第44話 六花 〈フル・ブルーム〉
歩けば、人が歩ける様に、怒れば拳を握る様に……自然に身体が動き、レバーをスイッチをキーボードをさも当然の様に僕は動かす。
戦人は手となり、足となる。僕に取って六花零式はもう一人の自分に、いやそれ以上になろうとしている。
自然と声が出ていた。
「アルフ、エルフ……力を貸してくれ」
『Get Ready All Right』アルフとエルフの声が響き、コクピット一面に淡く青白い光が差す。
空中を漂っていたアルフとエルフは六花零式の背中にマウントされた。
「さぁ行くよ六花零式、僕とお前の力を見せてやろう」
六花零式全体を淡く青白い光が包む。
『Final Call Ok?』頭の中に言葉が流れ込んで来る……。
「開けその花を、一輪では決して開けぬその花を……眩く輝け、そして、その力を見せよ今こそ……」自然と声が出た。多分、僕は今、笑っている。
「満開せよ!!フル・ブルーム!!」蕾の様な形をしていたアルフとエルフが花が蕾から花へと変わる様に、いやまるで鳥が翼を大きく羽ばたかせる様に……。
今、開いていく……。
『なっ何が起こっているのだ!?』ドゥナルドJrは戸惑っていた。目の前の日本の戦人の動きが良くなって来たと思ったら、青白く光り……翼を開く様に背中の花が開いていく……その姿は只々美しかった……。
『Oh Jesus……』あの様に美しい戦人を見た事が無い。……待て、私は何を言っているのだ!?
私はドゥナルド・ポーカーJrなのだぞ!!
あれは敵だ!!我が愛しき人を奪った男が作った戦人だ。
バカバカしい、戦人を美しい等と……。
例え、どんな姿形をしていようが、この荷電粒子砲で貫いてしまえば全て同じ!!
『消えろ、消え去ってしまえ!!』ドゥナルドIIIは荷電粒子砲を打ち続ける。
「行くよ、零式……」
六花零式は文字通り、飛ぶ様に走った。
荷電粒子砲をギリギリで避け、六つの花弁より淡い青白い粒子を放ちながら駆ける。
「アルフ、エルフ!!セット、ブルームウェポン!!」二つのユニットの中心より、一つの細長い物体が構成される。これは、フル・ブルーム時にのみ使える最後の切り札。
その
放たれる荷電粒子砲、左右に避けて躱すだけで無く。周辺の瓦礫を使いアクロバティックに、頭に浮かんでいるパルクールの様な動きで、地上を立体的に使う……。
体が自由に動く!!
『ふざけるな!!貴様の様な小僧がチョコマカと!!』ドゥナルドIIIの背部から二門のSRМが、発射される。
馬鹿か、アイツは!!こんな所でミサイルを打ち込めば、被害はほぼ三十キロ平方メートル。自分も被害に合うぞ!!
そうか、自分の装甲を見越しての自爆攻撃か!?
……不思議だ、頭にデータが流れ込んで来る。相手の使う兵器の威力、効果、対処法が分かる。でも、その不可思議さを考えている余裕は無い。
調度良いさ!!どうせ確かめたいと思っていたんだ!!
零式は、ブルームウェポンを前方に突き出す。
「コードネーム、
右手に持った筒状の物体が光を上げ形を形成していく。
「タイプ・ブレード!!」
それは、光帯びた剣に形を変える!!
そして、イクスエンジンの出力を上げる。四つのエンジンのパワーゲージが上がって行く!!
さぁ、僕にその力を見せてくれ!!
僕は自然と雄叫びを上げていた!!
「イクスドライブ!!イグニッション!!」
イグニッション・ツインドライブとは比べ物にならない位の加速で、パワーで零式は翔ける!!
「切り裂け!!」イグニッション使用時のパワーを剣からの衝撃波に変えて、前方へ撃ち出す!!
ミサイルの爆風を周囲に吹き飛ばす程の衝撃波。
説明は受けていたが、これは……凄まじい。
元々、イグニッション時の余剰パワーを攻撃能力に回せないかと考えていたらしい。
その結果、武器から、そのエネルギーを全部放出すればどうなるか?
衝撃波は、ミサイルの爆風と共に、ドゥナルドIIIを地面に叩きつける。直撃で無いにも関わらずドゥナルドIIIは地面にめり込んでいた。
『バカなっ!!何が起こった!?』ドゥナルドJrの叫びが響く。
「アルフ!!エルフ!!
「降伏しろ!!お前の負けだ!!」
『誰が降伏など!!』
知っているよ、お前はそう言う男だ。
「ならば、その目を持って見るが良い、その身を持って感じるが良い!!」勝利の剣が閃光を放つ。
『だ……誰が貴様等に屈するか!!』
「タイプ・パイルバンカー!!」
勝利の剣が形を変えたのは、ただ一点を貫く為の矛
『よせ!!ヤメロ!!』身動きの取れない戦人の中でドゥナルドJrは知る事となる。
力による束縛の恐ろしさを、弱者の恐怖を……。
「貫け!!グゥングニーール!!!」
眩い光が収まった時、戦いは終わっていた……。
ドゥナルドIIIは、己の力の象徴である荷電粒子砲と共に上半身の半分と深さ約十二メートルの破壊痕を残して動きを止めた。
破壊痕はしばらくの間、青白い火花を上げ続けていた……。
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