第29話

 基地から離れ約一キロ、


『良し、全員覚悟は良いな?只今より、情報隠蔽と証拠隠滅の為に、第十三防衛基地を爆破する』


 六花指令官のかけ声で、カウントダウンが始まる。全員脱出後に、基地を爆破する。最初から決まっていたのだが、感傷に浸る余裕も無く中には、あの基地に配属が決まってから、もう十年以上もあの基地で防衛活動をしている隊員もいる。


 しばらくして巨大な爆発音がして基地が消滅した事を確認した。


 整備班のおっさんがイカツイ顔をして泣いている。


 しきりに鼻をすする音が聞こえて、隣の整備班の若いのに慰められていた。


 何だろうな……。僕なんか、たかが数年暮らしていただけなのに寂しさが込み上げてくる。


 田子に激しく罵られた指令官室、真砂さんが襲われそうになった所を助けた、倉庫裏……。何だよ、碌な事が無いな。いや、あのバカ田子の思い出が強烈過ぎるだけか……。ため息一つ吐くと、

「ショーリーため息良くない……よ?」いつの間にか、隣に道力がいて焦る。

「脅かすなよ」さも当然の様に僕の腕にしがみつく道力。こいつも、僕に懐いてくれていて可愛らしいのではあるが何にせよ積極的過ぎて面食らう事がある。

「道力は基地の思い出とかあるか?」


「思い出?ショーリーと初めてキスした倉庫裏とか、ショーリーに私の初めてを捧げた隊長室とか……いて」


 道力が馬鹿な事を言いだしたので、チョップをして止める。誰かが聞いてたら、どうするんだ!!


「コラッ!!思い出のねつ造をするんじゃない!!」勿論、今のはコイツのねつ造であり冗談なのだが……。


「キスは本当……だもん」むぅとむくれた道力。


「あのな!!あれはお前が無理矢理!!しかも食堂で皆の前で吸い付いて来たじゃないか?」


「そうとも……いう」


 全く、あれは一年目の春。皆で食堂で飯を食べている時に、いきなり「トマト苦手」と言って、プチトマトを口移しで僕の口に放り込んできたのだ。


 あの後、他の隊員が撮ったキス?写真が、何故か食堂の掲示板に貼られていて、酷い目にあったんだ。

 道力のファンクラブから……。


 まぁ、大変ではあったけど田子との思い出に比べれば可愛らしい物だ。


「ショーリーは後ろは見ない、前を見る」


「そうだな」僕は微笑むと道力の頭を優しくポンポンすると、「エヘヘ、ポンポン……貰った」と二ヘラとダラシなく笑う。


「何だよ、それ?」そう言って二人で笑っていると、『各員に緊急連絡!!』指令官より、緊急の連絡が入る。


『先に先行していたドローンより映像が入った』声に緊張が残る。敵か!?


『前方に大アジア帝国の剛力二十機が潜伏しているのを確認……したのだが、映像を見て欲しい』


 映像には、ミサイルとライフルによる攻撃で大破していく剛力……。お得意の物量攻撃の更に上を行かれて成すすべも無い。数分で決着がついた。


 そして、硝煙が立ち昇る中、映像に映っていたのは……アメリディア合衆国製の次期主力量産型戦人と言われているエヴァーライズと現主力機であるドゥナルドIIツーだった。












 

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