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第111話


 貴子の有美子との激闘の試合から1ヶ月半が過ぎた。貴子が試合をした2週間後に江麗奈がプロデビューから初めてとなる海外選手との対戦の試合が後楽園ホールであった。対戦相手は韓国から来日した選手だった。だが、この試合は江麗奈にとっては新たな試練の始まりとなり、試合は6回戦で行われ、試合の序盤は相手の鋭いパンチから2ラウンドには貴子との試合以来となるダウンを喫することとなった。今回は10カウント以内に立ち上がって試合は続けられ、規定の6ラウンドを戦った。判定では2ラウンドのダウンが響いて判定負け。世界のボクシングのレベルを実感させられる結果となった。貴子は有美子との試合でKO負けを喫して担架でリングから退場した関係から精密検査のため、3日ほど入院生活を送ることとなり、退院したばかりだった。精密検査の結果、現役続行には支障はなく、しばらくの間休んでから次の試合へ向けて練習を再開する見込みとなった。貴子にとっては練習再開前の休みの最後の楽しみとして江麗奈の試合を観戦していた。試合終了後、貴子は江麗奈のジムの関係者に呼ばれて控室へと案内された。貴子の姿を見た江麗奈はつぶやいた。

「私も負けちゃった。」

江麗奈にとってはプロでの試合では2敗目を喫する結果となった。

「そういえば貴子。元同門対決となった試合。KOで負けて担架で運ばれたんだってね。検査の結果はどうだった。」

と聞くと、

「結果は異常なしだった。現役続行となり、次の試合もできることとなった。」

と貴子は答えた。

「こんな形で敗れたことは残念だったけど、検査の結果が良かったんで安心した。」

と江麗奈は言った。


 江麗奈の試合から2週間後。貴子のスマホに江麗奈からメールが届いた。



 そろそろ花見の季節だね。

 2週間後の週末明けに有休を3日間申請したら、

 これ通ったんだよ。


 そこでだ。

 有給に入る3日間の前日に仕事を終えてから、

 夜に新幹線で新大阪へと移動して

 その日の夜は和歌山まで移動して和歌山で1泊。

 3泊4日のスケジュールで紀州路の旅しない。


 えれな



との内容だった。それを見た貴子は、



 いいよね。

 桜の花をバックに紀州路の旅。

 2週間後の週末明け。

 行こうか。


 たかこ



との返信のメールを江麗奈に送った。



 それから2週間後の週末明け。貴子は昼までで仕事を切り上げて江麗奈との待ち合わせ場所となっている東京駅へと向かった。貴子の乗った電車が東京駅に到着すると、駅のホームで江麗奈が待っていた。貴子が電車から降りると、しばらくして江麗奈が貴子に手を振って合図した。

「貴子。お待たせー。」

と江麗奈は声をかけた。

「私たち乗る新幹線。5時12分発だよね。」

と貴子が言うと、

「そうだよね。あと1時間半くらいしかないよね。まずは夕食の弁当を買わなきゃ。」

と江麗奈が言うと、

「そうしようか。」

と貴子は答えた。新幹線までの待ち時間を利用して東京駅の中にある弁当屋で2人は弁当を購入。弁当の購入が終わって弁当を袋に入れて下げた時には新幹線の発車時刻が近づいていた。貴子と江麗奈の2人が新幹線のホームへと到着すると、既に駅のホームには2人が乗る新幹線のぞみが入線していた。貴子と江麗奈の2人が新幹線に乗り込んで5分くらいが過ぎて新幹線は新大阪へ向けて発車。貴子と江麗奈は新幹線の窓から夕焼け空を眺めながらの旅の始まりとなった。旅の初日は新大阪まで新幹線で移動。新大阪から和歌山までは特急くろしおで和歌山まで移動。和歌山で宿泊の行程だ。乗り継ぎ駅の新大阪に着いた時には日が暮れて空は真っ暗になっていた。2人が初日の宿泊先となっている和歌山のホテルへと到着した時には9時半を回っており、部屋に入る時には時計は10時を指していた。旅の初日は仕事が終わってから、その足での移動だったためホテルに到着すると、その日の夜は一晩爆睡。目が覚めた時には時計は7時半を指していた。今回の旅は江麗奈が計画の大半を立てており、3泊4日の予定で初日は和歌山での宿泊。2日目と3日目の2日間は鯨の町で有名な太地のホテルで2泊して翌日には東京へと戻る行程で計画されている。貴子と江麗奈はホテルの中のレストランで朝食を食べることとした。食事中に江麗奈は貴子に話した。

「実はここのホテル。チェックアウトは朝の10時までにしなければいけないみたいなんだけど、10時を過ぎてチェックアウトをすることをフロントに申し出れば1時間につき1,000円の延滞金を払えばチェックアウトの時刻を昼あたりに遅らすことも可能なんだ。午前中に貴志川へ外出する予定にして荷物を部屋に置いて外出してチェックアウトを正午にする予定だけどいいよね。」

と提案。

「いいよ。」

と貴子は答えて江麗奈の提案に賛同した。朝食を食べ終わって一度部屋に戻り、再び部屋のカギを持ってフロントへ。フロントに部屋の鍵を預けてもらい、2人は世界的にも猫の駅長で話題となった和歌山電鐵貴志川線の旅を午前中は満喫。貴志駅の駅長猫にも会えて貴子と江麗奈は駅長猫に癒された。貴志川から戻ってホテルへと戻ると、貴子と江麗奈は荷物をまとめてチェックアウト。チェックアウトを終えると2人は和歌山駅の中にあるコンビニで昼食の弁当を購入。買い物を終えると、串本方面行きの特急くろしおの到着時刻まで残り10分を切っていた。しばらく待っていると駅のホームに到着メロディーが鳴り、貴子たちが乗る電車が到着した。

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