第5話
突然現れた敵機に狼狽えたのだろうか無闇に銃を撃ち続ける剛力六機。
僕は綾波二式の腰にあるペイントボールを掴み、杉の密集した場所に投げる。
蛍光イエローに光る液体が杉の木にぶち撒けられる。
「道力!!」僕の声に道力機は、
『
「ワン、ツー、ファイヤー!!」アサルトライフルに備え付けてあったグレネードランチャーを道力機と同時に撃つ。
狙いは、ペイントでマーカーした杉の木の密集した場所だ。
グレネードが着弾した数本の杉の木は扇型に倒れ、五機の剛力を巻き込んで倒れる。
残った一体を、
『隊長!!』
「分かってる!!」
僕と道力機の二体による十字砲火で穴だらけにする。
「動けない剛力を……おい!!」道力機の行動に驚いて綾波二式の方向を逆方向に向けると、一気に駆け抜ける。
『この方が早い……から』道力はアサルトライフルのグレネードランチャーを一気に二掃する。
打ち出された榴弾は倒れた杉の木の上から五機の剛力に誘爆し巨大な爆発音となって響く。
「バカ野郎!!やる時は一言言ってからやれ!!」
危なかった。もう少しでグレネードの範囲に巻き込まれる所だった。
第六小隊道力ユメ曹長、僕と一つ下の戦人乗り。
その操縦能力は、僕でも勝てないかも知れない。
特に、乱戦においての状況判断は飛び抜けた物があり、その容赦しない行動から、血染めの
その扱い辛さに仲間がいなかった所を、
僕が一言「来い」と言ったら「退屈させるな」と言われ、それ以来ずっと同じ小隊だ。
金髪のポニーテールにクリクリの大きな目。見た目は可愛いんだけどな。確か、母親がヨーロッパの国ジョージア出身らしい。
ジョージアって何処だ?確か、ロシアとトルコに挟まれた……。
くだらない事を考えていたら、右舷からのライフルの照射が来て焦る。
右肩の装甲にライフル弾が当たり装甲を弾き飛ばす。
昔あったA10サンダーボルトの三十ミリ機関砲と同経口のライフル弾だ。当たれば一溜まりもない。
少しの油断がこれか?
「くっ後ろから!!」背部からの照射に木を盾にして逃げながら戦人を走らせる。オートバランサーのおかげか多少の揺れも気にならない。
いや、嘘だ。多少の揺れはもう慣れたが正しい。
軍の学校では、ほぼ毎日吐いた。
胃液をぶちまけた。
それでも、慣れは恐ろしいと思う。
戦人の中でレーションを食べながら行軍する事も出来る様になった。何なら一週間位なら戦人の中で暮らす事も出来る。
それにもう、何機もの戦人を壊してきた。相手は戦人なんだ人じゃない。
例え、コクピットから血が溢れていても、オープンスピーカーから『助けてくれ……』と言う声が聞こえて来ても……。
そんな事はどうでも良い、後ろからのライフルの斉射を何とかしないと……。
ガンッガンッと叩きつける様な音がして、ライフルの音が止まる。
二機の剛力が背中からアサルトライフルで撃ち抜かれていた。
危なかった?助かったのか?
『隊長〜貸し一つですよ?』飄々とした声がスピーカーから聞こえる。
良かった雄二か?
「済まない雄二助かった」
第六小隊、長谷川雄二曹長はライフル狙撃の名手であり、電子機器のエキスパートで度々僕らを助けてくれていた。
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