第7話
『声が若いな、何歳だ?』
オープンチャンネルからの声に僕は苦笑いしながら、
「前置きとして言わせてもらう。年齢と戦いは関係無い」
『知っている、引き金を引けば、弾は出る。ただね、少し無駄話をしたくなったんだ』
何を戦場で悠長な話をしているのかと言われるかも知れない。
でも、これが最後の言葉になるかもしれない。
僕には、そんな気持ちは少しも無い。だけど、一言一言を大事に話そうとする相手の言葉に僕は敬意を払う。
「
少し砕けた言い方になってしまったのは勘弁して欲しい物だ。
敵機のオープンチャンネルから笑い声が聞こえる。
『律義だな、そして若いな少尉』
「そりゃどうも」そうしなきゃいけない。そんな気がしたんだ。
『李(リ)少尉だ』『王(ワン)曹長』『星守(シンユー)曹長』
そしてこちらは、
『悪いけど、個人情報だから』『女の子口説くなら、戦人なんて無粋な物から降りて……ね?』
こいつらは〜。
「あー、何かその……すまない」
頬を掻きながら謝る。まるで今から殺し合いをする様には思えないな。
『そろそろ始めようか少尉』
「はい……」
狭いコクピットの中、スロットルレバーを握る手の汗を拭う。
「タイマーを掛けろ!!
『
「そちらもそれで良いか?」
『こちらも了解した』オープンチャンネルからの李少尉の声に緊張がピークに達する。
「死にたくないし、殺したく無いな……」
戦場とは場違いの言葉に首を振って考えを消す。
甘い考えは、自分を殺すだけだろ?
「最後に聞きたい」
『何かな?』
「そちらの指令官は尊敬に値する人間か?」
『フッ……
お互い苦労してそうだ……。
ピピピピピ……
「第六小隊ゴー!!」
『
『愛国の為に!!』
『愛国の為に!!』
杉の林の中、三機の綾波二式と三機の剛力がアサルトライフルを撃ちながら、入り乱れる。
奇策は無い。
『正面で戦えば、戦人同士の戦い、五分と五分だ!!』李少尉の声が聞こえる。
『隊長、援護……よろ』道力の綾波二式が前方に切り込む。
『バカヤロ、援護射撃なら俺だろ』道力の後方から、雄二のライフルによる援護射撃。
タタンと単発式に敵の剛力を狙うが、腰の装甲を吹き飛ばすに留まる。
『残念だったな……グワッ!!』避けた剛力の吹き飛ばされた装甲の先つまりコクピットに道力の銃剣が突き刺さる!!
『クッ、あれを狙って撃ったのか?王曹長!!』星守(シンユー)曹長の叫びが聞こえる。
王曹長からの通信は無い……。
『よくも!!』銃剣を刺した道力の綾波二式を狙う剛力に僕は援護射撃をする。
『チィ!!』『ナイス隊長』二つの通信が聞こえる。
三対三の均衡が破れれば、お互い策の無い
ぶつかり合いなど一気に決着がつく。
『シンユー、避け……!!』
道力の綾波二式に近寄り過ぎた剛力は二機の戦人のアサルトライフルの餌食になる。
三発撃った弾は全て、コクピットに命中して、星守の剛力は動きを止めた。
最後に残った、李少尉の最後は潔いと言っても良いのかもしれなかった。
降伏勧告を鼻で笑い、そのまま突撃してくる李少尉の剛力は三機の綾波二式のライフル掃射によって大破した。
これがバカな戦いの結末だ。
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