第29話

ホテルに到着後、江麗奈はチェックインの手続きをフロントで済ましてから荷物を部屋に置いてから、貴子とは遅れてホテルのレストランへ行くこととなった。

「江麗奈ちゃん。久しぶり。そういえば、たかちゃんと試合をして以来になるよね。」

と有美は江麗奈との貴子との対戦の試合以来の再開に喜んだ。

「勇輔君は江麗奈とは初対面だったよね。」

と貴子が言うと、

「はじめまして。昨年のクリスマスに貴子さんと対戦した西村江麗奈です。よろしく。」

とあいさつすると、

「はじめまして。貴子さんと同じジムに所属する西野勇輔です。俺、K-1に憧れています。よろしく。」

と江麗奈にあいさつをした。

「へぇー。K-1に憧れているんだ。ロシアでもK-1は有名だよ。ちなみに、勇輔君。ウエイトは何級なの?」

と江麗奈が聞くと、

「スーパーウエルター級。」

と答えると、

「スーパーウエルター級といえば、日本国内のプロボクシングでは男子でも重たいクラスで、ミドル級前後のウエイトから他のウエイトと比べて選手数が少なくなるんだ。だから、対戦相手の数ではプロボクシングよりK-1の方が恵まれていると見てるんだよね。」

と江麗奈が勇輔に聞くと、

「その通りだよ。」

と勇輔は答えた。

「勇輔君が憧れるK-1は海外でも人気で、ヨーロッパでもファンは多いみたい。私のウラジオストックに住むいとこはキックボクシングをしていてK-1のリングでも戦った経験があるんだよ。勇輔君だったら、K-1の方が結果を残すと海外での試合のチャンスも多くなりそう。勇輔君のK-1行き。私も応援するよ。」

と江麗奈は答えた。それを聞いていた春樹は、

「江麗奈ちゃんのウラジオストックに住むいとこは女の子なの?」

と聞くと、

「キックボクシングをしているいとこは男よ。」

と江麗奈が答えると、

「男性だと、体重の重たいクラスではないのか。」

と春樹が聞くと、

「私のいとこはライトヘビー級で戦ってるんだよ。」

と江麗奈は答えた。それを聞いた春樹は、

「想像していた通りだった。」

とつぶやいた。

「たかちゃん。話変わるけど、羅臼への旅はどうだった。」

と有美が聞くと、

「羅臼の道の駅の近くにある展望スポットからの国後島の眺めが良かったよ。」

と貴子が答えた。

「この旅の計画。私が貴子達の合宿の時期に休みが取れて2人で計画したんだ。当初は帯広駅のレンタカーで車を借りる予定だったんだけど、私が高校時代に苫小牧で同居していた当時大学生だったいとこが車を貸してくれたんだ。そのいとこ、帯広のタマネギ農家に嫁いでいて、この時期は農繁期ということから軽トラを運転するケースが多いので貸してくれたんだよ。」

と江麗奈が言うと、

「ちょっと、男性陣2人。江麗奈の部屋に行って、タマネギが入っている段ボール箱2つを持って来て。」

と貴子が言った。しばらくして、春樹と勇輔は江麗奈の案内の下、江麗奈の客室にまで案内されタマネギの段ボールをホテルのレストランへと持ってきた。

「私のいとこの家で作ったタマネギよ。持って帰って。」

と江麗奈が言うと、合宿メンバー達は好きなタマネギをビニール袋へと詰めた。

「春樹君もタマネギ持って帰って。どうぞ。」

と江麗奈が言ったので、

「お言葉に甘えて。」

と春樹は答えて大きめのタマネギを3個ほどビニール袋に詰めた。

「そういえば、北見のタマネギって有名だよな。当初は麗奈と一緒に来る予定だったけど、麗奈の赴任先の高校の野球部が甲子園出場を決めてしまい、甲子園への全校応援と重なってしまい引率しなければいけなくなったんだよ。麗奈は楽しみにしていたけど、旅行予定日が近づいても野球部が地方大会を勝ち抜いており、最終的に地方大会で優勝して甲子園出場が決まったんだ。ちなみに、ここの高校。夏は3度目の出場となったんだよ。江麗奈ちゃん、麗奈へのお土産にもなったよ。ありがとね。」

と春樹が言うと、

「そう言ってくれるとうれしいよ。はるくんの大好きな鉄道の分野で暗い影を落とす出来事があったんだ。北見のタマネギを大量に輸送する旭川方面への鉄道貨物の取り扱いを廃止するとの話が出て、北見近辺の農協が鉄道貨物取り扱いの存続運動をして、その成果が実って、当初は廃止で話が出ていた北見の貨物ヤードの存続が決まったんだよ。北見のタマネギはサハリンにいる親戚にも送っているからロシア料理を作るにもタマネギは必要だから死活問題だったんだよ。」

と江麗奈が言うと、

「今の北海道の鉄道事情だったら、経済活動を巡る問題でもそうだけど、私個人的にはシベリア鉄道の北海道延伸は、いずれはやらざるを得ない状況に追い込まれるだろうね。」

と春樹は言った。

「春樹君は反対の立場かもしれないが、稚内での事情を考えても、いずれはそうなるでしょうね。春樹君と同様に鉄道が好きな上の弟の忍も心配していた。」

と江麗奈は答えた。

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