CUSTOM 銃身が焼き付くまで

第42話

『ハハハッ！！火炎放射器とグレネードランチャーだと？ここ周辺を焼け野原にでもしたいのかな？』

　ドゥナルドJrが、笑う。さも面白い物でも見たかの様に。

「実験だと言ったでしょ！！」問題は、どう近づくか？

　ドゥナルドIIIは両手のアサルトライフルを乱射して弾幕を作っている。近づくのも至難の業だ。

「どうする？」

『隊長！！』雄二からの通信が入る。

『ユメからの伝言だ！！』

『アルフのAIポートに今から言うパスワードを音声入力してくれって……何じゃこりゃ！！ユメ、テメーふざけんなよ！！』何故か、雄二が怒り出した。

『お前が自分で言えよ！！何だ？こんな時ばかり、病人のフリを……』何だ？何があった。誰かと言い争う雄二に、

「雄二、こんな時に何を話してるんだ！！こっちの……」

『あ〜悪かった、直ぐ言うから後で、ユメに文句言え！！俺は言う！！』

「何だよ！！言うなら早く言え！！」いい加減にしろ！？こっちは忙しいんだ！！

『畜生何度も言いたくないから一回で覚えろ！！その天才的な頭脳様でよ！！』

「何だよ！！早く……」何で僕がディスられてるんだ？

『行くぞ！！ユメチャンダイスキチュッチュッだ良いな！？以上終わり！！負けるなよ！！俺に、ここ迄恥を欠かせて、負けるなよ！！』

「……はーーーっ？この緊迫した状況でお前！！おい！！無視かよ！？」どうしろって言うんだ。まぁ、雄二が無駄な事は言わないと思うが……。

「これ言わなきゃ駄目か！？これ、設定したの絶対に道力だろ！？」聞こえるのは、ドゥナルドIIIがアサルトライフルを乱射する音だけ……。

　無視ですか？あぁ、無視ですか？

　え～い、仕方無い。

「アルフ、セット！！行くぞ！！」はぁ〜、後で覚えとけ！！

「ユメちゃん大好きチュッチュッ」入力完了！！

『うわっ、はっず』途端に聞こえる雄二の声。

「おい雄二、後で覚えとけよ！！」恥ずかしさで、フラつきそうになりながら、コンソールで確かめる。

「そういう事か！？」アルフの装備武器欄に新たな装備が！！

「チャッピー来い！！」

　可変機動ドローン盾チャッピー！！そうこの戦場には道力の忘れ形見が放置されたままだったのだ。

　この飛行盾、この状況では非常に役立つ！！

　零式は、チャッピーで銃撃を避けながら接近する。両手に武器を持ったまま行動出来るのだ。

『くっ！！目障りな盾だ！！』ドゥナルドJrが忌々しげに叫ぶ。

　そして、ファイヤースロワーをぶちかます。紅蓮の炎を撒き散らしながら、ドゥナルドIIIの胸部を焼くファイヤースロワー。

『バカが、グレネードの火力すら防ぎきったこの装甲が火炎放射器程度の炎でどうにかなると思ったか！？』

「思わないさ」そう、その程度の火力で何とかなると思っていない。

　だからこそのグレネードランチャーだ！！

　このグレネードランチャーは三連式、三発思い切り撃ち切ってファイヤースロワーの火力をあげる！！

『バカモノよせ、そんな事をすればお前にも！！』激しい爆発音と共に巨大な火球となってドゥナルドIIIを襲う。

　流石のドゥナルドIIIもボロボロになった様だ。巨大な図体が仇となり、機体をフラフラさせながらも、コチラに歩いてくる。

　そして、胸の装甲はボロボロになっていた。

「良しっ！！」実験は成功だ！！液体金属と聞いた時から蒸発する迄、熱してしまえと考えていたが、何とかなる物だ。

『嬉しそうだな小僧！！だが、頼みの綱の火炎放射器とグレネードはもう使えないだろう！？』無理な使い方をしたせいで、両方の武器は最早使い物にならない。ありがとうと小さく礼を言う。

『こちらにはまだ荷電粒子砲が残っているのをわすれたか？』その言葉に、そのまま言い返す。

「あんな巨大砲、当たるつもりは無いが」破壊力は強いがエネルギーチャージ等の取り回しがきつい荷電粒子砲など、恐れるに足りない、筈だった。

「何だ、いつの間にかチャッピーが……」

　今回大活躍してくれていたドローン盾のチャッピーは半分に融解していた。

「今のは、荷電粒子砲……だよな？」

『ご明察だよ、ワトソン君！！やりたい放題良くもやってくれた！！』

　全身から、蒸気を上げながらドゥナルドIIIは仁王立ちしていた。右肩の荷電粒子砲から、電流を迸（ほとばし）られながら……。

「どうやって……」威力すら先程の十分の一位だったけど、エネルギーチャージの時間なんて、十秒も、無かったんじゃ……。

『ザコはザコらしく、大人しく消えてくれれば良かったのだがね！！』