第16話
機体稼働率は二十パーセント、もうアレは使えないな。
綾波二式に発動した爆発的なスピードとパワー。
あれは、秘密兵器でも何でも無い、元からツインドライブエンジンにあった特性を使用した物。
勝手に僕らが命名した名前がイグニッション・ツインドライブ。
これを説明するには、少し面倒になってしまうのだが、ツインドライブのシステムから説明しなければならない。
ツインドライブエンジンとは二つのエンジンを並列に使いその時に起こる反発力を用いて動作するエンジンなのだが、通常運転をしている時は問題ないのだが、出力を上げると歪が起きる事がある。
分かりやすく言えば、電池を並列繋ぎで使用している時に、急に縦列つなぎになるイメージ。実際には全然違うのだが、敢えて分かりやすくすればこんな感じ。
急に起きる反発に、学校ではこうならない様に指導される。つまり、学校ではやってはいけない事として指導されるのだ。だから、誰もやろうとしないし、知らない。
実際、機体への負荷大きい事と突然起こる反発力に対処する事は非常に難しい。
高速なモグラ叩きを連続で成功させ続ける様な感じだ。
一度、失敗するとそこで動作が一度止まってしまい、大きなスキが生まれる。
だが、歪みを連続で同期させ続ける事が出来ればどうなるか?
二つのエンジンの爆発力をそのまま維持させ続け、パワーとスピードは通常よりも何倍にも上がり、一発逆転の必殺技になる。
良く、持ってくれたよ……。
大きな爆発力はエンジンやバルブ、コード制御する電子機器全てにダメージを与える。
もう一度、今から同じ事をこの機体でやる事は出来ないし、やろうとすれば、エンジンやシステムが停止ですめば良いが、最悪は爆発もありうる。
「悪いな雄二、お前の機体、駄目にしちまった」
右腕は破損、脚部関節のアブソーバーはボロボロ。
立っているのも、ギリギリだ。
まぁ、しょうがないか?かなり無理させたからな。
こんな所に敵の援軍が来たら終わりか……。
どうする?降りて、味方を探すか?それとも、行ける所まで、こいつで行くか?
もう、片腕の通常行動しか出来ない戦人で何が出来る?
ここは、一か八か、綾波二式を降りて仲間を探すしか無いか?駄目でも、動かせる戦人があれば……。
僕は、手持ちの拳銃を腰のホルダーから引き抜こうとした瞬間だった。
「敵!?」右舷から敵影を発見する。数は九機!?三小隊も!?
しくじった、判断が遅すぎた。
敵の増援の方が早かった。今、戦人から離れるのは自殺行為か!!どうやら、疲弊していたのは、綾波二式だけでは無く僕もだったらしい。
「今更、弱音を吐くわけにもね!!」
僕は綾波二式を射角の無い遮蔽に何とか移動させる。
どうする?突っ込んで行って、敵の武器を奪うか?
それとも……あぁ駄目だ、考えが纏まらない!!
一度、緩んだ思考が、もう無理だ、もう諦めろと、お前は良くやったと囁き掛ける。
その時だった。
『
オープンチャンネルより聞こえる、ワンウェイの声。
「それはどうも……」緊迫状態での会話は思考を楽な方、楽な方へと落としていく。ましてや、それが戦時なら。
奴の言う事は分かっているんだ。多分、今一番聞きたくないセリフだ。
言うな!!心の中で叫ぶ。
『君は良く頑張った。どうかな?この辺で終わりにしないか?いくら君でも、もう無理だろう?』
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