ROUND4
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第67話
ROUND4
日本チャンプ吉見貴子の次なる挑戦
①
貴子が日本チャンピオンとなってから2か月が過ぎた。貴子と以前グローブを合わせた有美が、この春から貴子の所属ジムのトレーナとなり、貴子は日本タイトル初防衛戦から専属トレーナとして有美が入ることとなった。今までは、練習メニューの相談は所属ジムの会長に相談していたが、今後は練習メニュー等の相談は会長を通さず有美に相談する形に変わった。一方、原島ジムの方では、貴子の初防衛戦の対戦相手のマッチメイキングの話が進んでいて6月末に試合をする予定で当初は話がまとまっていた。しかし、貴子の誕生日の4月15日に近づいた時期に、貴子は初防衛戦のマッチメイキング関連の話で会長から呼ばれることとなった。貴子が会長室に入ると、原島会長から、
「たかちゃんの日本タイトル初防衛戦の日程が変更となった。当初対戦予定だった選手が先日、練習中の事故でケガをして、しばらく試合ができなくなった。その関係から対戦相手が変更となり、初防衛戦の対戦相手は立川鉄拳ジム所属の岡村綾香が挑戦者となることとなった。なお、試合の日程も6月末に後楽園ホールで行われる予定だったが、対戦相手変更に伴い試合の方も7月30日に後楽園ホールで開催に変更となった。」
との報告があった。
それから1か月後。貴子は出稽古先の大西ジムで、かつてグローブを合わせたライバルの大久保杏奈とスパーリングの練習に励んでいた。スパーリング終了後、杏奈から今度貴子が初防衛戦で対戦する綾香のことについての話が出てきた。
「寛子から聞いた話だけど、岡村綾香の弟の岡村玲は高校球児だと聞いたよ。高校球児の弟を持つ女子プロボクサーといえば、昨年の夏に女子高生ボクサーとしてプロデビューした谷本みどりだったよね。今後の動向次第では、貴子も谷本みどりと対戦する可能性だってあるみたいだよ。谷本みどりは現在戦っているミニフライ級では減量苦となっており、もしかしたら1階級もしくは2階級上げて試合をする計画があるみたいだ。ちなみに、今度の週末に開催される春季高校野球関東大会には、岡村綾香の弟の岡村玲が所属する東京都の八日学院と谷本みどりの弟の谷本光が所属する神奈川県の西浜学園が初戦で対戦することとなったんだよ。この試合のある土曜日。私、仕事が休みなんだけど、貴子も仕事休める?」
と杏奈が貴子に聞くと、
「土曜日でお客さん多いかもしれないけど、休めるよ。」
と答えると、
「じゃあ、今度の土曜日、高校野球観に行こうよ。」
と杏奈から誘われたので、
「じゃあ、一緒に行こうか。」
と貴子は返事して、今度の土曜日は杏奈と野球観戦をする約束となった。
貴子と杏奈が野球観戦の約束をした当日が来た。貴子と杏奈は春季高校関東大会が開催されている野球場の客席で西浜学園vs八日学院の試合を観戦していた。当日の試合で活躍したのは八日学院の岡村玲で、序盤はチャンスの場面でタイムリーヒットを打ってチームに貢献。守備でもキャッチャーのポジションで二度にわたって相手の盗塁を阻止する活躍となった。一方の西浜学園の谷本光は背番号11をもらって当日は先発登板となったが、序盤から制球難に苦しみフォアボールを連発。最終的には3回途中まで投げて5失点の投球内容で降板となり、エースの石井光良にマウンドを譲る結果となった。石井光良がリリーフ登板して以降は、八日学院打線を封じて4回以降は無得点に抑えて味方打線の反撃を待ったが、相手のエースの飯島望がキャッチャーの岡村玲の好リードにも助けられて、6回の長野幸太朗の2ランホームランの2点のみに抑えて、5-2で八日学院が勝利となった。試合終了後に、偶然にも貴子と杏奈の2人は小笠原寛子と遭遇することとなった。
「久しぶりじゃない。杏奈。」
と寛子が声をかけると、
「そういえば半年くらい会ってなかったね。寛子。久しぶり。」
と杏奈が寛子に声をかけた。
「杏奈と一緒にいるのは年明けにフライ級の日本チャンピオンになった吉見貴子だよね。そういえば、昨年の夏に試合をしてからは初めてになるよね。久しぶり。」
と貴子に声をかけたので、貴子は寛子に対して無言で頭を下げた。その直後のことだった。八日学院の応援席の方向から春菜と春樹の姿を見かけることとなり、貴子の姿を見た春菜が貴子に向かって手を振った。貴子が春菜のところに歩み寄ると、
「貴子も今日の試合、観に来てたんだ。今回の試合は春樹の婚約者の赴任先と私の母校との対戦となってしまい、この試合はバックネット裏で観戦していたんだよ。」
と春菜が言ったので、
「春菜、八日学院の卒業生なの。」
と貴子が聞くと、
「そうなの。通信制だけどね。」
と春菜は答えた。
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