第33話

「ドゥナルド貴様……どこまで知っている?」元々白い肌を更に白くさせて、理さんが平静を努める様に言う。

「さぁどうだろうな?そうだ、今夜ディナーでもどうだ?その時に話そうじゃ無いか?」「ドゥナルド貴様!!」理さんの腕がドゥナルドJrの制服の襟を掴む。


 体格差がある理さんとドゥナルドJrなのに、理さんの迫力に圧倒されている様だ。


「落ち着きたまえ、コトワーリー我々が確認しているのは、EUで行われたバイオ実験の失敗による事故、その研究員の家族にフレイ・ハッキネンの名前があったと言うだけの話だ」


「研究員にも家族がいるだろう?それに同姓同名かも知れない」理さんはドゥナルドJrから手を離し、背を向ける。


「成る程、では彼女に直接聞いてみたいのだが?」


「お断りだ。彼女を貴様らの様な蛮人に渡す事は出来ない」あくまで、理司令官は、と言うより日本は彼女を守るというスタンスらしい。


 少し、ホッとしつつも、彼女にどんな秘密があるのだろうと興味が湧いた。


「コチラとしても、あの事故の件に関しては、日本そちらにヤラレっぱなしでは収まらないのだよ。EUの事故。偶然居合わせた自衛隊。研究員を含む生存者は0。そして、日本のみが開発出来たアフォムのワクチン。全てが日本にとって都合が良過ぎはしないか?」ドゥナルドJrの言葉に、司令官は言い放つ。


「ならばかかって来るか?アメリディア合衆国!!日本は正義の為にアフォムのワクチンを使うと宣言した筈だ!!」


「ほぅ、ならばアメリディアと持久戦をするかね!?ワクチンの欠点はコチラも把握しているぞ?」ドゥナルドJrも一歩も引かない。


「司令官もドゥナルド・ポーカーJr少佐も少し落ち着いて下さい!!」今にも、銃でも取り出しそうな雰囲気に僕は彼らの間に割って入る。


「うっ、すまない勝利……」「Who is it誰だ?邪魔をするな!?」理さんは冷静さを取り戻した様だが、ドゥナルドJrは怒りを露わにさせる。


「六花勝利少尉、あなたの嫌いな勝時の弟です。そして、あなたの言っていた模擬戦の対戦相手だ!!」

「お前が勝時の……まぁ、良いだろう。コレを見給え」一枚の写真を見せる。これは、フレイなのか?彼女らしき女性が白衣を来た両親らしき人物と並んで写っている。


「これが?フレイの家族写真の様だけど?」


「これは!?」


 僕と理さんの反応は全く別物だった。


「これは、ある筋から入手した写真でね」それが?と聞き返そうとした時、続けてドゥナルドJrは言い放つ。

「今から、十数年前の写真だよ」


「はっ?何を言っている、どう見ても今のフレイの写真だろ?そうか、彼女の姉か母親の……」


「フレイ・ハッキネンには姉妹はいない。そして、我軍の解析班によればこの写真とコチラに写っている彼女とは同一人物である可能性は99.8%であると出ている」彼が取り出したもう一枚の写真は今は、破壊された我が基地にいるフレイだった。


「えっ?どう言う事?彼女どう見ても十五才前後に……」混乱する頭を落ち着かせようと、大きく深呼吸する。


「ついでに言えば、この写真はEUの研究所で撮られた物だ」不敵に笑うドゥナルドJr。


「彼女は何者だ?コトワーリー」

 まるで、僕の大嫌いな推理マンガの主人公の様だ。犯人を追い詰めて喜ぶ主人公でも気取っているのだろうか?


「あんたには、関係無い話だと言っているだろう」


 自然と声が出た。


「勝利いや六花小隊長、待……」僕は、理指令官を手で制す。


「勝負だドゥナルドJr、その為の模擬戦なんだろう?フレイを連れ出す為の……」


「ほぅ、ほざいたな小僧、やはりあの男の弟だけはある」


「コトワーリーいや六花司令官、我々と諸君らの戦力差は分かっているな?」


 フフンと鼻で笑うドゥナルドJr。二十機の剛力を一瞬で沈める圧倒的瞬発火力。奴に取っては剛力も僕達の軍も変わりが無いと思っているのだろう。


「その上で、模擬戦を申し込もう。その上で、我々が勝てば例の彼女を我々に引き渡して貰う。それと、そうだなコトワーリーとディナーの報酬も良いな?寝室には薔薇の花を蒔こうか?」いやらしく笑う、その顔に拳を叩き込みたくなる衝動を抑える。


「テメェ、じゃあ……」


「待て、六花小隊長!!」司令官が僕の言葉を止める。


「これ以降は、貴様に発言権は無い」僕の言葉は、理司令官に蓋をされてしまった様だ。


「チッ、青臭い小僧の言質でも取ろうと思っていたのだがね」惜しい惜しいとドゥナルドJrが首を振る。


「勘違いするな、ドゥナルド。お前の提案を受けてやろう。お前が勝てばフレイと私のディナーだったな?」


「オゥ、コトワーリー嬉しいね、僕の愛を受け入れてくれるのかい?」


「巫山戯るな肉ダルマ。我々が勝てば、フレイの情報と資料全て破棄してもらう」


「フムフム……」


「その上で、アフォムとそのワクチン、EUでの化学兵器の事故の件、フレイの件についての侵攻を、四年の間、不可侵にさせて貰おう」


「……これは大きく出たね。今の状況は我々が絶対的優位だと思うが?」鼻でフッと笑ってドゥナルドJrが言う。


「悪いが、我々は今、戦っても負けると思ってはいないよ」理司令官の目がドゥナルドJrの目を見据える。

「ほぅ……」


「さぁゲームを始めようか?ポーカーJr!!うちの整備班長ダンナが作ったワンオフと六花勝利その弟は強いぞー!!」不敵な笑みを浮かべる理司令官。


「命令だ六花勝利第六小隊長!!第六小隊の力をもって敵を打ちのめせ!!」


了解ヤー!!」


 僕は、敬礼した。


 来いよドゥナルドJr、勝利の剣フレイは渡さない!!













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