第94話

貴子が所属する原島ボクシングジムからの合宿メンバーの他のメンバー達は、完全休養日となった今日は自由な時間を過ごしていた。当日は、ホテルの一室で大学入試へのテスト勉強に打ち込んでいた勇輔は昼になってホテルの近くの食堂で昼食を食べていた。昨日の夕食の時間帯に春樹に勇輔の携帯の番号を教えていたのだ。しばらくして、勇輔の携帯から電話がかかってきた。春樹からの電話だった。

「もしもし、勇輔。春樹だけど、今、遠軽にいるんだけど。時間の関係から紋別に行く予定はやめることにして、1時発の北見方面行きの列車で北見へ戻るから、順調に行けば、北見を3時に出るバスで陸別へ戻るので、予定通り行けば夕方の5時近くにはホテルへと到着する予定。」

との連絡があり、

「そうなんだ。昼飯は?」

と勇輔が聞くと、

「遠軽に着いてから昼は済ませた。帰りのバスが北見方面行きの列車に予定通り接続できなかったら、下手すると北見で夕食を済ませて、最終のバスに乗る結果になる可能性もありそうだ。」

と春樹が言うと、

「今、お昼を食べているところだけど。はるくん、紋別には行かないんだ。」

と勇輔が聞くと、

「今回は、そうすることにした。北海道へは、また行くかもしれないし、紋別へは稚内に行った時に、稚内からバスで南下するルートで今度行くこととした。」

と春樹が答えると、

「そうなんだ。夕食は一緒に食べれるね。待ってるから。」

と勇輔が答えると、

「列車の時間が近づいているんで切るよ。」

と春樹は電話を切った。


 夕方の5時近くなって貴子達の宿泊するホテルの前に北見方面からのバスが到着した。このバスに乗って帰って来た春樹は、バスから降りるとホテルの部屋に戻り、その足でホテルのレストランへ水を飲みに行った。春樹がホテルのレストランに入ると、勇輔がレストランのテーブルを使って試験勉強をしていた。

「春樹さん。おかえり。今さっき、貴子先輩から電話があって、訓子府で夕食を済ませてからホテルに戻るとの連絡があり、今日は宿泊の予約をしている西村江麗奈と共に早くても夜の8時半ごろに到着の予定だから、おそらく夜の9時前後の時間帯に到着するはずだ。との報告が有美さんからあった。」

と勇輔が言うと、

「車だったら、陸別からでも羅臼への日帰りは可能だと思うね。有美さんは、バイクでのツーリングを趣味にしているから、以前計画していたとの話を聞いたことがある。この区間での車での日帰りをしても距離があるから、朝早くに出発しても帰るのは夜になってからになるみたいだけど。」

と春樹は答えた。

「夕食の時間は6時だよな。それまで、ここで勉強しておくんか?」

と春樹が聞くと、

「5時くらいまで勉強をして、部屋で入浴してから食事とするつもりだ。」

と勇輔は答えた。

「じゃあ、それまで僕は部屋でゆっくりしておくよ。」

と春樹は言って、部屋へと戻って行った。


 それから1時間後。ホテルのレストランでは貴子を除く合宿メンバーと春樹がテーブル席に集まり、夕食を食べていた。しばらくして、有美のスマホに貴子から電話が来た。

「もしもし。」

「もしもし。有美さん。今、江麗奈と2人で訓子府駅の駅舎のレストランに到着。今から夕食だから、早くて8時くらいにはホテルに戻る予定。それから、今日は江麗奈が私達と同じホテルで1泊するから。」

と貴子が報告すると、

「訓子府を出発してからの帰り道は夜道になるんで、ゆっくり帰るんだよ。」

と有美が言うと、

「わかった。」

と貴子は答えてスマホの受話器を切った。ホテルのレストランでは夕食を済ませると、合宿メンバーのうち男性トレーナーが部屋に戻り、有美と勇輔と春樹の3人がホテルのレストランで貴子達の到着を待つこととなった。

「勇輔君の移籍先のジムに所属する美容師を目指しているプロ選手って藤原美優ではなかったかい。」

と春樹が聞くと、

「そうだよ。」

と勇輔は答えた。

「勇輔君が進学を希望している大学の近くにジムはあるの。」

と春樹が聞くと、

「そうだよ。俺、高校を卒業したら、今のジムを辞めて、あっちに移籍するつもりだ。それから、ここのジムの近くに俺の親戚が住んでいるんで、大学は自宅からでも通えるんだけど、ガッツリとキックボクシングに打ち込みたいから親戚の家から大学へ通うつもりだ。」

と勇輔は答えた。

「勇輔君には会長が言っているプロボクサーの道よりはK-1の道へと進みたいようだけど、勇輔君にとっては本当の戦いはK-1に行ってからになるだろうな。私は応援してるよ。勇輔君がK-1のリングで世界タイトルマッチを戦うことを。」

と有美は勇輔を激励した。3人がK-1の話で盛り上がる中、貴子と江麗奈は陸別へ到着。しばらくして、3人がいるホテルのレストランに顔を出した。

「ただいま。」

と貴子は3人に言うと、

「おかえり。羅臼は楽しかった?」

と有美が言うと、

「楽しかった。」

と貴子は答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る