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第13話


 2度目の日本タイトル防衛に成功した貴子は、試合が終わって以降は年末年始ということもあって家業の美容院の仕事で大忙しだった。年が明けて、3連休も明けて仕事も一段落となった貴子は、いとこのちえみとのランチの約束をしており、試合前の計量後に利用する行きつけのファミリーレストランで食事をすることとなった。ちえみとのランチの約束の前日に貴子の3度目の防衛戦の対戦相手が平山佳菜子に決定。試合は5月末に東京・後楽園ホールで開催されることも決定となったとの報告を原島会長から聞くこととなった。貴子は、ちえみとのランチの時に、3度目の防衛戦の対戦相手と試合の日時について報告した。それから、しばらくして、

「たかちゃんの次の試合の予定は決まったけど、試合への本格的な練習。2月以降になるんでしょ?そこでだけど、来週末明けに火曜日から3日間連続で休みとなるんで、この休みを利用して旭川の方へ行って、旭山動物園のペンギンの散歩を見るつもりだけど一緒に見に行かない。」

と、ちえみが提案した。

「1月の旭川はメチャ寒いけど、ペンギンの散歩は旭山動物園の冬の風物詩で有名だから見に行きたいよ。」

と貴子は答えた。

 その日の夕方に、ちえみから旭川への旅行に誘われたことを母親ののりこに報告すると、

「旭山動物園のペンギンの散歩は私も見に行きたいんだよね。だけど、私も行ったら店を休みにしなければいけないからね。ちえみちゃんに誘われたんでしょ。旭川でしょ。思いっきり楽しんでおいでよ。後で、旭山動物園のペンギンの散歩のことについても報告してね。」

と言われてしまった。正式に、ちえみと旭川への旅行へ行くことが決まった貴子は、翌日のジムでの練習の時にトレーナーの有美にも報告した。

「来週は練習、旭川への旅行で3日間休むんだって。試合が終わってから時間も経っていないから本格的な練習は2月に入ってからにするつもり。旭山動物園のペンギンの散歩かー。私も実は見たいんだよー。思いっきり楽しんでおいでよ。」

と有美は答えた。

 次の週末明けに貴子とちえみは2泊3日の行程での旭川への北海道旅行を楽しみ、旭山動物園のペンギンの散歩も見ることとなった。しかし、北海道への旅行から帰って来た週末明けのことでした。貴子は体調を崩してジムへの練習を休むことになり、38度の熱も出してしまい病院で診察を受けることとなった。病院での診察結果はインフルエンザとの診断を受け、1週間仕事と練習を共に休むこととなった。診察室で貴子が診察を受けていると、ここの病院の看護婦から声をかけられた。

「もしかして、あなたがプロボクサーの吉見貴子さんですか。」

と聞かれたので、

「はい。」

と貴子は答えた。しばらくして、

「はじめまして。今度、吉見貴子さんと対戦することとなった平山佳菜子です。偶然ですね。よろしくお願いします。」

との返事だった。貴子が診察を受けた小田島内科に佳菜子は看護婦として勤務していたのだ。診察を終えて貴子が薬を受け取ると、帰り際に、

「インフルエンザ、早く治してね。お大事に。」

と佳菜子が言っていた。

 それから10日ほどが経って、貴子はジムへの練習に復帰。既に暦は2月になっており、試合へ向けての本格的な練習が始まった。ミット打ちが終わって休憩となると、

「たかちゃんがインフルエンザにかかったときに診察を受けた小田島内科に平山佳菜子が看護婦として勤務していたことは以前から知っていたよ。今度の対戦相手。昨年の春先にフライ級の東洋太平洋タイトルを返上して世界タイトルマッチに挑戦。この時に平山佳菜子が世界タイトルマッチで対戦したのが、現在5度のタイトル防衛をしている澤木優子で、6度目の防衛戦の対戦相手として平山佳菜子が挑戦。試合は10ラウンド戦って判定となり惜しくも敗れた。たかちゃんとの対戦の試合は世界タイトルマッチ再挑戦へ向けてのテストマッチも兼ねているみたいだ。平山佳菜子は空手で世界チャンピオンとなったのを機にキックボクシングでプロデビュー。キックボクシングでもチャンピオンとなり、キックボクシング時代に利用していた出稽古先のヒカリジムへボクシングへ転向するため、3年半前に移籍。プロボクサーに転向して以降も空手やキックボクシングの時と同様に結果を残してきた強敵と聞く。ちなみに、ファンの間では『戦う美人看護師』とも呼ばれているんだって。」

との話を有美から聞くこととなった。

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