第48話
『こちら第一小隊、今の所敵影無し』『あー、こちら第三こっちも無しだ』「了解です。引き続き哨戒を続けて下さい」『『
通信機の前で真砂さんが哨戒の報告を待っている。
「お疲れ様です」僕が、ペットボトルの水を持って行くと彼女は、嬉しそうに受け取った。
「お疲れ様です」
「いえ、私は待っているだけですから」季節はもう十二月だと言うのに、少し動けば汗をかく初夏の様な陽気。
僕が十歳位からこうだったらしい。流石に覚えていないな。
昔は、春夏秋冬と季節が変わり美しい景色を見せてくれたらしいけど、今では常春と言えば良いのだろうか?同じ様な気温、同じ様な季節になってしまっている。
別に嫌いでは無いけどもう一度、見てみたかったな、舞い散る雪や大きな入道雲。
自分はコーヒーを飲みながら、真砂さんの隣で遠くの景色を眺める。
「六花少尉はどうしたのですか?」
「いや、ちょっと……ね」少し、疲れた様な顔をして、もう一口コーヒーを飲む。
「その疲れた顔は道力さんでしょ?」彼女は、しょうがないな笑いながら僕の隣にコシをかけた。
「アハハッ、分かりますか?」頭を掻きながら、恥ずかしそうに言えば。
「分かりますよ、最近その……キスとか、ずっと言ってたし……」
「……面目無い」実は、キス騒ぎからは解放されたのだけど道力の密着度があれ以来、半端じゃなくて……僕を見かけると、さも当然の様に抱き着いて来て……。今現在、あの模擬戦の影響で僕は六花零式は整備中、道力の綾波二式改は全改修お陰で、暇を持て余した道力が積極的過ぎるのだ。
正直、困ったモノなのである。
「まぁ道力さんの気持ちも分かりますけどね」真砂さんが髪を掻き上げて言った。
「えっ?」
「フレイさんの件、ちょっと羨ましかったですから」フフッと笑うと、ペットボトルの水を飲む。
その様子に、からかわれているのかなと思い?
「またまた、からかわないで下さいよ~」そう言い敢えて視線を外して、照れ笑いをすると、
「多分、本気ですよ?道力さんも私も……」
「真砂さん……あの……」何と言えば良いのか分からずに狼狽えていると、
「もぅ、……その六花さんは、攻める時は無自覚なのに防御は全然なんですから」そう言うと、僕の頬に手を添える。
えっ?エッエッエッ〜~!!段々と近づく、真砂さんの顔に焦りつつも、身動きが取れず、このままじゃ……。
『こちら第三小隊、緊急だ!!』無線から聞こえる声に真砂さんは「えっ?もぅ!!」と露骨に迷惑そうな顔をして、「こちら、真砂通信兵です!!状況を宜しくお願いします!!もう一度繰り返します……」これ以上、ここに居たら邪魔そうだな?そう思って立ち上がると真砂さんは通信機のレシーバーの通話口を手で塞ぐと、
「私も本気ですから勝利君、チュッ!!」そう言って投げキッスを僕に贈った。
ほっ本気って……、送られた投げキッスはドコを目掛けて投げた物なのだろうか?
落ち着け!!戦闘になるかもしれないんだ、今考えるのはそこじゃない!!
「敵影はEU主力戦人パンサー!?」
遂に、EUまで参戦か……。
フレイにどんな秘密があるって言うんだ……。
真砂さんと顔を向き合わせながら、僕は考え込んでいた。
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