第18話

『お待たせ〜ギリだなギリ、危なかったね~隊長』

 参ったな、馴れ親しんだ友、長谷川雄二の声に思わず、力が抜けそうになる。


「雄二、ナイスタイミングだ!!」そう叫んで、僕は基地に向かって走る。何とか入り口にまで来てドアにもたれ掛かる。


 助かった。良くこのタイミングで、間に合ってくれた!!整備が間に合うか分からないという話だったけど、良く頑張ってくれた。


 本当に良く間に合ってくれた……?


 そう思い後ろを振り返ると、見慣れぬ戦人いや、あれは綾波二式なのか!?


 確かに、綾波二式の面影はあるが、その機体は、青く塗られ、手に持つのは標準装備のアサルトライフルでは無く、スナイプ狙撃用のロングレンジライフルを構えている。

 あれは、アリエディア合衆国で使用されていたスナイパーライフル、ステアーSSG69に形が似ているが、戦人で使用出来るようにサイズアップしたのだろうか?


 その隣でこちらに向かい走っているのは赤く塗られた綾波二式。いや所々、装備や装甲で違う所があるし、あれは本当に綾波二式なのだろうか?


 両腕に一丁ずつサブマシンガンを持ち両腰には、ハンドアックスが装備されていて、いかにも道力が好きそうな中近距離戦用の……。


『勝利〜!!じゃない、隊長〜……間に合った?』


 やっぱりアイツか?いつもの道力の独得の気の抜ける話し方に苦笑しつつ、


「あぁ、バッチリだ、良く来てくれた道力。それにしてもその機体は?」


 その答えは、雄二や道力では無い別の人物から知らされる事となる。


『それについては私から説明しようか、義弟君』

 何処かで聞き覚えがある声。それに義弟?


「えっ?もしかして?何でこんな所に?」色々なWhy何故が頭を巡る。だが、一つだけハッキリしているのは僕が助かっただろうという事実。


「助けて頂いてありがとうございます。えっと、義姉おねえさん」


『アハハ、自分で言っておいて何だけど、慣れないね、その言い方。いつも通りで良いよ勝利君』僕は、この人のこう言う所が好きなんだよな、本当に兄さんには勿体無い。


「スミマセン、緊急事態なんで、いつも通りに言わせて貰います。ことわりさん、この場所は頼んで大丈夫ですか?」


 聞きたい事は山程あったし、言わなきゃいけない事も沢山あった。ても、今の僕には、やらなければならない事があるんだ、再会の感慨にふけっている暇なんて無い。


『あぁ、モチロンだ。と言っても、君の部下達に任せるだけ何だけどね』


「あの理さん、あの機体は一体……」会話をしながらも、何とか基地にたどり着く。


戦場がバタついている間に何とかしないといけなかったし、最低限の話はしなければならなかった。あの謎の綾波二式についてもだ。


『君の良く知っている綾波二式だよ』


「でも、それにしたって、あの二人の二式は?」外見、走行速度、まだ戦闘を見ていないので分からないが通常の物とは大きく違う。



『あぁ、カスタムしている。装備面は勿論、ツインエンジンもカスタムマップして機動効率を上げている。言うなれば綾波二式改と言った所かな?』


「綾波二式……改」赤と青の綾波二式、外部装甲や兵装を見ても、かなり強化されている様だけど、二機で十機足らずの剛力を相手出来るのか?


『隊長〜、こっちは道力と二人でお釣りが来ますんで、さっさと行って下さい、それに……』雄二の気が抜けた話し方だが、有無を言わせぬ様な力がこもった言葉。


 彼は続ける。

『事情は、通信である程度は把握しています。頼みます。俺達にも仲間の仇を……取らせて下さい』


 急に真剣に話し出す雄二の言葉に僕は、覚悟を決める。


 あいつらが負ける訳が無い。僕が信じるあいつらを信じろ。


あいつらが、負ける訳が無い!!


「長谷川雄二曹長、

了解ヤー!!』

「道力夢曹長」


了解ヤー!!』


「ここは、任せた」


了解ヤー!!』


『エヘヘ隊長、終わったら……頭撫でて〜』力が抜ける様な道力の言葉に苦笑いしつつ、


「しょうがねぇな、終わったらな……怪我なんかすんなよ!!」


『勝利じゃなかった隊長、この子と私の事、なめ過ぎ……この子、スッゴイよ!!』一機コチラに向かい走る赤い綾波二式改の推力は確かに凄いが……。


「二人とも頼んだぞ」僕はそう言って、基地への扉を開く。


 どうやら、待ち伏せとかは無さそうだ。


「作戦に移行する!!」


了解ヤー!!』


 僕は九ミリ拳銃を手に基地の廊下を走り出した。













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