第14話

それから2日後。貴子は杏奈が所属する大西ジムへと出稽古に行っていた。そこで、過去二度の貴子の防衛戦の試合内容と今度対戦する平山佳菜子の情報を知っていた大西会長は、

「3月の末に静岡の下田で1週間ほど合宿するけど、吉見選手も参加しますか。」

との誘いがあった。

 翌日、貴子がジムへと練習に行ったら、ジムに入ったと同時に原島会長がやって来て、

「昨日、たかちゃんが大西ジムに出稽古に行っている間に大西会長からジムへと電話がかかってきて、3月末の大西ジムの下田での1週間の合宿に誘われたんだってね。ここ最近の二度の防衛戦の試合内容を見ていると、日本タイトルマッチは8ラウンドから6ラウンドに短縮されたけど、今後の東洋太平洋タイトルマッチや世界タイトルマッチを戦う上ではスタミナが心配だと思うんだ。そこで、トレーナーの有美と相談して参加させる方向で話を進めているんだ。今後の試合へ向けてのスタミナをつけるためにも下田での合宿に参加しなさい。」

との報告があった。

 それから1ヶ月後。貴子は下田での1週間の合宿へ向けての荷造りをしていた。

「明日から1週間。店は私1人になってしまうけど、貴子が試合に勝つためだからね。試合に勝てるように応援してるから。がんばっておいで。」

とののりこからのメッセージがあった。その翌日から、貴子は下田での1週間の合宿へトレーナーの有美と大西ジム所属の3人の選手と共に出かけることとなった。所属選手の3人の中には、有給休暇を取得して参加した杏奈の姿もあった。今回の合宿はトレーナーを含めて8人の参加となった。下田への到着の翌日から本格的なトレーニングが開始。坂道ダッシュを中心にした足腰とスタミナをつけるトレーニングが中心となった。ちなみに、1週間の合宿の日取りは、最初の3日間トレーニングを行い1日休んで後半の3日間トレーニングを行う行程となっていた。最初の3日間のトレーニングの2日目のことだった。トレーニング中に杏奈の母校の順心女学院高校サッカー部の合宿と遭遇することとなった。杏奈の故郷は静岡県の焼津で、高校生活の3年間は焼津の実家から藤枝にある順心女学院へと通っていた。しばらくして、順心女学院高校サッカー部のゴールキーパーのユニフォーム姿の女の子が杏奈のところに近づいてきた。

「杏奈お姉ちゃん。杏奈お姉ちゃんのジムも、ここで合宿だと聞いていたけど、まさか、ここで遭遇するとは。」

「奈穂もサッカー部の合宿。下田でやると聞いていたけど、こんなに近くだったとは知らなかったよ。冬の大会は、あと1勝で全国大会出場のところで敗れて行けず。年末年始に神戸で開催の全国大会へは出場できなかったんだよね。夏は全国大会へ行けるように。がんばってね。」

とのメッセージを杏奈は奈穂に送った。

「杏奈お姉ちゃんも2ヶ月後に後楽園ホールで試合だってね。私はサッカーがんばるんで、杏奈お姉ちゃんもボクシングがんばってね。」

とのメッセージを奈穂は杏奈に送った。

しばらくして、

「杏奈、静岡県の出身だってね。」

と貴子が言うと、

「そうだよ。高校卒業するまでは本当に楽しかったな。たかちゃんは中学校時代バレー部に入っていたと聞いたけど、私の2人いるもう1人の妹は中学校と高校はバレー部に所属していた。今さっき会った奈穂から見ると姉になるんだ。」

と杏奈は言った。

「杏奈の上の妹も杏奈と同じ高校に行っていたの。」

と貴子が聞くと、

「上の妹は地元の公立校に行ったんだ。高校時代に所属していた高校のバレー部は実力は大したことなく地方大会の初戦で敗れて帰って来ていた。ちなみに、私の行った高校にもバレー部はあるが、上の妹の行った高校と実力は変わらない。下の妹が所属しているサッカー部とは違い、バレー部は地方大会の初戦で敗れて帰って来てるんだ。だけど、下の妹が所属しているサッカー部は強豪でOGの中にはなでしこリーグのチームに所属している先輩もいるんだって。現在、私の母校のサッカー部を指導している監督は私の同級生で大学卒業後に3年ほど、なでしこリーグのチームに所属してプレーした実績があるんだよ。」

との話を杏奈はしていた。

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