砲か……まさか実現しているとは……』

 荷電粒子砲とは、物体に電流を纏わせ荷電させた粒子を、電圧により亜光速に加速する兵器のことだ。

 光自体を収束するレーザー砲とは、原理自体が違い、レーザーガンがエネルギーの銃なら荷電粒子砲は粒子の砲弾といった所か……。


 重粒子をがん治療に使用しているのは知っていたけど、本当に実現するとは……。


「凄いですね、人間の科学力って」本当に凄い、昨日まで出来なかった事がドンドン出来る様になっていく。


『恐れないのだな?』「怖いですよ、もちろん」何故だろう、心が落ち着いている。


『うちの勝時ダンナから、伝言だ。零式の全ての力を開放して構わないそうだ。全力で行けだと……』


「分かりました」これは、軍からの命令では無いので、了解ヤーとは言わない。


『それと私達からは、分かっているな?ぶちかまして来い!!』

了解ヤー!!」コクピットの中、僕は敬礼する。

『最後にお姫様からだ』フレイ……。


『どうかご無事で……だと』


 その言葉に僕は何も答えず、胸に手を当てて思う。


 どこかで祈っているだろう、銀髪のお姫様に……。


「ミスターポーカーJr、お待たせしました」


 零式のチェックは充分、脳内シミュレーションは充分に繰り返している。


「六花零式、エクスエンジン起動!!全開で行くぞ!!」







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