第40話

このメールが届いた翌日にニーナが来日。来日時は東京では行きつけとなっている渋谷のホテルでの宿泊となった。土曜日になり、貴子は江麗奈との待ち合わせ場所となっているニーナが宿泊先として利用しているホテルでの待ち合わせとなり、横浜から東急東横線を利用して渋谷へと移動。渋谷駅前の『忠犬ハチ公』の銅像の前を横目に江麗奈との待ち合わせ場所となっているホテルへと向かった。ホテルに入ると、ロビーで江麗奈が待っており、

「江麗奈。お待たせ。」

と貴子が言うと、貴子が江麗奈の座っているテーブル席に座った直後に、

「もうじきニーナが部屋から降りてくるから待っててね。」

と江麗奈は言った。それから5分後。エレベーターが1階に到着してエレベーターの扉が開くと、ニーナの姿があった。ニーナは江麗奈の前へと行き、今回が初対面となった貴子にあいさつをした。

「はじめまして。江麗奈のいとこのニーナ・マクガフです。」

と流暢な日本語で自己紹介した。

「はじめまして、吉見貴子です。ロシア人なのに日本語上手ですよね。」

と貴子が言うと、

「実は私。ユジノサハリンスクの大学で日本語勉強しています。日本のアニメ文化興味あり、江麗奈の試合当日も応援で来日しました。吉見貴子。あの時の対戦相手ですね。」

とニーナに聞かれて、

「はい。」

と答えた。3人はニーナの部屋の鍵を預けにフロントへ向かった。フロントで貴子がホテルのレストランのパンフレットを見ている間にニーナは鍵の預かりの手続きをフロントで行っていた。

「お客様。お帰りの時間は何時ごろになりますか。」

とフロント係の女性に聞かれると、

「3時ごろになる予定です。」

とニーナは流暢な日本語で言った。

「お気をつけて。」

とフロント係が言った直後だった。貴子を見たフロント係が貴子に声をかけた。

「もしかして、お客様と一緒におられるショートヘアのお連れ様。プロボクサーの吉見貴子さんですか。」

と聞かれると、

「はい。私が吉見貴子です。」

と貴子は答えた。

「もしかして、実家は美容院してますよね。」

とフロント係が貴子に聞くと、

「はい。実家は美容院してますよ。」

と貴子は答えた。

「実は私の実家も下北沢で美容院を経営していて、貴子さんのウワサは聞いています。はじめまして。私は長戸明日香といいます。今後とも当ホテルをよろしくお願いします。それでは、お気をつけて。」

と明日香が挨拶をして3人が外出する姿を送り出した。

 貴子たち3人は山手線を利用してオタクの聖地として有名な秋葉原へと移動した。秋葉原へ着くと、貴子がかねてから行きたいと熱望していたコスプレ衣装の店へと立ち寄り、ここで1時間ほどショッピングを楽しむと昼を迎えることとなった。昼となり、3人はメイドカフェでランチにすることとした。メイドカフェへと入ると、テーブル席に入り、定番となっているオムライスを注文した。メニューを待っている間、3人は女子プロボクシングの話で盛り上がった。

「貴子。正月明けに試合だってね。対戦相手の石本有美子。貴子の元同門だってね。」

と江麗奈が聞くと、

「そうよ。彼女がプロデビュー当時からの同門で、おととし結婚を機にジムを移籍したんだよ。」

と貴子は答えた。

「へぇー。彼女、結婚したんだってね。それで、新居のある川崎のセーラーマーズジムへ移籍したんだ。」

と江麗奈は答えた。

「そういえば、私の大学の知り合いでボクシングをしている女の子がいて、そのコ、セーラーマーズジムの会長のこと知ってて、会長のプロボクサーとしての現役時代のこと知ってるんだ。日本のプロボクシング界には女性のジムオーナー結構いるみたいだけど、その大半がボクシング未経験だと聞く。プロボクサー出身のジムオーナー数えるくらいしかいないと聞いたことある。」

とニーナが言うと、

「そういえば、日本ではプロボクサー出身の女性のジムオーナーは数えるくらいしかいないみたいで、関東ではセーラーマーズジムの会長がプロボクサー出身の初めての女性のジムオーナーだと聞いた。」

と貴子が言うと、

「私の所属先のジムの会長。女性だけど、先代の元プロボクサーの父親の跡を引き継いでのジムオーナーなんだよ。メディアへの露出も多く、毒舌を吐くことでも有名だ。」

と江麗奈が言ってるうちに、3人が注文していたオムライスがテーブルへとやってきた。持ってきたメイドから、

「お待たせしました。オムライスでございます。お嬢様。」

との声かけがあった。しばらくして、

「もしかして、こちらのショートヘアの方はプロボクサーの吉見貴子さんですか。」

とメイドが聞くと、

「はい。私が吉見貴子ですけど。」

と答えると、

「お隣におられる外国人とのハーフの方は西村江麗奈さんですか。」

とメイドが聞き、

「はい。私が西村江麗奈です。」

と江麗奈は答えた。

「江麗奈さんのお母さんはロシア人と聞きましたが、私の兄の友人がバイクマニアで稚内からサハリンへのフェリーが運航されていた当時にバイクでサハリンを縦断したことがあるとの話を聞きました。光栄です。」

とメイドが答えると、

「サハリンは冬の寒さは厳しいですけど、夏はいいところですよ。夏のサハリンはおすすめです。ぜひ、いらしてください。」

と江麗奈が言うと、

「ありがとうございます。実は私。高校時代からボクシングをしてましてプロボクサーを目指しています。もしかしたら、後楽園ホールで会える機会があるかもしれません。どうぞ、ごゆっくり。」

とメイドは言い、持ち場へと戻った。ランチを終えると、今話題の『アイドル文化祭』という店を3人は立ち寄り、この店の最寄り駅となっている東京メトロの末広町の駅からニーナの宿泊先となっている渋谷のホテルへと東京メトロを利用して戻ってきた。ホテルへと到着してニーナはフロントで部屋の鍵の受け渡しの手続きをした。ニーナの部屋の鍵の受け渡しは男性のフロント係が担当した。ニーナがフロントで鍵を受け取った直後だった。ティータイムでレストランを利用していた春樹がレストランから出てきて、男性のフロント係に、

「よう。久しぶりだな。」

と声をかける光景を見ることとなった。それを見た貴子は春樹に声をかけ、

「もしかして、このフロント係。はるくんの知り合いなの。」

と聞くと、

「そうだよ。同じ鉄オタ仲間で親友なんだ。鉄道関連のイベントがあると度々一緒に行く仲間なんだ。」

と春樹が言うと、

「そうなんだ。」

と貴子は顔を赤くしながら答えた。貴子にとっては一目ぼれの恋の始まりとなった。

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