第27話

「六花零式……」僕のつぶやきに兄貴はニヤリと笑う。


「そう、国内、二機目の専用機ワンオフだ」最初の一機目は、国内生産、第一号機の綾波零式、理さんが搭乗していた機体だ。


「すげぇな、ワンオフかよ……」第三小隊長のつぶやきが聞こえる。


 それを、境にザワザワと会議室にザワメキが響き渡る。


 それも仕方無いか、ワンオフって奴は、其れ位特別なんだ。


 世界で、ただ一機、一人の為だけに作られた機体。

 ソレこそが、ワンオフ機。


 その特殊性は、飛び抜けている。


 分かりやすく言うなら、一台の車をシャーシからボディー、エンジンと全てその一台の車の為に設計開発する様なものなんだ。


 家庭用の自動車とF1カーみたいなものだな。


 量産機を作るのとは、比べ物にならない位の資金と労力が掛かって来る。少し緊張して来たな。


「おぃ第六の、どうよワンオフ?」第三小隊長芹沢さんが隣に来て話し掛けてくる。


 僕は苦笑いをしつつ、「プレッシャー半端無いですよ」と大きくため息をつく。


 多分、理さんの推薦や兄貴の事、そして、これまでの戦績。


 色々な事柄が一つになって、僕がパイロットに決定したのだろうけど……。


「頑張った勝利へのご褒美……だよ」道力が甘える様に僕の首に抱きついてくる。


「道力さん!!六花隊長が苦し、いえ嫌がってます!!控えて下さい!!あっ、ワンオフ機、おめでとうございます!!」真砂さんが唇を引きつらせながら道力を、力を込めて引き剥がそうとする。


「ぐっ、苦しい!!」首を締め付けられながら、二人に注意するけど、聞いちゃいない。


 何とか、道力を引き剥がし、ゼーゼー言っていると、裾を引っ張る白い手がある。


「ショーリー、ワンオフってなぁに?」フレイが、可愛らしく首を傾げるのを見て、

「やっ、やぁフレイ。君も興味があるのかい?」


「はい、皆楽しそうだから」そう言って!ヒマワリの様な笑みを浮かべる。


「なんか、特別らしいんだ」苦笑する様に僕が笑うと、


「ショーリーはなのね?」


「いや僕じゃ無くてね?僕はスペシャルじゃないんだ?」そう言って頬を指で搔く。


「ショーリーはスペシャルじゃなくてもステキだけどきっとショーリーはスペシャルなのよ?」彼女は、僕の胸を突いた。


「そうなのかな?その……ありがとう」


「なぁに照れてるんだよ、ショーリー!!」芹沢隊長の言葉に会議室中が笑う。


「止めて下さいよ~恥ずかしいな」僕の言葉に可愛らしく頬を膨らましたフレイが、

「ハズしがることないわ、ショーリーはスペシャルでステキよ!!」そう言って、僕の頬にキスをした。


 どよめく会議室に、慌てる僕と、どよめく道力と真砂さん。


「ショーリーは私の……だから。あっうつった」僕の腕を取る道力。奴はハーフだけあって、胸部装甲は大きい。その迫力に僕は顔を赤らめる。


「ショーリーさんじゃなくて、六花さんは、もう!!訳が分からなくなりました!!」そして反対の腕を取る真砂さん。真砂さんも中々……って、違う!!


 こっちが訳が分からない。


「女に甘いとこうなるんすよショーリー?」雄二の言葉に部屋中から、「そうだ、そうだ!!モテ男は痛い目を見ろ!!」と囃し立てる仲間達。ギャハハと笑ったり、口笛を鳴らしたり……。

 本当は、戦友が亡くなった人もいるのに……それでも、泣いたり、グダグダするよりはましか。


 それにしても……。


「さっきからショーリーショーリーって、恥ずかしいなぁ!!」


「ハズカシイないよ、ショーリーはカワイイわ」微笑んだフレイの言葉に、


「うん確かに、ショーリー……かあいい」


「はい、ちょっと可愛いと……」


 道力と真砂さんが珍しく仲良く頷いてるのを見て、どうにでもしてくれとお手上げとばかりに両手を上げる。


 この後、度々の騒ぎがあって予定より一時間遅れて、説明が終わる。


 何故か、ノリノリの兄貴よりも僕の方が疲れていたのは何故だろう。


「良し、予定通りだ。昼食後に出発準備だ!!」

 この遅れも、予定通りだったのか?


 理さんいや、六花理指令官の慧眼、恐るべし。






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