第115話

「悪かったね。はるくん。麗奈さんと結婚して幸せかもしれないけど。今、私のトレーナーとして試合でもセコンドに入っている有美さんとの試合の前に結婚を前提に交際を申し込んだことは覚えているよね。麗奈さんという相手がいることを知らずに交際を申し込んで失恋しちゃったんだよ。このことは、前にも麗奈さんには話しているんで言わせてもらうけど、麗奈さんと出会っていなかったら、結婚相手は私じゃなかったのかしら。プロデビューした当時は、ドキドキしながら私の試合を見ていたと有里から聞いているよ。まぁ、終わったことだから、この程度にしておくけど。」

と貴子は過去のことで春樹を揺さぶるような発言をした。

「私だってプロボクサー。あの時の立場だったら同じことしたかな。リングで戦う以上は命を落とす可能性だってある。思い残すことはないという形で戦いたかったんだろうね。」

と江麗奈は言った。

「江麗奈の言う通りだよ。いとこのちえみから聞いている。過去には女子のプロのリングでもリング禍があったことを聞いている。はるくんは当然そのこと知ってるよね。」

と貴子は春樹に問いただした。

「おれ。当然知っとるよ。」

と春樹は答えた。

「まぁ、この話はいいとするか。終わったことだから。私達のよもやま話はここまでとして。」

と貴子は言った。

「話を本題に戻すけど。白浜から新宮までの区間の鉄道の存廃問題に戻るけど。大阪に住んでいる知り合いからの話だけど。ここ最近は、高速道路がすさみまで伸びた関係で、あちら方面の国内での観光需要ではマイカー利用が増えている傾向にあるんだよ。JRも電車の利用客の確保でいろいろやっているんだよ。国内での需要で考えれば、特急くろしおの利用促進の一環として白浜のアドベンチャーワールドのPRを兼ねてのパンダくろしおの運行だ。前方の車両の顔をパンダの顔をモチーフにした車両を運行。子供を対象に休日需要で利用客の確保をしたいと売り込んでいる。だが、白浜より南の鉄道の利用は伸び悩んでいるのも事実。ここ最近は、この区間については自転車ごと電車に乗車することも可能というルール緩和もあったくらいだ。だから、インバウンドの需要で欧米系の観光客の需要も必要だよね。それも、太地の場合は太地の鯨に親しんでもらう欧米系の観光客の呼び込みも必要なのか。その条件を満たす国となると限られており、相手国の有力国となるとロシアが有力となるでしょうね。政治的には領土問題もあったりして仲が悪いことも事実で難しい問題も抱えているようだ。」

と春樹は言った。

「実はね。私はシベリア鉄道の北海道延伸構想には賛成の立場だよ。春樹は、このことを言うと慎重な立場で、サハリンと北海道との間を陸続きにしないで稚内近辺地域とオホーツク海沿岸地域の経済が成り立つかどうかを検証した上で、この構想には受け入れざるを得ないのかなと主張しているようだ。理由としてはJR 九州が運行している観光列車の『ななつ星』という列車の成功例があることからだろうと思われる。この列車。豪華列車ということで100万円ほどかかるみたいだ。だけど、人気があり、乗りたいという客は多いんだそうな。名寄本線が今も運行されていたら、北海道版の『ななつ星』で台湾や東南アジアからのインバウンドを呼び込めたのに。と主張しているようだ。日高本線の鵡川と様似の区間の廃線についても災害による復旧工事の費用が多くかかってでも全線復旧させれば良かったのに。沿線の自治体は、その観光資源をみすみすと手放してしまった。とこぼしたくらいだ。こちらの沿線では浦河みたいに競走馬の生産が盛んな地域があり、競走馬として成績を残した名馬たちが余生を過ごしていることからも馬を見たさに観光客は来るんだそうな。それに加えて乗馬体験ができる施設を作って観光客を誘致すれば、それをきっかけに家族連れの観光客も呼び込める。しかしながら、日高本線の沿線でも、それに沿ったコースで高速道路ができた。国内での需要ではマイカーが主流となってしまったのも事実みたいだ。それに加えて外国人観光客のインバウンドを呼び込めたら、そこの部分でのアクセントも加わって鉄道の存続もできたのではないのかと、春樹は検証したようだ。もし、シベリア鉄道の北海道延伸が実現すれば、江麗奈にとっては夏場にしか行く機会に恵まれないサハリンへの往復が冬場でもできるようになるというメリットはあると思うけどね。」

と麗奈が言った。そういった話をしているうちに車内アナウンスが流れてきた。

「まもなく、周参見に到着します。」

とのアナウンスがあった。貴子たちの乗った電車は周参見に到着。到着後、しばらくして電車は更に南へ向けて発車した。発車後、車内アナウンスが流れてきた。

「次は串本です。」

とのアナウンスがあった。アナウンスの後に、4人の話の続きが再開された。

「紀勢線の存廃論議。白浜〜新宮間で特に各駅停車の利用客が少ないのが周参見と串本の間の区間だ。利用状況から見て白浜より先の区間で外国人観光客の利用をある程度確保すれば存続は可能だろう。特急の利用状況から見ると上りと下りで外国人観光客の利用状況に差があるみたいで、新宮方面行きの上りについては本宮大社から巡るケースが多くて欧米系を中心に紀伊田辺で下車してバスに乗り継ぐケースが多い傾向に見られる。一方で、大阪方面行きの下りでは本宮大社から巡るケースでは最後に巡るのが那智山や新宮の速玉大社を巡るケースが多く、そちらの近くのホテルで宿泊する傾向から新宮や紀伊勝浦からの乗車のケースが目立つようだ。欧米系の観光客の利用も下りの場合は特急の利用が多く、利用状況によっては上手いこといったら路線存続は可能だろう。しかし、各駅停車の事情では周参見から串本の間の区間が肝となるだろう。この区間の利用状況によっては、大分県から宮崎県の県境の区間を結ぶ日豊本線の佐伯〜延岡間のような電車の運行状況になる可能性だって否定はできないでしょうね。ちなみに、この区間の各駅停車は1日1往復だとの情報だ。」

と春樹は言った。

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