第26話
稼働率二割の時点で覚悟はしていたが、基地を放棄か……。
指令官は続ける。
「我々の今回の任務において最重要案件は、ここにいる彼女を第七まで安全に送り届ける事にある。それは、つまり彼女が他国に狙われる可能性があるという事だ。自己紹介を頼む」
指令官が促すと、
「フレイです。詳しい事は……」フレイと名乗った彼女は理さんの方を見ると、理さんは少し申し訳無さそうに、首を横にふる。
「Sorry ごめんなさい。やっぱりダメみたいです。でも、ワタシは皆さんとナカヨシになりたいデース!!よろしくおネガイしまーす」
挨拶が終わりニコリと微笑むフレイに、僕は「こちらこそ、宜しくフレイ!!」と言って拍手をする。
それに合わせる様に優しい拍手が会議室に響く。どうやら、仲間達は彼女の事を受け入れる気になってくれた様だ。
その拍手収まった頃、少しずつ会議室がざわついていく。それはそうだろう基地の廃棄に狼狽えている所に、美少……いや女性の護衛が最重要任務と言われたのだ。
「護衛や狙われる理由は教えて頂け無いですもんね」吾妻小隊長の言葉に少し嫌味が、感じられたとしてもしょうが無い事だと思う。
僕は手を上げる。
指令官に促されて、僕は話す。
「我々に、任務について、とやかく言うつもりも資格も権利もありません」僕らは兵隊だ。任務を遂行する事が全てであり、それを拒否するという事は兵士である事を辞めると言う事と同義なのだ。
だけど、僕は続ける。
「ただ、今の僕らには戦う為の剣が無い。敵の刃を守る為の鎧がありません!!指令官、我々に戦う為の力を下さい!!これからの任務を、他国に狙われる恐怖に怯える彼女を守る為の力を我々に下さい!!」
シーンとする会議室、しばらくの沈黙の後で最初は吾妻隊長から、徐々に広がって大きな拍手が広がる。
「指令官!!俺達に力を下さい!!」「俺達は、もう絶対負けない!!」「第六にだけ格好つけさせないぞ、コラァ!!」拍手と笑い声に包まれた会議室で、六花理指令官がその手を軽く上げる。それを見て、会議室にまた静けさが戻った。
「諸君らの気概は分かった。ならば、諸君らに渡す物がある。六花勝利少尉、責任をもって、ここにある三種類のマニュアルを取りに来て、各自に渡せ!!」
「
「マニュアルには、A・B・Cとある。Cは各隊長にBは長谷川曹長、道力夢曹長に、Aは六花勝利少尉、君が持っていたまえ」
慌てて、前に来た僕に渡されたマニュアルには、(新兵器、使用マニュアルA)と書かれていた。
多分、マニュアルBには、綾波二式改の事が載っているのだろう。
では、AとCは?
「今から説明に入るが、その前に説明する開発者を紹介する。入るが良い」開発者?何となく嫌な予感がして、怪訝な顔をしていると、
「失礼するよ」ドアから入って来たのは、僕の良く知っている人だった。
「
少し痩せ気味で白い肌のいかにも研究者と言った風貌の我が兄、黒いフレームのメガネが良く似合う人で、実際目はあまり良くは無い。フレイの頭に優しく手を乗せると、
「彼女を守ると約束していたのでね。本当に助かりました」
そう言ってお辞儀した。
「礼は、そこにいるアンタと同じ名字のイケメン君に言ってくれ!!」それを聞くと、兄さんは驚いた顔をして、
「何だよ!!勝利が助けてくれたの?理が何にも言ってくれないんだもんな!!勝利、後でハグさせてくれ!!」
「いや兄さん、普通に嫌なんだけど!?」それを聞いて皆、爆笑する。
「もう良いから勝時、説明をしてくれよ」理さんが、バツが悪そうに言うと、
「では勝利、兄弟の語らいは後のお楽しみと言う事で。理は後で、お仕置きだぞ♡」そう言ってウインクをする兄に、僕と理さんはゲンナリした顔をした。
「では、まずは簡単に説明すると、マニュアルBは綾波二式改の事が、マニュアルCには綾波二式用換装型バックパックの事が、そしてマニュアルAには……」Cは換装型バックパックなのか……そして兄貴が僕の方を見てニヤリと笑う。
「六花勝利専用、試作型
ワンオフ!!試作機の可能性は考えていたが、まさかの専用機!!
六花零式……これがこれから僕と戦う剣となるのか……。
心の奥底で、熱い物を感じて僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
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