第17話

下田での合宿が終わって2週間が過ぎた。貴子は店の窓から桜の花を眺めていた。しばらくして、いとこのちえみが来店した。

「たかちゃん。いつもの長さに切ってくれる。」

と注文が入ると、ちえみの散髪は貴子が担当した。散髪中に、

「もう4月になったけど、たかちゃんの誕生日の15日。仕事で休みになったんだ。当日は、たかちゃんの部屋で誕生日パーティーしようよ。」

と、ちえみが提案。しばらくして、

「貴子の誕生日に、ちえみと貴子の誕生会。いいよね。そうだ。ちえみちゃんが転校して行くまで貴子と一緒に仲良く小学校へと通っていた幼なじみの美保ちゃんも呼んだらどう。」

と、のりこが提案すると、

「よそに引っ越してから、美保ちゃんと高校で再会するのを楽しみに、美保ちゃんと同じ高校に行ったことを思い出すな。3人で女子会を兼ねての、たかちゃんの誕生日パーティーか。いいよね。」

と、ちえみは貴子と同じ小学校へと通っていた頃を思い出していた。


 貴子の誕生日当日。貴子が待ち合わせていた待ち合わせ場所に、ちえみと美保がやってきた。待ち合わせ場所に3人が集まると、待ち合わせ場所の近くにあるケーキ屋に立ち寄り、バースデーケーキを購入。バースデーケーキを買うと、買ったバースデーケーキを持って貴子の家へと向かった。家に到着すると、3人は貴子の部屋に直行した。貴子の24歳の誕生日は、貴子本人は試合まで残り1か月となり、体重のことを気にしながらのバースデーパーティーとなった。ケーキを食べながらの会話の中で、

「私の誕生日、祝ってくれてありがとう。実は、本当はケーキ、もっと食べたいけど1か月後に試合が控えていて体重のことが心配なんだ。あとは2人で食べて。」

と貴子は言った。

「私も、たかちゃんの試合、応援しているよ。がんばってベルト守らなきゃ。ちえみが引っ越してからも、たかちゃんとは仲良くしてきたよね。はるくんに告白された時も、真っ先に私のところに相談に来たよね。告白のしかた。強烈だったもん。」

と美保が貴子との過去の話を出した。

「そういえば、はるくんは鉄オタの高校教師の麗奈と近々結婚するとの話。聞いてるよね。」

と、ちえみが言うと、

「その話は2か月ほど前に聞いた。私の家の散髪屋に、はるくんが客としてやって来て、その話が出たんだよ。はるくんが散髪を終えて店から出た直後の帰り際に私が声をかけると、たかちゃんのボクシングの話が出てきて、たかちゃんの3度目の防衛戦が楽しみだと聞いたよ。ちなみに、はるくんがたかちゃんの話を出したんで、告白した当時、たかちゃん、交際するかどうかで非常に悩んでいたとのことも言ったんだ。だけど、もう過去の話だけどね。実は、はるくん。高校生の時にも私に、たかちゃんの話を出して、その当時は、たかちゃんへの過去の告白のことについて噛みついてしまったんだ。」

と美保が中高生時代の思い出話にふけていた。

「そういえば、はるくん。宮原理容室に来ていたんだね。実は、私個人的には酒屋のアラレちゃんとは違って、たかちゃんとはるくんの男女交際には、あまり賛成ではなかった。私が、まだ、よそへ引っ越す前には時よりアラレちゃんところにも遊びに行って、ついでにアラレちゃんところの酒屋でジュースを買ったことを思い出すな。思い出したら、そう。高校時代にアラレちゃんと、たかちゃんとはるくんのことで話をしたら、アラレちゃんは、この2人を結婚させたかったと話していたんだよ。最終的には、たかちゃんとはるくんの交際は実現しなかったけど、はるくんには麗奈さんと幸せになってもらいたいな。」

と、ちえみが言った。

「思い出したら、そうだったね。はるくんは、私に対して結婚を前提に交際したいと主張した。当時は、付き合っていた人がいたからフるしかなかったよ。それから何年か経ってプロボクサーとなって日本ランカーへのチャンスとなった試合の当日に私は、はるくんに交際を申し込んだんだ。当然、付き合うことが出来れば、いずれは結婚するつもりだった。だけど、私がはるくんに告白した時には、はるくんは麗奈さんとの交際が始まっていたみたいなんだよ。二股恋愛ができないはるくんのことはわかっている。いずれ、はるくんに振り向いてもらうためにボクシングがんばってきたんだ。」

と貴子は今までのことを振り返っていた。

「たかちゃんの試合。今回は母の日の開催だってね。たかちゃんのボクシングの事で協力してくれたお母さんのためにも試合で結果残さないとね。」

と、ちえみが言うと、

「この試合に勝てば世界タイトルか東洋太平洋タイトルへの挑戦のチャンスもあるみたいだから。今まで応援してくれたお母さんのためにもがんばる。」

と貴子は3度目の日本タイトル防衛へと誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る