第10話
「一機?」
『あぁ、三機の内稼働率八十パーセントまでもって行けるのが一機だけだ』
『うん今、雄二の綾波二式の整備をフル活動でやってる』
通信は雄二と道力の声と一緒に、作業するガチャガチャという音も拾っている。
「悪い、俺も手伝う……」
『悪いね隊長は、ストップだ』
『隊長には、やる事がある……から』
二人からの拒否の言葉に、何を言いたいのか分からず問い返す。
「あのさ、時間が無いのに、そんな事言ってる場合か!?」
今は、一刻を争うのに何を言っているのか?
『それでも、やって貰わないと困るんだよな』雄二からの言葉にイラッとして「何を!?」言葉を荒げる。
『栄養補給をして、目を瞑って仮眠』
「はぁ!?」
わけが分からず、大声を張り上げる。
『戦闘終了で緩んだ頭のリフレッシュ。エネルギーの補給。そしてお前には勝利への道を無理矢理にでも導いて、もらわなきゃならない』
雄二の淡々とした言葉に、
「お前達に、色々やらせて飯食って休んでなんかいられないだろ?大切なのは分かるけどさ……」こんな時にそんな余裕のある行動を取る事なんて出来る訳が無い。
『あのな?行けるのは一機!!そして行って一番有効な人員は勝利、お前だ!!そして……』
雄二の言葉を引き継ぐ様に、道力が言った。
『行った後は私達も急ぐけど、もう勝利の為に出来る事は出来ないでしょ』
『司令官のバカはムカつくけどよ、オペ課の人達や他の仲間を助けてやってくれよ……それが出来るのは勝利……お前だけだろ?』
二人の言葉に僕は大きくため息をついた。
「正論に正論を重ねて、最後は感情論も上乗せか?お前も、中々交渉上手になったじゃないか?雄二」
『お前相手に、ごちゃごちゃ言っても、しょうが無いだろ、隊長?』
「それはそうなんだけどな……悪いな」僕達が笑い合うと道力の機嫌の悪そうな声が聞こえる。
『仲間外れ……するな。雄二ばっかりズルい。ゆめも勝利とイチャイチャする』
「しねーよ!!」『嫌だする!!』『うるせーな、勝手にやれ!!』ワーワーギャーギャー騒ぎ合って……休むんじゃなかったのかよ?
結局、なんだかんだ言って僕はこの小隊の事が好きなんだなと思う。雄二や道力とバカやって、笑い合って……。これからも、こんな関係を続けたい続けて行きたい、だから……。
「先に行って、皆を救う。お前達の出番なんか無いからな!!」
『望むところだ』『じょーとー……だよ』
『勝利、お前の本気を見せてみろ』
「安心しろ、負ける気はしない。準備は任せたぞ!!」そうと決めたら、後はやる事をやるだけだ。
おれは、ぱさつく固形レーションに食らいつき、水筒の水で流し込む。
「フーッ」大きく深呼吸をすると、目を瞑って仮眠らしき物をとる。
「イザとなったら、あれをやらざるをえないだろうな」
僕は、指の柔軟をしながら、あまりやりたくは無かった綾波二式の奥の手について考える。
「イグニッション•ツインドライブか……機体がもってくれれば良いけど……」
奥の手を使わなければ、勝つ事が出来そうも無い戦いに、「今は忘れないと……」
僕は無理矢理、目を瞑った。
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