第42話

偶然にも明日香と再会した貴子と江麗奈の2人は出稽古先の山辺ジムに到着した。ジムに入ると、元キックボクサーの山辺敏弘会長が2人を出迎えた。

「はじめまして。ここのジムのオーナーをしてます山辺敏弘といいます。」

とあいさつをして貴子に名刺を渡した。

「はじめまして。今日、出稽古でお世話になります日本女子フライ級チャンピオンの吉見貴子です。よろしくお願いいたします。」

とあいさつをして貴子も自分の名刺を山辺会長へと手渡した。

「今回の出稽古。吉見さんが以前対戦した江麗奈ちゃんからの紹介だってね。近々、試合だってね。元同門対決だって聞いたけどがんばってね。」

と山辺会長が言うと、

「がんばります。」

と貴子は答えた。しばらくして、

「江麗奈ちゃん。吉見さん、今日がここのジムでの練習、初めてなんで女子更衣室の場所を案内して。」

と山辺会長から言われた。江麗奈は貴子に女子更衣室の場所を案内した。貴子と江麗奈の2人は出稽古先の山辺ジムで汗を流すこととなった。出稽古先での練習が始まって30分ほど経ったころだった。1人の若い女の子が練習のためにジムへとやってきた。

「吉見貴子さんと西村江麗奈さんですか。」

と聞かれて、2人同時に

「はい。」

と答えた。

「クリスマスにメイドカフェで会って以来ですね。偶然ですね。」

と若い女の子が言うと、

「ここのジムの所属ですか。」

と江麗奈が聞くと、

「はい。そうです。今から着替えてくるので一緒に練習しましょう。」

と、若い女の子が言って女子更衣室へと入って行った。着替え終えた若い女の子が女子更衣室から出てくると、貴子と江麗奈の2人の前にやってきた。

「今日が2度目となりますが、自己紹介をします。正月明けのプロテストで合格して晴れてプロボクサーとなりました藤原優奈といいます。よろしくお願いいたします。」

と自己紹介のあいさつをした。

「優奈ちゃんだって。よろしくね。」

と貴子があいさつをすると、

「よろしくね。」

と江麗奈もあいさつをした。

「実は私。江麗奈さんと同じ北国の出身なんです。」

と優奈が言うと、

「出身はどこなの。」

と江麗奈が聞くと、

「出身は新潟です。」

と優奈は答えた。

「女子なんで住環境のことは大変だったでしょ。」

と貴子が聞くと、

「そうですね。大変だった。だいたいのボクシングジムは寮のあるボクシングジムの大半が男子寮で女子は入ることができないとの回答だった。ここのジムはボクシングジムとしての開業当初は女性専用のジムとして開業したことから現在は男子選手も入会できるようになっているが、女子寮も完備されているんだ。親元を離れての住環境の関係から、ここのジムに入会。寮にも入った。今はジムの近くの寮から仕事先の秋葉原のメイドカフェへと通勤しているんだ。」

と優奈は答えた。

「江麗奈さんも北海道の出身と聞きましたけど、寮での生活ですか。」

と優奈が聞くと、

「実は私の所属先のジムには寮はありません。ジムに入会するときに所属先のジムからアパートを紹介されました。」

と江麗奈は答えた。クリスマスに会ったメイドカフェの従業員の優奈との再会もあり、思わぬ展開で盛り上がった出稽古先での1日となった。


 それから3日後のことだった。貴子の自宅の美容院に一本の電話があった。明日香の実家の美容院からだった。電話には貴子が出た。

「もしもし、美容室チャームといいます。ビューティーサロンNOKKOですか。」

「はい。そうです。」

「吉見貴子さんはおられますか。」

「はい。私が吉見貴子ですけど。」

と貴子は応じた。

「週末明けの貴子さんの試合に着用するトランクスのスポンサー広告を出したくてお電話しましたけど、夕方の時間帯は大丈夫ですか。」

との問い合わせがあった。ここで貴子は受話器を保留にして母親ののりこに相談した。

「お母さん。下北沢の美容室チャームからボクシングの試合で着用するトランクスのスポンサー契約をしたいとの問い合わせがあって、夕方に向こうで交渉したいとの電話が入っているけど、夕方から東京に出かけてもいい?」

と貴子が言うと、

「スポンサーが増えるのはいいことだね。行ったら。」

とのりこは返答した。貴子は電話口に戻り、

「お待たせしました。何時ごろにお伺いしたらよろしいですか。」

と聞くと、

「夕方6時ごろでよろしいでしょうか。」

との問いかけに対し、

「夕方6時ですね。はい。わかりました。この時間帯にお伺いいたします。」

と回答して電話を切った。電話の応対が終わってから貴子は新しいスポンサーとの交渉のため下北沢へ行くことを所属先のジムの会長に報告。この日は山辺ジムへの出稽古に行くことが正式に決まった。

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