第114話
「僕たちも本宮へは行くんだ。いつ行くんだ。」
と春樹が聞くと、
「明日、行くつもりだよ。」
と江麗奈が答えた。
「私達も明日行く予定だよ。」
と麗奈が言うと、
「じゃぁ、どうする。」
と貴子が言い出し、
「明日、8時に新宮駅で待ち合わせでどうでしょうか。」
と江麗奈が言った。
「本宮へ行くのも新宮からだと同じバスだよね。8時に新宮駅で。4人で一緒に本宮へ行きましょう。」
と麗奈は貴子たちと明日の8時に新宮駅で待ち合わせること約束をした。しばらくして、車内アナウンスがあり、
「まもなく、白浜に到着します。」
とのアナウンスがあった。アナウンスから2分ほどで貴子たちの乗った電車は白浜に到着。この電車に乗っていた大半の乗客が、ここの駅で降りていった。電車が白浜を出ると、貴子たちの乗った電車の車両はほとんど貸し切り状態となった。
「次は周参見です。」
という車内アナウンスがあった。
「白浜を出て新宮へ向かうくろしおの車内がガラガラになるのは国鉄の時代からだ。ここの沿線の各駅停車は国鉄時代の前後は通学利用の高校生を中心に賑やかだった。しかし、少子化の影響で、この年代の鉄道利用の数も減っているんだ。おまけに、ここの沿線の高校は統廃合もあって当時と比べて学校の数も減っているんだ。そうなると、頼みの綱は外国人観光客のインバウンドの需要となるんだ。もちろん、新宮方面まで、くろしおを利用する外国人観光客もいるのはいるんだよ。傾向から見てアジア系が中心で中国人や韓国人が中心みたいだ。欧米系は以外と少ない傾向にあるみたいだ。東京からの白浜のアクセスの玄関口となる白浜空港からは空港から直結で新宮へのバスが運行されている。本宮を経由する系統と、串本を経由する系統の2つがあるが、串本を経由する系統は、乗降ルールの兼ね合いで白浜からの便は空港以外の途中の停留所からの新宮方面への乗車ができない。逆に新宮方面からの白浜行きの便は空港まで下車できないというルールが存在する。そのルールの影響で、ここ最近は各駅停車の串本から新宮の区間は外国人観光客の鉄道利用の数も増えている傾向にあるみたいだ。江麗奈ちゃんたちが行く太地については捕鯨の賛否の影響から欧米系は以外と少ない傾向にあり、中国人を中心のアジア系が来る傾向にあるみたいだ。一方で、本宮を経由する系統の白浜空港からのバス路線は一般の路線バスと同じ乗降ルールだ。このバスは紀伊田辺駅にも乗り入れており、欧米系の観光客の中には、ここの駅でバスに乗り換えて本宮へ行くケースも少なくないようだ。以前、本宮へ行った時にも田辺から来るバスから本宮で降りる外国人が多かったみたいだ。その大半が欧米系の観光客だったみたいだね。そういった背景からJR は白浜から新宮までの区間の鉄道の存廃問題を巡って話を出すようになったんだよ。高速道路も、すさみまで伸びたからね。それも影響しているんだよ。」
と春樹は白浜から新宮までの間の鉄道の存廃問題の事情を説明した。
「これ、聞いたことある。話は変わるけど、私の高校時代の2年先輩の女子が卒業後にプロに転向。北海道から引っ越して、大阪のジムの所属でプロデビューしたんだ。その先輩。同門の先輩の女子選手に誘われて婚活パーティーに参加。ここで彼氏ができたんだ。結局、これに参加した関係でプロでの戦績では軌道に乗りながらも、ケガや病気とは関係なしに現役引退したんだ。和歌山県では少子化対策の一環として県主催の婚活イベントを行っているみたいで、この先輩が和歌山で行われたイベントに参加。そこで彼氏ができたんだ。しばらくして、現役引退を決めて所属先のジムを退会。大阪から彼氏のいる串本へと引っ越し。結婚したんだ。」
と江麗奈は言った。
「そういえば、このケース。三井先生から聞いたことある。スポーツの世界でも男子選手とは違い女子選手のケースでは競技で成績を残していながら、ケガや病気以外の個人的な理由で若くして現役引退となるケースを結構聞く。プロボクシングでは女子選手のケースでは、日本チャンピオンとなりながら、初防衛戦を戦わずに現役引退したいと言い出した選手がいたみたいだ。そのコ、所属先のジムのオーナーとも話し合った結果、チャンピオンとなった以上は、次にチャンピオンを目指している選手たちのためにもケジメをつけなければいけないとの結論となり、最終的に統括団体のボクシングコミッションに引退届を提出することとなったんだよ。彼女、高校生の時にプロデビューしており、現役引退した当時も、まだ20歳だったんだよ。女子選手のケースではケガや病気以外の個人的な理由で20歳くらいの年齢で現役引退するケースを結構聞くね。だいたいは、チャンピオンになっているケースは少なく、引退届を出さずにライセンス更新を行わずに自然消滅という形でライセンス失効となるケースが一般的だ。引退届を提出したケースはまれなケースで、このケースでは本人がチャンピオンとなった以上、引退届を出さずにライセンス更新をせずに放置することができなかったみたいだ。最終的には、一つのケジメとして引退届提出でケジメをつけることとなったんだよ。」
とボクシングには詳しくない素人の麗奈が説明した。
「僕はその話、聞いたことある。東京のケースではないよね。実際に、その選手の試合を何回か見たことはあるけど、福岡県のジムの所属選手だったよね。アトム級の日本タイトルを獲得したのも事実だ。タイトル奪取当時は20歳になったばかりだったみたいだ。彼女が現役だった当時は事情を知らなかったんで初防衛戦がいつなのか気にしていた。しかしながら、半年近く経ってタイトル返上、現役引退との情報があり、えっ嘘だろ。とビックリしたね。話を聞いたら、彼氏できた。結婚する。との話だったんだ。」
と目を白黒させながら春樹は説明した。
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