第30話

「アメリディア合衆国……」確かに、画面に写った戦人向こうではコンバットウォーカーって言うんだったよな?


 それにしても、剛力二十機を一瞬で殲滅か……。多分、奇襲からSRМ(ショートレンジミサイル)とライフルで一斉放射って所かな?


 相手はどう動くのだろう?


 流れは何となく分かる。


 フレイを狙っていた大アジア帝国の軍勢をアメリディア合衆国の軍隊が発見、何かの理由があって敵軍を殲滅したと言った所か?


 理由は、分からないけどな。


『第六小隊、各小隊の隊長は至急、第三番輸送カーゴまで集結せよ。残りの各隊の隊員は警戒を怠るな!!何時でも発進出来る準備をしていろ!!』


 司令官からの指令に、全員が慌ただしく動き出す。


「全員、良く集まってくれた」


 カーゴトラックの前に各隊の隊長達が並ぶ、うちの隊だけは全員だから、各隊長からの、またコイツラか?的な視線がちょっと痛い。


「司令官!!各小隊長は分かりますが、何故、第六は?」何故第六だけ全員いるのか?と第三小隊長の芹沢さんから指令官に質問する。


「それも、含めて説明するので聞いて欲しい」


 渋々といった感じで、芹沢さんが了解の敬礼をする。


 確かに、うちの隊は目立ち過ぎかも、知れない。


「良いか?先ほど一六〇〇ヒトロクマルマルにアメリディア合衆国第二十三大隊ドゥナルド・ポーカーJr少佐より通信があった」


 ドゥナルドJr!?アメリディアの初代大統領の孫じゃないか!?何でそんな大物が!?


 ざわめく小隊長達に「静まれ!!」指令官が一喝する。


 六花理司令官は続ける。


「通信はこうだ。我が隊が軍事演習を行っていた際に、大アジア帝国の通信を傍受、貴部隊を奇襲し、壊滅させろとの物騒な様子だった為、こちらとしては、貴部隊に正義ありとみて助太刀させて貰ったとの事だ」


「では、彼らは味方という事ですか?」第一小隊吾妻小隊長が無精髭を弄りながら話す。


「それがな……」考え込む司令官。理さんにしては珍しいな。


「司令官、通信です。どうしましょう?」真砂さんが、少しウンザリした口調で、司令官に通信レシーバーを渡す。


「またか……」


 どうしたのか?何か問題でもあったのか?


「まぁ良い、この際だ。こちら第十三防衛部隊司令官、六花理だ」


 理さんが話し始めて直ぐに、レシーバー越しに大きな声が聞こえる。


『お〜会いたかったぞコトワーリー!!私だドゥナルド・ポーカーJrだ!!』印象はフレイよりは、上手な日本語だった。二番目は兄貴がここにいなくて良かっただった。 


「五月蝿い!!耳が痛い!!切るぞ!!」理さんらしくも無い怒声に、少しあ然としつつも、通信を切って落ち着いたのか、理さんは一つ咳払いをして、「見苦しい所を見せた。アイツ、ドゥナルドJrとは顔見知りでな、本当に遠慮の無い奴で……スマン、皆には関係無い事だったな」ペースを崩されたのか、理さんも頭を抱え込んでいる。


「実はだな、アイツは我々と模擬戦をしたいと言って来たのだ」


「なんで?」芹沢第三小隊長のつぶやきが、凄くマトモに聞こえた。




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