第44話

貴子と有美子の両者がリング中央に呼ばれてレフェリーから試合に対する注意事項を受けてからグローブを合わせた。試合はノンタイトル6回戦。試合開始のゴングが鳴った。この両者は同じジムで同門だった時代がある元同門対決。試合開始からバチバチの打ち合いのボクシングとなった。第1ラウンドの2分は互角の勝負となった。第2ラウンドも同じような展開で互角の勝負を演出。白熱した勝負となった。しかし、試合が中盤へと入った第3ラウンド。このラウンドが始まって1分が近づいてきて試合は大きく動き出した。ここ最近はフィジカルトレーニングで筋力を上げていた貴子が先にチャンスとなった。有美子の一瞬のスキからニュートラルコーナーへと押し込んだ。ロープを背にした有美子はクリンチで逃れた。このラウンドは貴子が主導権を握った。だが、この対戦カードは元同門対決。第4ラウンドは貴子が第3ラウンドに続いて有美子をロープに押し込む展開を演出した。試合は終盤に入った。第5ラウンドも途中までは貴子のペースで試合が進んだ。第5ラウンド開始から1分が過ぎた時間帯だった。貴子のガードのスキを見つけた有美子は貴子のあごに向かってアッパーカット。このアッパーカットが貴子のあごを直撃。貴子は膝から崩れ落ちるようにマットへと倒れた。ダウンを喫した貴子はマットの上に横になった状態になった。レフェリーからのカウントが始まった。有美子はニュートラルコーナーへと下がった。レフェリーのカウントが始まっても貴子はマットの上に横たわった状態。最終的にテンカウントを聞くこととなり、5ラウンドKOで有美子が勝つ結果となった。試合終了後も貴子はマットの上で失神状態で倒れていた。セコンドに入っていた有美も貴子のことを心配しながら見ていた。しばらくして、リング下から担架が用意された。貴子は有美子との元同門対決でKO負けを喫してしまい、失神状態のまま担架に乗せられてリングから退場。医務室へと運ばれた。医務室に到着してしばらくして貴子は意識を取り戻した。

「ここはどこなの。」

と貴子が言うと、

「ここは医務室だよ。」

と有美から言われて、

「ワタシ。負けちゃったんだ。」

と貴子は答えた。しばらくして、有里が来た。

「たかちゃん。この試合結果を聞いて、当日は幼稚園があって応援に来れなかった里紗がたかちゃんのことを一番心配してたんだよ。意識が戻って救急車で運ばれずに済んだだけ良かったよ。試合は残念だったけど、次はがんばってね。」

と貴子にエールを送った。貴子にとってはプロデビューして初めての連敗を喫する悔しい試合結果となった。

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