第51話

「軍は何をしているんだ!?」あまりの所業につい大声を上げてしまう僕に、フレイは、

「落ち着いて!!」と抱きしめる。


「ごめんなさい!言い方が悪かったです!!正確には、ショートカットまで切った髪が一瞬で元に戻ったんです!!」えっ!?欠損……確かにそうか髪の毛も体の一部か……。


「まぁ、実際には怖くてあまり手を出せなかった様だな」


 少しずつ、落ち着いて行った僕に、「説明が悪かった」と頭を掻く兄貴。


 まぁ、いつ効果が切れるのか、分からない以上、下手な人体実験なんて出来はしないってのが理由かな?


「まぁ俺は、理と一緒に研究データを見せて貰っただけだけどね」肩を竦める兄貴。


「ただ、彼女は毎日、寝る前に一定量の血液採取をされている」


「これは、ずっとだ……」それって……。何かが繋がろうとしている。フレイの血、日本だけが進んだワクチン、大量に作る事が出来なかったワクチン……。

「それってもしかすると、フレイの血からしかワクチンが作れないって事じゃ……?」


「流石、我が弟」兄貴、六花勝時がニヤリと笑う。


「そうだ、今現在、アフォムを無効化するワクチンはフレイの血からしか精製出来ない」


「この事を知っているのは?」


「多分、アメリディアを始め各国で研究中のハズだ」まぁ、あれで本当に研究を破棄なんてする訳も無く、大アジアやEUが一歩遅れてと、言った所か?それは、フレイを狙って来るのは分かるな……。確かにコレなら彼女を狙うのは当たり前か……。


「これが、秘密の全てだよ勝利……」聞いた感想は重いなと思った。

 眼の前の少女が全てで、世界が彼女を狙って来る。理不尽かも知れないけど、偶然という名の理不尽が彼女や僕らをジワジワと襲って来るのだ。


 単純に、考えてもしょうがないかな?って思った。

 僕は彼女の手を握る。


 優しい微笑み。眼の前で失った物は、きっと大きくて、深い物……。でも、何とか乗り切って来た物を僕は応援したい。


「出来るだけ、一緒にいて下さい。貴方は、スペシャルです。私にとっても……」


「スペシャルか……」他にも、僕の事をスペシャル特別だと言った人がいる。良く分からないけど、僕がスペシャルと言うなら、それで良い。その人達の為にも、戦い続けよう。


「兄貴、六花零式の整備はいつ完了するんだ」


 兄貴は、少し考え、

「後二日位かな?ちなみに、道力君の綾波二式改の整備は完全に一からなので、一週間」


「そっか、空きの綾波二式は無かったよね」


「そうだな、二式改の回収に予備機使ってるからね」予想以上にアメリディアとの模擬戦がダメージが多そうだ。


「そうだ勝利お前達、第六小隊が専属でフレイの護衛するって話、考えてくれたか?」以前から、僕は理司令官経由で専属で彼女を護衛しないか?と言われていた。


 まぁ、そうなると戦いにおいて、率先して攻める事が出来なくなるし戦いの最中に、いつも護衛の事を考えないと、いけなくなる。ソレはリスキーな事で、自由な動きを主としている、ウチの小隊にとってマイナスにしかならないのでは無いのか?


 言われてから、他のメンバーに相談もして結論を決めた。


「受けるよ兄貴、道力と雄二は、俺が良ければだってさ。まぁ戦人が活用出来る様になってからの話だけど」


「そうか、なら助かる。この話は理に通しておくから……フレイも良いな?」


「私は……嬉しいです……でも、本当に良いのですかショーリー?全部が分かってもあなたは……」


「フレイ……僕の言葉は変わらない。僕は君を護り続けるよフレイ。一度、口にした思いを止める位なら、僕は戦人に乗る事すら、辞めるよ」


 「タックソミッケありがとう……」僕の思いが通じたのかフレイが優しく微笑んだ。





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