第43話

当初は所属先の原島ジムでの練習の予定が下北沢の明日香の実家の美容院が貴子の新たなスポンサーとなることが決まり、契約のために顔合わせをすることとなり、急遽、山辺ジムでの出稽古に変更となった。スポンサー契約の新規契約交渉は15分ほどで終了。出稽古先の山辺ジムで貴子は練習することとなった。当日の練習では、既に優奈が練習に入っていた。ジムへと入ると、

「今日は出稽古ですか。」

と優奈が貴子に聞くと、

「はい。」

と貴子は答えた。

「3日前に江麗奈さんと2人で出稽古に来ていたけど、近くの美容院で髪を切ってもらっていた女子高生の練習生が話題にしてたよ。」

と優奈は言った。貴子は女子更衣室で練習着に着替えると、今日の出稽古では優奈が貴子とのスパーリングを申し込んだため、軽く1ラウンド3分2ラウンドのスパーリングをした。スパーリング終了後のことだった。

「貴子さんがスポンサー契約の交渉で行った美容院の娘さんはホテルのフロントの仕事をしているんだってね。実は、ここのホテルのフロント係の木原君という人物。実は私。知ってるんだよ。私が通っていた新潟県の高校の同級生で遥香ちゃんという人物が2年生の時に東京の高校から転校してきたんだ。実は木原君というのは遥香ちゃんが東京の高校に通っていた頃の同級生なんだ。遥香ちゃんが東京に住んでいたころに通っていた高校は調布にあり、木原君は狛江の自宅からバスで通学していたんだ。遥香ちゃんの東京に住んでいたころの自宅は調布市内にあって自転車で通学していたんだ。その遥香ちゃん。東京から新潟へと引っ越す直前まで家が篤志君の家と近所で引っ越す直前に幼なじみの篤志君と付き合いだしたんだ。この2人。高校卒業後に結婚したんだ。」

との話を優奈がした。

「そうなんだ。」

と貴子が答えると、

「遥香ちゃん。新潟に引っ越した直後にいろいろとあったんだよ。遥香ちゃんに言い寄ってくる工藤君という男子生徒がいて、遥香ちゃんは嫌がっていたんだよ。新潟に引っ越して以降は遥香ちゃんと篤志君は東京と新潟との間の遠距離恋愛となったけど、篤志君から遥香ちゃんに会いに新潟へと行ったケースもあったみたいで距離を詰めていったんだ。篤志君が東京にいる時は私が遥香ちゃんを守ってあげなきゃと思って近くのボクシングジムへと通いだしたら、ボクシングにのめりこんでしまって気がついたらプロボクサーになってしまったんだ。遥香ちゃんと篤志君が私のデビュー戦のリングを楽しみにしてるんだよ。」

と優奈が言った。

「私も近々試合だ。がんばらなきゃ。」

と貴子が言うと、

「私もプロデビュー戦で勝てるようにがんばるよ。」

と優奈も言った。当日の出稽古では優奈とのスパーリングもあったりと楽しい山辺ジムでの出稽古となった。


 試合前日計量の日がきた。前日計量の会場には貴子の対戦相手となる有美子と共に優奈の姿もあった。当日のイベントの試合順では優奈の試合がオープニングカードで貴子が有美子と対戦する予定の試合が当日のメインイベントの順番となった。前日計量は貴子と有美子は共に一発でクリア。優奈と優奈の対戦相手の選手も共に計量を一発でクリアとなった。計量終了後、貴子は優奈に近づいた。

「藤原優奈さんだってね。」

と貴子は声をかけると、

「そうよ。」

と優奈は答えた。

「デビュー戦。がんばってね。」

と貴子が言うと、

「お互いに頑張ろうね。」

と優奈は答えた。


 試合当日となった。貴子が控室で準備している間にイベントが始まった。オープニングカードで登場した優奈は最終ラウンドとなる4ラウンド目で相手から一度ダウンを奪う活躍を披露。最終的にはKOはできなかったが、序盤のラウンドでの劣勢な試合展開を跳ね返す一度のダウンでデビュー戦白星を呼び込む試合内容となった。試合終了後には、遥香と篤志のカップルとも再会を果たして、デビュー戦勝利を共に喜ぶ一場面もあった。当日のイベントでは女子の試合はオープニングカードとメインイベントの2試合のみ。それ以降は男子の試合が続いた。セミファイナルの試合が終わり、いよいよ貴子と有美子の出番が近づいてきていた。貴子と有美子の両者がリングに入場。貴子の応援に有里が大阪から駆けつけており、有里が貴子に花束を渡した。

「たかちゃん。がんばってね。」

と有里は貴子にエールを送った。

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