第36話

 模擬戦の舞台は、かつて大都市があった廃墟。


 その一キロ範囲内を戦場とする。


 廃墟内を隠れる事も出来るが、最低一分毎ランダム分に各戦人にセッティングされているビーコンが、現在地をGPSに知らせる。


 つまり、隠れている事は可能だが、難しいのだ。


「ロングハンド(長針)、現在座標をマーキング」


了解ヤー!!』ロンクハンド(長針)、雄二からの通信と共にマップに現在位置が記される。


 ココより後方二百メートルの立体型パーキングエリアの廃墟に陣取って、狙撃の機会を伺っている様だ。

 ちなみにショートハンド(短針)である道力の乗る綾波二式改は六花零式の約五十メートル前を走っている。


『隊長、敵は……強い?』道力か?


「さぁ、どうだろうな?取り敢えず、あのデカブツは硬いのは確定だな……」アメリディアのドゥナルドIIIは三種類の合金を使用していて通常の弾丸では貫通する事は無いそうだ、


『何か面倒臭い……ね』


『大丈夫っすよ、俺が一撃で仕留めてやるっす』


『ユージ、フラグ……』「うん……フラグだな」


『あの〜そう言う事言わないで欲しいんすけど〜!!』雄二の恨み節が聞こえる。


「どちらにせよ、相手の位置が分かってからの……来たか!?」マップに敵味方の現在位置が表示される。

『うっしゃ!!』


『隊長……来た!!』


 狙撃の時間は、気づいてから三十秒以内、いやそれでも遅い位か?

「雄二!!」

『二時の方向にドゥナルドIII補足!!撃ちます!!』

 敵の補足まで八.二秒か!?早っ!!


「行け!!」


了解ヤー!!』


 雄二の乗る綾波二式改はスナイパー仕様。


 特製の巨大なスナイパーライフルで敵を狙うが、二式の細腕では、狙撃時のブレを緩和する事が出来ないと雄二から報告があったけど、あんな方法で……。


 スナイパーライフルの全面に二機、側面に二機、特製の制御用ドローンがドッキングして、狙撃時に動くたびに上下左右に逆噴射して目標への狙撃のブレを無くす。


 完全電子制御で噴射を制御する為、ほぼブレは消える……のか?


 現に雄二のターゲッティングサイトはミクロン単位で操作できている。

『こいつに、俺の腕が合わされば……貰った!!』数百メートル先のノロマに向かって特殊ライフル弾が放たれた!!


『着弾!!』コクピットに命中の表示が!!


 良し、一撃KO勝ちか?特殊ライフル弾の為、ダメージはほとんど無いはずだが、判定用のコンピューターにはダメージ状況は表示されるはずだ!!


『マジかよ?』雄二から驚きの声、それもそのハズだ。

 モニタに表示されたのは損傷は軽微。破壊率は二.八%


 コクピット付近の装甲は確かに固くなっている戦人が多いものの、コクピットに直接被弾してほぼダメージ無しだと!?


 流石にコンピューターに細工してインチキしているのを疑ってしまう。


「司令官!!これは一体どういう事ですか!?」敵の隙を狙っての狙撃。コチラの発見のリスクや狙う為の準備のリスクを考えて撃った渾身の狙撃、その結果が、この判定ではおかし過ぎると言わざるを得ない。

『俺の狙撃は完璧だった!!なのに!?』雄二……。


『完璧な狙撃ご苦労だった!!』オープンチャンネルにバカでかい声。


「……ドゥナルドJr」


『君の狙撃は完璧だった。反射速度も、狙う位置も。だが君は負けたのだ!!いや、君の狙撃は負けたのだ!!偉大なるアメリディアの科学にな!!』


『勝利いや六花小隊長、あの男の発言は多分正しい。判定コンピュータに狂いは無い、そうなると、あの戦人に使用されている装甲なり防御システムは予想以上に硬いという事なのだろう』


 スナイパーライフルの直撃にほぼビクともしない装甲だと……。


 確かに、一撃で勝負がつく様な簡単な勝負では無いと思っていたが……。


『鈍いな小僧!!』デパートの廃墟を突き破り、サブマシンガンをばら撒きながら、左手のトンファーで襲い掛かって来る黒と紫の戦人エヴァーライズ!!一瞬の反応の遅れに、避けれるが、不味いダメージが来る!!覚悟した時……。


『守れ……チャッピー』


『可変機動式ドローンシールド名前はチャッピー……だよ』


 僕の戦人の前に赤い浮遊する盾が来て敵の銃撃を防ぎ、道力の綾波二式改がエヴァーライズのトンファーを腰のハンドアックスを使って防御する!!


「道力!!」


『隊長は、道力じゃなくて、そろそろユメって呼んでくれても……良いと思う』


 スゲェな、うちの部下は!!




















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