第22話

しばらくして、春樹と裕二が会話中に『ゆかたダンサーズ』のライブを観るため席を離れていた貴子と江麗奈の2人が春樹のいとこの弥生と弥生の娘の美月と共に座敷席へと戻ってきた。

「春樹。いよいよ、大井の夜景が見れるよ。上の方へ行こうよ。」

と弥生が誘った。

「あー。もう、ここまで来てるんか。行こう。行こう。」

と春樹は答えた。実は、弥生は春樹が鉄オタの他に工場夜景萌えであることも知っていたのだ。

「『ゆかたダンサーズ』のライブも良かったけど、船からの夜景を見るのもいいね。私達も一緒に行くから裕二君も行かない?」

と貴子が裕二を誘うも、

「俺はここにいるよ。ゆっくりとしたいから楽しんで来な。」

と答えた。

 貴子達5人は『ゆかたダンサーズ』のライブが行われているデッキに行くと、春樹は食べ物を売っている売店を見つけ、クレープとフライドポテトを購入した。しばらくして、船から大井の夜景が見えると、春樹はクレープとフライドポテトを持った手と反対の手からデジタルカメラをズボンのポケットから取り出して、大井の夜景を撮った。春樹がデジタルカメラをポケットにしまってから、しばらくすると、弥生がスマホの写メで撮った夜景をSNSへとアップすると、弥生は貴子と江麗奈の2人を呼んで弥生の娘の美月と共にスマホの写メで自撮りをして盛り上がっていた。そうやって盛り上がっているうちに時間は過ぎていき、しばらくして、船内放送が流れてきて、船は間もなく竹芝桟橋へと到着するとのアナウンスがあった。アナウンスを聞いた貴子達5人は席へと戻って下船の準備に入ると、船は竹芝桟橋へと到着。楽しい船旅は終わり、貴子たちは船から降りた。船から降りてから、しばらくして、

「はるくん。電車の時間は大丈夫なの。」

と貴子が聞いた。

「そういえば電車で行くケースが多いな。心配してくれていたんだ。今回は、麗奈の同僚の結婚式に麗奈が行っているんで、電車で行っても終電に間に合うかどうか微妙なので車で来たんだ。麗奈から連絡が来るまで秋葉原あたりで、ゆっくりしようと思っているんだ。」

と春樹は答えた。

「はるくんが車で来るなんて珍しいね。江麗奈、どうする。江麗奈のアパートまで送ってもらう。」

と貴子が江麗奈に聞くと、

「そうね。送ってもらおうか。」

と江麗奈は答えた。

「秋葉原でメイドカフェで時間つぶそうかと考えていたのに・・・。勝手に送ってもらうなんて決めるなや。だけど、夜遅くの時間帯に若い女の子を街中で歩かせるのは危ないから送ってやろか。いいよ。」

と春樹は2人の要求に応じた。

「ヤッター!」

と貴子は春樹の車で送ってもらうことを喜んだ。春樹の車のある駐車場までの道中のことだった。

「そういえば、江麗奈ちゃん。江麗奈ちゃんの出身地は稚内だったよね。」

と春樹が聞くと、

「そうよ。ここ最近、たかちゃんと春樹君の話をしたんだよ。鉄道好きだってね。実は、私にも2人弟がいて、高校3年で大学受験を控えている上の弟の忍が春樹君と同様に鉄道好きなんだよ。春樹君も知っていたみたいだけど、ロシア国内ではシベリア鉄道の北海道への延伸構想の話が日本以上に話題を呼んでいるみたいだ。シベリア鉄道の北海道延伸構想。忍は大賛成なんだよ。実は、私の母親はロシア人で故郷は宗谷海峡の向こうのサハリンのコルサコフなんだ。今は稚内とサハリンとの間に夏の間の季節限定ではあるんだけど船の定期航路が就航中なんだ。しかしながら、向こうに行くには船が通っている海の上が国境となっており、パスポート申請やビザの申請といった手続きもしなければと面倒な部分もあるみたい。だけど、忍は夏休みになると、ほとんど毎年のようにサハリンの祖父母のところへと遊びに行くようで。忍は小学生の時から私の母親からロシア語での会話を望んで、あえてロシア語で会話するケースも頻繫にあるみたいだ。そういったことから、おととしの夏休みにサハリンへと遊びに行った時には鉄道でサハリンを縦断して列車で北緯50度線を超えて写真も撮ってきたみたいだよ。」

「へえーっ。そうなんだ。僕個人的にも海外の鉄道にも興味があり、極東ロシアからモスクワまでのシベリア鉄道横断の旅にも憧れはあるんだよ。しかしながら、お金もかかるし、旅行するにも連続して2週間も休みも必要で・・・。だから、鉄道での大陸横断となるとオーストラリアからとなるのかな。」

と江麗奈の話に興味津々だった。しばらくして、駐車場に到着。春樹が自分の車のロックを解除すると、待ってましたと貴子が助手席のドアを開けて助手席に座ってしまった。

「こ、ここは・・・。」

と春樹が言うと、

「今日はワタシが、ここの席に座るの。いいね。」

と貴子が春樹に助手席に座りたいとアピールしたのだった。

「たかちゃん。春樹君には彼女がいるんよ。彼女が来るまでだよ。わかった?」

と江麗奈は貴子を説得。

「わかった。」

と貴子は返事した。

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