第84話
それから1ヶ月後。貴子の3度目の日本タイトル防衛戦の前日となった。当日は、前日計量が行われ、貴子と対戦相手の平山佳菜子は共に1回目の計量でフライ級リミットの50.8kgでパスとなった。計量が終わると、貴子の応援のために大阪から帰省した有里にメールを送信した。
明日の試合の計量。
一発でパス。
たかこ
貴子は有里にメールを送信すると、計量会場の前で待ち合わせていた有里のところへと向かった。
「お待たせ。いよいよ明日試合だ。」
と貴子は有里に手を振ると、
「いつものファミレスへ行こうか。今回のたかちゃんの試合は日曜日の昼の開催だし、里紗の幼稚園も休みだから里紗も連れて来たんだ。」
と有里が言うと、
「里紗ちゃん。4歳だよね。以前会った時と比べて大きくなったね。」
「貴子おねえちゃん。試合がんばってね。」
との貴子と里紗の会話があった。
ファミリーレストランに入ると、試合前日に座るいつもの席に3人は座った。メニューの注文を終えると、
「ねえ、有里。はるくんが結婚するって知っていた。」
と貴子が有里に聞くと、
「それ。初めて聞いたけど、おそらく、そのことだろうと思った。もし、その話を聞く時は、はるくんがたかちゃんの隣に座っていて欲しかったけどね。残念ながら私の願いは叶わなかった。おそらく、鉄道研究部の顧問の高校の先生とだろ。」
と有里が言うと、
「はるくんの結婚相手。有里の言う通りなんだよ。実は、はるくん。今年の春から幼稚園の先生になったんだよ。保育園の先生の時と比べて休みが増えるから夏休みに北海道へ行くことも考えているようで。」
と貴子が言った。
「たかちゃん、北海道のおみやげありがとう。去年の秋に、いとこと一緒に北海道へ行った時に、はるくんとはるくんの彼女に陸別で遭遇したんだってね。おそらく、あいつのことだ。陸別での次なる目当ては陸別の鉄道博物館にある列車を本格的に運転をすることだろうね。そういえば、里紗の幼稚園のクラスメイトの保護者の中に北海道出身がいるみたいで、そのクラスメイト、電車やバスが好きみたいで将来の夢も電車の運転手と言ってるんだ。たまたま、そのクラスメイトの父親が北見の出身みたいで夏休みを利用して陸別まで行ったとの話だ。ちなみに、そのクラスメイトの父親も鉄道好きで学生時代は鉄道研究部の所属だったとの話で、ここの博物館にある列車の運転体験コースの2キロ近い距離を運転体験するコースで運転体験したんだって。多分、はるくんも2キロ近い距離を運転できる運転体験コースをしたくて幼稚園の先生へと転職したんだろうね。」
と有里が里紗の幼稚園の保護者達の事情について話した。
「明日の試合。無事に終わったら、また北海道へ行きたいな。つい先日。前回の防衛戦の対戦相手だった江麗奈から、次の防衛戦がんばってね。というメールが来ていたんだよ。そのメールの中で、明日の試合に江麗奈が応援に来るとの報告もあったんだよ。江麗奈の前で、いい試合したいな。」
と貴子が言った。
貴子は前日計量から帰ると、家業の美容院の手伝いをしようと準備した。しばらくして、のりこが翌日に試合を控えた貴子に対して、
「お店の方は私1人でやれるから。貴子は明日の試合へ向けて今日は1日ゆっくりと休みな。」
と言われた。
閉店後、のりこは
「明日は店を臨時休業にして貴子の応援に行くから。明日の試合、貴子が勝って日本タイトル防衛。がんばって。」
と言うと、
「お母さん。今まで私のボクシング。応援してくれてありがとう。恋愛面でも、はるくんとの交際を望んでいたよね。最終的にはフられてしまい、はるくんは本人から見て10歳年上の高校教師の女性と結婚することになったと聞いた。お母さんは、はるくんのお母さんと親戚関係になりたかったけど、これは残念ながら叶わなかった。だから、ボクシングで世界チャンピオンになることを目指すことにした。」
と貴子は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます