第47話

鯨のことで話が盛り上がっているうちに、車内アナウンスが流れてきた。

「まもなく、御坊。御坊に到着します。紀州鉄道線はお乗り換えでございます。」

とのアナウンスがあった。

「御坊といえば道成寺というお寺が有名だよね。ここの寺。よその寺と違って鐘がない寺で有名なんだ。」

と春樹は言った。

「そうだよ。ここの寺。安珍清姫伝説があり、ここの寺だけ鐘がないんだよ。」

と江麗奈が言った。しばらくして、貴子たちが乗った電車は御坊に到着した。貴子たちが乗った電車が入ったホームの一番向こう側のホームを麗奈が指さした。

「ここの駅の一番向こう側のホームに紀州鉄道線のホームがあるんだよ。この時間帯は列車停まってないけどね。この路線。3kmくらいの短い路線なんだよ。」

と麗奈が説明した。麗奈が紀州鉄道線のことで説明しているうちに貴子たちが乗った電車は更に南へ向けて動き出した。

「紀州鉄道線といえば学門駅という有名な駅があるんだよ。ここの駅の近くに高校があって、そこの高校の最寄駅が学門駅なんだよ。学門駅の入場券の切符は受験合格祈願の切符としても有名なんだよ。私の教え子たちの中にも学門駅の入場券の切符を買って大学受験の合格祈願の切符としたケースもあったくらいだ。ちなみに、この路線。御坊駅から海沿いへ向けて線路が伸びており、西御坊まで線路が伸びているんだよ。駅員さんのいる駅はJR と接続する御坊駅と西御坊駅までの間の途中駅となる紀伊御坊駅の2つだけなんだよ。紀州鉄道線のグッズ等を販売しているのは紀伊御坊駅で、学門駅の入場券の切符も、ここの駅で販売されているんだよ。行く機会があれば行ってみたら。」

と麗奈が紀州鉄道線のことで更に説明した。麗奈が紀州鉄道線のことで説明しているうちに「次は紀伊田辺。」という車内アナウンスがあった。電車が御坊に到着する前後から春樹は無口で窓を眺めていた。その光景を見て貴子は麗奈に話しかけた。

「そういえば、この区間の途中でかえる橋という全国的にも有名な橋があるんだよ。この電車の窓からも見えるんだよ。この橋。テレビでも紹介されたくらいだ。」

「聞いたことある。この電車。特急だから、かえる橋のある最寄駅は通過だよね。」

と麗奈が言った直後だった。窓を眺めていた春樹の沈黙が破れた。

「いよいよだぞ。かえる橋。」

と言ってスマホ片手にシャッターチャンスを伺った。まもなく、貴子たちの乗った電車は、かえる橋の前を通過。貴子たち4人はスマホ片手にかえる橋を撮影。撮影直後、4人はスマホで撮ったかえる橋を見せ合った。

「この橋の最寄駅は印南なんだよ。駅のホームからも見えて眺めもいいんだよ。印南駅は各駅停車しか停まらないので、この区間を各駅停車で利用する機会があれば立ち寄ってみたら。」

と春樹は、かえる橋を間近で見ることも勧めた。スマホで撮ったかえる橋の写真を見せ合っているうちに車内アナウンスが。

「まもなく、紀伊田辺に到着します。」

とのアナウンスがあった。電車は紀伊田辺に到着。複線区間はここまで。ここから先、南は単線区間となっていく。通過駅での行き違い待ちで停車する場面も出てくる優雅な旅が待っている。貴子たちの乗った電車は紀伊田辺を出発。出発後、車内アナウンスが流れた。

「次は白浜です。」

とのアナウンスがあった。

「白浜といえば、ジャイアントパンダで有名なアドベンチャーワールドがあるんだよ。尼崎に住んでいる私の友達が子供を連れてアドベンチャーワールドへ行ったんだ。私達の乗ったくろしおで行ったんだ。どうも、子供がパンダくろしおに乗りたいとせがんだみたいだ。遊園地もあったり、サファリがあったり、イルカショーがあったりとアドベンチャーワールドを満喫したんだ。」

と貴子が言った。

「確かに、ここのパンダは有名だ。東京の上野動物園にもパンダがいるみたいだが、白浜のパンダは見たいと東京からでもアドベンチャーワールドへ行くくらいのフィーバーぶりだ。東京からの場合は、白浜に空港があることから飛行機で行くケースが多いみたいだ。東京の羽田空港から白浜空港までは飛行機で1時間くらいで行けるんだ。むしろ、交通の利便性では大阪からより東京からの方が利便性ではいいみたいだ。貴子さんと江麗奈さんは、この路線に乗るのは初めてだよね。くろしおを利用する客は大半が白浜で降りる。白浜から先の乗車客は一気に少なくなる。白浜を出ると、貸切状態になる可能性もあるから、白浜より先の電車の事情については、この電車が白浜を出てから話すことにするよ。」

と春樹は言った。

「君たち、本宮に行く予定はあるの。」

と麗奈が貴子と江麗奈の2人に聞いた。

「あるよ。」

と貴子が答えた。

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