第15話

 二丁のハンドガンを両手に携え、綾波二式は立ち上がる。


「来い雑魚ども、ここから真の綾波二式のいや、ツインドライブの恐怖を見せてやる」


 傍目には、メインウェポンを失い、サブのハンドガンを二丁下げているだけの戦人。


『囲め!!』今度は、僕にでも分かる言葉で司令官より命令が来る。


 その言葉に、砂糖に群がるアリの様に綾波二式に群がる八機の剛力。


 一気に囲もうとした瞬間に、綾波二式が消えた。


 いや、消えたと言わないばかりの速度で、大地を蹴り、綾波二式は走る!!踏み抜かれた大地は大きく抉れ、その脚力の強度を表す。


 一体目は、凄まじい速度の突撃でコクピットを綾波二式の鋭利に尖った膝の装甲部で串刺しにされる。


 二体目は、綾波二式の左手のハンドガンの二連射にて、頭部と胴体を撃ち抜かれ動きを止めた。


 三体目は右手のハンドガン、右手のハンドガンには、特製のフルメタルジャケット(徹甲弾)が装填されていて、当たった部位から根こそぎ貫通していく。左手の物は、第五小隊長の物を使用している為、通常弾になっている。


 右手のハンドガンを二射速射する、一射目がコクピットを守ろうとした両腕を吹き飛ばし、二射目ががら空きになったコクピットを貫通した。


 四体目と五体目は、接近する綾波二式に慌てて衝突、バランスを崩した所を両腕のハンドガンを接射される。


 それを見ていた基地の司令室にいたワンウェイは恐怖していた。


「なんだあの速度は!?おい貴様、あれは何だ!!あれは貴様らの新兵器では無いのか!?」

 驚いて、目を見開いている田子の胸ぐらを掴み、問いただす。


「あんなのは知らん!!いや、知りません!!何だあの速度とパワーは!?本当に知らないんだ!!信じてくれ!!」信じられない物でも見ている様な顔をしている田子を忌々しそうな顔をして、ワンウェイは突き飛ばし指令を送る。


『何をやっている囲んで動けなくした所をレールガンで仕留めるのだ!!』


 三体の剛力は、ライフルを投げ捨てると、綾波二式に掴み掛かった。三体同時だったのが幸いしたのか、一体の腕が綾波二式の右手を掴んだ。それを見てもう二体も覆い被さる様に綾波二式に掴みかかる。


『今だ!!やれっ!!』ワンウェイの声に、双雷の両腕のレールガンがグゥィーーンと回転する様な音をたてる。


 ガシャシャーーン!!という勝利の砲撃音が、仲間の犠牲と共に敵を打ち貫く!!……筈だった。


 綾波二式は、右手を掴む一機をそのまま、凄まじいまでのパワーで振り回し、覆い被さろうとする二機に叩きつけて、背面跳びで跳躍する。


 レールガンは、三機の仲間と綾波二式の右腕を貫く。


 七十トンの鉄の塊が空中から飛来する。ショックアブソーバーのお陰で多少は減少しているはいえ、衝撃は激しい。即座に各部チェックを行いながら、機体を動かす。


 綾波二式は右手を失いつつも、そのまま双雷に向かって突撃した。


 すまない、無理をさせているな……。


 悲鳴を上げる機体に鞭打つ様に、速度を上げる。


 道路に一足ずつの穴を開けながらボロボロの戦人は走る。


 敵までの距離は五十メートル。ギリギリでレールガンが二射目が撃てる距離だ。


『こちらが速い!!帝国に栄光あれーー!!』

 叫びながら、レールガンを放つ双雷。


「教えてやる!!そのレールガンの弱点を!!」


 綾波二式は、レールガンを放つ瞬間に右斜め前に飛ぶ!!

『何っ!?』

 綾波二式に避けられたレールガンは破壊音を上げながら大きく地面を抉った。


「その重い銃身は取り回しが効かないんだよ!!」


 レールガンは強力だ。だが、それ故の銃身の長さ、重量のせいで一機を狙うには向かない。


 撃つ瞬間に射軸を外されれば、それで終わりだ。支援機あっての装備だと知れ!!


 連射の効かないレールガンを放った黒い戦人は立ち尽くすのみ、距離はもう十メートル僕の距離だ。


 三発の銃弾をコクピットに受け、黒い戦人双雷は動きを止めた。


「真砂小隊長、これで良かったですか?」


 左手のハンドガンからは白煙が上がっていた。














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