第47話

「勝利!!キス、キース!!ねぇ勝利!!ズルいー!!キース!!」


 あれから三日、道力が周りにまとわりつく様に、ウロウロしては僕にキスをせがむ。


「キス位してやれよ」とか「美少女とキスなんてご褒美じゃないか?」なんて周りの奴らは言うけど、そう言う物じゃ無いだろ?キスって!!


 不意を付くようにフレイが僕にしたキスは、暖かい陽だまりの様なキスだった。


 その後、何故か理さんや兄貴にまで怒られて、少し凹み気味になる。


 訳が分からないけど、あの後、採血までされて検査されて、何だよと思っていたけど、僕とフレイはあまり会う事すら出来なくなって来ていた。


 今現在、敵からの襲撃は無い。


 大アジアからの追撃も、アメリディアからの無理難題も一部を除いて無い。まぁ、久しぶりの平穏だったのだ。


 ちなみに、ドゥナルドJrは意識を取り戻した後、しばらくの間、大暴れした後、鎮静剤で大人しくさせられ、自軍へと強制的に送還させられたのだが……。


「Jrからの命令で無ければ……」「はぁい、ヨロシクね?」カタブツとフラワーの二名が友軍として、残る事になってしまった。


 新品のエヴァーライズ・カスタムも用意してあった所から、最初から計画的じゃないのか?と思える位の用意周到振りなのだが今現在、各機体のカスタマイズ中である我が軍にとっては少しでも、稼働戦人が多い方が助かるのは確かで……。


 理司令官曰く「まぁ、急に寝返る事も無いだろう」との事で、このどう見てもスパイモドキである二名は渡りに舟として、しばらく同行する事になってしまった。


「勝利、みーつけた」カーゴトレーラーの荷台に揺られながら、日向ぼっこをしていた僕はウトウトしていた所、金髪ポニーテールの仲間に見つかってしまった様だ。


「何だよ道力、もう少し眠らせてくれ」大きな欠伸を一つしながら最近、妙に眠いのが気になっていた。


 それも、六花零式に乗ってから急にだ。


 兄貴からは『そう言う事もあるかも知れない』との事で、しばらくの間、気をつけた方が良いとの事だった。


 荷台の上、くの字になって寝ていると、


「勝利の寝顔っ♪勝利の寝顔っ♪イタズラしたいな勝利の寝顔っ♪」そんな不穏な歌を、隣で聞かされて、慌てて飛び起きる。


 それを見て、道力はケタケタ笑い、全くと、一つ大きなアクビをする。


 そんな僕を優しい目をしながら、動力は鼻唄を唄う。


 何処かで聞いた事がある様な……。


「何だっけ、その歌?」と聞くと、動力は膝を抱え込むと、

「昔、ママに教えてもらった歌……とっても好きな歌」そう言ってキレイなソプラノで歌い出した。



「ホワイ トゥ バーズ サドゥンリー アペアー♪ エブリイタイム ユア ニア♪」優しい歌い声に、思わずぼーっと聞き惚れてしまう。


「ジャスト ライク ユー ゼィ ロング トゥ ビー クローズ トゥ ユー♪」


「素敵な歌声だな……」


「ママは戦火の母国から、逃げて来て日本でパパと一緒になって……。でも、パパも戦争で死んじゃったから苦労したの」


「そっか……」初めて聞く、道力の両親の話。ハーフって事は知ってたけど……。


「ママも、病気で死んじゃった……。きっと私、家族が欲しいんだと思うの……勝利……」


「家族か……」この世の中、戦争で両親がいないなんて良くある話だ。


 僕の両親も、もういない。


 でも、寂しいよな?


「一緒にいる間は僕の事、家族だと思って甘えても良いよ」そう言って微笑むと、道力は抱き着いてくる。


「勝利、大好き」そう言ってさっきの歌を歌い出す。


「クローズ トゥ ユー……あなたに近づきたいの……か」いつも私は一人でも大丈夫と強がって……でも、本当に信頼した人にだけは甘える。


 そんな道力にお似合いの唄だよな。


「僕らは、もう家族みたいなもんだよな」そう言うと、道力は微笑むと、「ねぇ勝利……この前の何でも言う事聞くって話。今聞いてもらっても良い?」


「まぁ、僕の出来る範囲なら」


「あのね……私より先に死なないで……」


「それは……むずか……っ」難しいなと続けようとした僕の唇に柔らかい物が……。


 どうして、みんな不意打ちなんかしてくるのかな?


 そう思いながらも払い除ける事なんて僕には出来なかった。












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