第43話 

「ザコはザコらしく、大人しく消えてくれれば良かったのだがね!!」


 荷電粒子砲の連射!?そんな事が出来るのか!?


「ふざけるな!!そんなチート汚過ぎるだろう!!」必死に零式を走らせて、遮蔽を取ろうとするが……。


「ダメか!!」荷電粒子砲は、遮蔽ごと零式を粉砕しようと襲いかかる。


 でも、あんな物、連射していれば、何処かでオーバーヒートやショートするハズ。


 耐えるんだ!!


『そう、そこで君は考える!!あんな物は長く使えるハズは無いと!!』荷電粒子砲を撃ちながらドゥナルドJrは高らかに叫ぶ!!


 それは、まるで演説のスピーチの様で……。


 それを聞きながら、僕は必死に逃げ回るしか出来ない。


『この荷電粒子砲パーチクル・ブラスターは、検証結果において、この破壊力を最小にしたモードならば……』


ハンドレッド百回撃つことが出来たのだよ!!』


 百回!!百回も撃つ事が出来るなら、故障は見込めないか?しかし、百回なら?何とか避けて……。

『あぁ、言い忘れていた。百回撃った所で、私が飽きて止めさせたのだったかな?』


 ドゥナルドJrは笑う!!


 己の威信を、己の国を、己の戦人をけがしてくれた目の前の青年に、目の前の戦人に、目の間の小さな国に目に物見せてやるのだ!!


 我こそはアメリディア!!我こそは世界そのものなのだと!!


「つまり……弾数制限は無しって事か!!」必死に避けながら僕は絶望しかけていた。


 戦力差が破壊力が違い過ぎる。やっと、突破口を見つけた所なのに……。


 あんな物、一撃でも当たれば……。



 モニタールームの前、仲間達は、僕の必死で逃げる様子を心配そうに見つめていた。司令官や兄貴、真砂さんや第六の仲間達、それと救助されたアメリディアの二人、そして銀髪の少女。 


「ふざけるな、あんな物が連射出来るだと!!」理司令官はテーブルをダンッと打ちつける。

「あのボーイは良くやったよ、だがJrを本気にさせたのはマズかったな」カタブツ・アンダーソンはフンッと鼻息荒く言う。


「アレは、流石にね。最強のウェポンと最強のアーマーを持ったコンバット・ウォーカーよ、最初からかなうハズが無いのよ」フラワー・ヴィクトリアは少し悲しそうに言う。


「六花少尉……頑張って」「勝利ふざけるなよ、俺にあんな恥ずかしい事させておいて……頼む、死ぬな、死ぬなよ……」「負けるな勝利、負けたらまた私の世界がつまらなくなるよ……嘘、負けても良いから無事に……帰って来て」「ショーリー……」


 各自、それぞれの思いがあれど、結局は勝利の無事を願う気持ちに変わりは無かった。


「最強とは何を持って言うのだろうか?」

 理の隣に立ち、眉一つ変えずにモニターを見つめ戦況を見ていた男は言った。


「勝時……」司令官は、隣の愛する夫の横顔を見る。


「強い武器?強い鎧?そうだな分かり易い」

 勝時は続ける。皆の視線が勝時に集まった。


「俺は思うよ……最強とは、己の力の全てを使える者だと」


「人間など、所詮頑張った所で、全能力の何割かしか発揮する事は出来ない」


「だから、私は作った。人に合わせる戦人を……」


「Jrが言っていたな?このドゥナルドIIIは私の為の戦人だと!!」


「ふざけるな、人の為の戦人の意味を履き違えるな!!」勝時の手は強く握られて白くなっている。


「見せてくれ勝利そして六花零式!!俺に本当の最強を!!」


 ことわりは、ここにいる全員が普段フザケて本音の数割しか見せない男の豹変を見て、少し恐怖した。





 あぁ、何だろう、レバーが体に吸い付く感じが……。体が勝手に動く。射角十五度だから……五メートル右に移動。


 六花零式の左三メートルを荷電粒子砲の奔流が流れていく。


 遅いな……。


 何だよ……荷電粒子砲なんて当たらなきゃ、普通の銃と変わらないだろ。


 攻めるか?

















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