第21話

「六花少尉!!行って下さい!!」

 真砂さんからの言葉に少し躊躇いを覚える。


 彼女の気持ちは良く分かる。


 ワンウェイや田子は、お兄さんを殺した仇だ。


 何としても、倒したいのは、本当に分かる。


 でも、僕の優先順位を考えると、どうしても仲間の安全そして、このカプセルの女性の安全が一番に来る。


 その事を伝えようとすると、眞砂さんより、


「私は、このカプセルを押しながら仲間が監禁されている場所を目指します!!」


「みんなが囚われている場所が?」


「はい、大丈夫です」食い気味にいう真砂さんに苦笑しつつ。


「銃は使えますか?」頷いた彼女に僕の所持していた九ミリ自動小銃を渡す。


「でも、六花さんが……」


「大丈夫、彼らのを借りるから」拘束している敵から銃を取り、使い具合を確かめる。


 モーゼルか?使用した事は無いが大丈夫なはず。


 何度か、照準を定め、止めるを繰り返す。


 そして、真砂さんの肩を抱くと、


「きっと真砂小隊長、君のお兄さんが見守ってくれる。頑張れ!!この人の事は君に任せた」


 僕の腕の中で、真砂さんは、必死に涙を堪えながら何度も頷く。


 僕は、真砂さん達と別れると指令室に向かって走り出した。


 辺りの喧騒が小さくなっているのが、気になる。


 間に合うのか?


 ここに来るまでに、敵と遭遇しなかった事が良かったのか悪かったのか、スンナリと指令室までは来る事は出来た。


 指令室の中は誰もいない。


 通信装置を見れば、オートコネクトにスイッチが入っていて、解除するにはパスワードが必要になっている。


 危ないな、真砂さんに聞いて置かなかったら酷い目にあっていた。


 隣のパネルでパスワードを入力するとオートコネクトが解除される。


「良し!!」これで雄二に連絡をと思った瞬間、通信が入る。


『勝利!!畜生、やっと通じた!!』いつもと違う慌てた雄二の声に、

「どうした?何があった!!」


『何があったじゃねぇよ!!勝利!!逃げてったヘリはなんだ。撃ち落としたかったけど、人質の事とか考えて撃てなかったんだよ!!』よほど悔しいかったのだろう。雄二の早口なんて初めて聞いた。


「やっぱり逃げたか、実は……」今迄の経緯を話すと「ク◯が!!」と下品な一言と共にバンと何かを叩いた音がする。


「すまなかった。僕がもう少し早く……」


「あっ……悪い勝利、お前を責めるつもりは無かったんだ」 

 済まなそうに謝る雄二。

『でもさ、スコープの中に完全に捕らえてはいたんだよな……』雄二は悔しそうに言葉を吐き捨てた。


『勝利、報告だよ。敵全滅した……後で褒めてね』道力からの報告も、悔しさから「あぁ、良くやった」としか言えなかった。


 本来なら、九対二という圧倒的不利を覆したのだ。大勝利と言っても良いのだろうけど……。


「二人共、周囲を警戒しながら待機!!僕は仲間の元へ向かう!!」


了解ヤー!!』


「理さんは、どうしますか?」


『こちらはカーゴで来ている。そのまま基地へ向かうよ』カーゴとは輸送用トラックの事だ。二式改を輸送して来たトラックか?


「了解しました。よろしくお願いします」


 僕は、悔しい思いを抱えながら、生き残ったであろう仲間達の元へ急いだ。















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