第24話

 世界の番犬、日本か……。 


 理さんが指令官となり、第十三防衛部隊は立花理指令官の元、行動する事となる。


 あまりの激動にフラつきそうになった時、


「勝利ーー!!褒められに来たーー!!」


「お疲れ〜、殲滅して来たっすよ~」


 緊張感の無い二人の声を聞いて僕は思わず、「お前ら!!」右腕で道力、左腕で雄二に飛び付いた。


「二人共良くやってくれた、本当に助けられた、なんて言ったら良いか分からない位だ」


「ホコれ……勝利の事は勝利の頑張り……だよ」耳元で、道力が囁く。


「でもさ……ありがとう、本当に無事で良かった……」


「エヘヘ、もっとギュッとしても良い……よ」道力が俺の胸に頭を擦り付ける。

「たいちょ〜、泣いてるんじゃ無いっすか?泣き虫っすか?」軽口を言いながらも笑顔で僕の頭を軽くポンポン叩く雄二。「うっさいな、お前らのせいなんだよ!!」


 僕達三人が、苦労していた事は皆が分かっている事、抱きしめ合う僕らを皆が温かく見つめていてくれていた。


 しばらくたった後、理さんが僕らに話し掛けて来る。


「感動のご対面に水を差したくは無いが、長谷川曹長、道力曹長。どうだ?綾波二式改は?」


「はっ、六花指令官!!改はおおむね良好です!!」


「おおむねか?」雄二の言葉に素早く反応する理さん。


「はっ!!パワーもスピードも二式の二割増。この程度であれば取回しは問題ありません。ただ、狙撃時の火器の反動が大きいのは二式と変わらず、長距離射程の場合は命取りになるかと?」


「成る程、開発班に伝えておく」


「多分、補助アームか何かを付ければと思うのですが、どうでしょう?」


「うむ、重量がどうなるかな?成る程、開発チーフが来ている。後で直接話すと良い」開発チーフ?何となく嫌な予感がしつつ、理さんを見ると彼女がニヤリと笑い、


「多分その予感、当たりだよ」


「人の心読むの止めて下さい!!」


 それを聞いて、理さんが高らかに笑った。


「兄さん、来てるんだ」何となく、ゲンナリしつつ悪い人じゃないし、僕の優しい兄貴ではある。


 六花勝時りっかかちどき僕の兄は戦人の元パイロットであり優秀なエンジニア兼メカニックであった。


 何となくとは思っていたけど、やっぱりメカニックとして理さんと一緒に来ていたのか?


「それよりも、立花少尉。そして、真砂サキ事務官。二人に心からの礼を」そう言うと、イキナリ理さんは僕らに向かって敬礼をする。


「えっ?理さん、どうしたの!?」「えっ?私は何にも……」僕や真砂さんが狼狽える中、


「君達が奪還してくれたカプセルいや、中の彼女は、どうしても助けなければならない最重要案件だったのだ」いつもの砕けた雰囲気は無く、いかにも上に立つ上官という感じで、僕らを狼狽えさせた。


「あのカプセルの女性いえ少女は一体……」真砂さんの言葉に、理さんは一言、


「特秘事項だ」


 と言って、取り付く島もない。


「でも……」何人もの死者が出た案件。詳しく聞きたいのだろう、真砂さんは食い下がろうとするが、僕は彼女の肩をポンと叩き、首を振って止める様に促す。


「六花さん!!でもっ!!」


「真砂さん、軍には言える事と言えない事がある、分かるでしょ?」僕だって、知る事が出来るなら知りたい。


 でも特秘とは、そう言う事なのだ。


「でもっ!!兄さんや沢山の人が!!」悔しいのだろう、うつむく彼女の目から光る物が……。


「甘えるんじゃ無いよ、私達は軍人なんだよ」隣で、真砂さんをジッと見ていた道力が、一言言う。


 真砂さんが、ビクッとしたのを見て、


「道力、良いんだ。彼女だって、本当は分かってる」僕の言葉に道力が冷たい目で彼女を見ると、ため息一つ。


「勝利は、女の子に甘い……から」いつもの口調に戻った彼女は最後に一言。


「人は死ぬんだ……よ」そう言うと、ムッとした表情のまま僕の胸に頭を擦り付ける。


 僕は道力の頭を、優しく撫でた。


 何故か、それを見ていた他の隊員から「チッ、立花羨ましい奴……」「やっぱユメちゃんかわええなぁ」「つめカワだよな」何だろ?解せぬ?


「真砂さん……指令官にも言えない事があるんだと思う」そう言って、理さんを見ると、彼女は眉一つ動かさず何も言わなかった。


 否定も肯定も出来ない、それが軍人としての出来うる限りの返答だと言わないばかりに……。




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