第10話

飛行機が羽田空港に到着となり、貴子達の秋の3泊4日の北海道旅行が終わった。羽田に到着直後、麗奈が貴子に話しかけた。

「吉見さん。隣の席に座っていた人と和気あいあいと話していたけど知り合いなの。」

と聞かれると、

「実は私。プロボクサーで、今度対戦する相手と偶然にも席が隣同士となったんだ。」

と答えた。

「もしかして、西村江麗奈も同じ飛行機に乗っていたんだ。」

と麗奈は驚いていた。

「隣に、はるくん。いるよね。実は、西村江麗奈。彼女の出身地、稚内だと聞いたよ。稚内といえば、ロシアとの国境に接している街で、夏になるとロシアとの間の国際定期船航路も就航しているとの話を江麗奈から聞いた。はるくん、鉄道関心あるから興味示すのではないのかと思うけど、ここ最近の話では世界一運行距離が長い鉄道路線で有名なシベリア鉄道の北海道への延伸計画があるとの話を江麗奈から聞いた。もしかして、はるくんはシベリア鉄道の北海道延伸計画のニュースは知ってるでしょ?」

と貴子が聞くと、

「これだろ。知っとるよ。俺の鉄道マニア仲間の間では実現は不可能とのウワサが流れている。だが、ここ最近の北海道の経済事情から見ると、国鉄分割民営化でJRとなったことが災いして最終的にはシベリア鉄道は北海道まで来るかもしれない予感もするんだよ。たかちゃんは、鉄道の事は俺みたいに詳しくないんで、シベリア鉄道の北海道延伸計画の話については、この程度にしておくよ。」

と春樹は答えた。

「そういえば、北海道ではローカル線の鉄道路線が次々と廃線になっているとの話を聞く。日本国内の他の地域と比べて北海道は車の需要が高いとの話を聞く。おととい、陸別からの帰りはバスで3時間同席したけど、以前は帯広から陸別を経由して北見へ行く鉄道路線があったんだよ。ちなみに、トロッコを楽しんだ陸別の駅。廃線となった鉄道路線の一部を再利用した施設なんだよ。最終的に、これらの出来事が原因で過疎化が社会問題にもなってるみたいだ。」

と麗奈が補足した。

「そういえば、そう。レンタカー利用しようか考えていた。」

と、ちえみはつぶやいていた。

「また、北海道へ旅行したいな。俺、来年の3月いっぱいで今の職場の保育園辞めて、4月から幼稚園の先生として新たな出発をするんだ。以前と比べて休みも増えるし、今度は稚内にも足を伸ばそうかな。」

と春樹は張り切っていた。


 北海道旅行から帰った貴子は、翌日から試合へ向けての練習が本格化した。貴子がボクシング雑誌に掲載されているランキング表を見ると、江麗奈のランキングについての事で有美に聞くこととなった。

「今度の対戦相手の西村江麗奈。指名挑戦試合と聞いたけど、日本ランキングは2位なんだよね。」

と質問した。

「うちのジムの会長。指名挑戦試合の対戦相手はランキング1位の選手と決めつけていたみたいで、日本ランキング1位との試合と言っていたでしょ。しかしながら、今回は情報によると、本来は指名挑戦試合をたかちゃんと対戦する予定だった日本ランキング1位の藤川奈々が世界タイトルマッチに挑戦したけど惜しくも判定でタイトル奪取を果たせなかったんだ。おそらく、会長は藤川奈々の世界タイトルマッチの結果を知らなかったみたいだ。仮に、藤川奈々が世界チャンピオンになっていれば西村江麗奈が日本ランキング1位になっていたはずだよ。」

と有美は貴子に正確な情報を教えた。

「北海道、どうだった。紅葉も見れて楽しかったでしょ。帯広のスイーツのお土産。ありがとうね。おいしかったよ。」

と有美は貴子に帯広の土産の礼を言っていた。

 翌日のことだった。いとこのちえみは今日は仕事が休みだったため、休みを利用して貴子の母親が経営する美容院へ髪を切るために来店した。ちえみのカットの担当は貴子となった。ちえみの髪をカットしていると、

「帯広からの帰りの飛行機でたかちゃんの隣に座っていた西村江麗奈。稚内の出身と聞いたけど、今度、北海道へ行く機会があれば稚内にも行きたいね。」

と、ちえみが言うと、

「日本最北端の宗谷岬も行きたいね。できれば夏の方がいいけどね。江麗奈からの勧めでは夏に行く方がいいとの話。江麗奈のママの故郷のコルサコフにも行きたいから稚内に行く時はパスポートの申請も必要かも。」

と貴子が言うと、

「そうだよね。稚内に行く時にはサハリンへ足を伸ばすためにはパスポートの申請。私もしなくちゃ。」

と、ちえみは答えた。

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