第37話

しばらくして、貴子たちが乗ったロマンスカーは江ノ島方面へ向けて発車した。電車が発車して以降も貴子たちの話は盛り上げっていた。

「そういえば、春樹君。今日は午前中にメトロ直通のロマンスカーに乗ったんだってね。」

と理佐子が言うと、

「そうだよ。」

と春樹は答えた。

「貴子から聞いた話だと春樹君の彼女が赴任している先の高校。来週の週末に文化祭だってね。幻に消えた川崎市営地下鉄の研究を披露するんだってね。私の住んでいる川崎は地域によって交通事情大きく異なるんだよな。私の住んでいる新百合ヶ丘の近辺は地下鉄ができれば将来的には羽田空港へのアクセスも良くなると期待も大きかったんだ。残念ながら川崎市営地下鉄は幻に終わったが、近い将来に横浜の地下鉄が新百合ヶ丘まで延伸されることとなるんだ。今は、あざみ野で地下鉄は終点となっているが、あざみ野から新百合ヶ丘までの区間が地下鉄で結ばれると羽田空港へのアクセスも良くなるのではと期待されているんだ。成田空港へのアクセスも良くなるとの噂もあるみたいだ。」

との話を理佐子がすると、

「この計画。無理があったと思うよ。同じ電車の線路でも規格が違えば走ることはできない。電車でも在来線の線路で新幹線を走らせることができないのと同じように、新幹線の線路で在来線の電車を走らせることもできない。日本国内の私鉄では会社によって線路の規格が違うんだ。東京近辺だと私鉄の車両がJRの線路を走ったり、逆にJRの車両が私鉄の線路を走ったりするケースを見ることが多いよね。だけど、こういった現象が起きているのは簡単に説明すると線路の規格が同じだからできるんだ。だから、わかりやすく説明すると同じ器の線路だからこそ乗り入れが可能なんだ。線路にだって車輪の幅があるんだ。車輪の幅が違えば走らせることはできない。東京近郊の私鉄でも京王、京急、京成の3つの会社の電車はJRと同じ規格の線路に乗り入れることができない。JRと違う規格の線路の3つの会社のうち、京急と京成の2社は線路の規格が同じだから乗り入れはできるが、この2つの会社と線路の規格が違う京王については乗り入れることはできないんだ。一時期、異なる規格の線路同士で乗り入れをする電車の開発がされていたから、それに目をつけて川崎市交通局は地下鉄の小田急と京急の2社間の相互乗り入れを計画したんだ。だが、この夢の電車の開発。海外では実用化されたが、日本では実用化されず、計画もJRでは中止となったんだ。関西の私鉄では一部例外があるんで、ざっくりと言えばね。ちなみに、世界の鉄道の事情でも日本とロシアは線路の規格が違う。ロシアはシベリア鉄道の北海道への延伸を計画しているけど、この計画は日本は乗り気ではない。日本はロシアとの政治的な関係もあって、それには消極的なんだ。川崎の地下鉄計画の中止は、それも背景にあるのではと思われるね。」

と春樹は力説した。

「私、ボールペン使うこと多いけど、ボールペンの芯にしても型の合う替え芯でないと入らないよね。」

と理佐子が言うと、

「学生時代に使っていたシャーペンにしても芯の太さが合わないと書くことできなかったね。」

と貴子も言った。

「理佐子さん。そういえば、横浜の地下鉄と京急は線路の規格が同じだから、もしかしたら新百合ヶ丘から羽田空港や成田空港への直通電車が実現するかもしれないね。」

と春樹が言うと、

「そうなれば、羽田や成田への空港へのアクセスも便利になるだろうね。」

と理佐子は答えた。

「江麗奈の弟の忍の夢。やっぱり、ハードル高いんだよなー。」

と貴子が言うと、

「シベリア鉄道の北海道への延伸構想。実現は厳しいと思うね。だけど、JR北海道の経営状況から考えると下手するとロシアに助けてもらわなければいけない事態も想定した方がいいね。詳しい内容を話していたら長くなってしまい、話の途中で新百合ヶ丘に着いてしまうので今回は話さない。日本国内の鉄道の建設計画で、こちらの構想に向けての抜け道になるかもしれない計画が関西であるみたいだ。」

と春樹は言った。そう言ってるうちに車内放送が流れてきて、間もなく新百合ヶ丘へ到着とのアナウンスが流れた。アナウンスが流れて2分くらいで貴子たちが乗ったロマンスカーは新百合ヶ丘に到着。有美子と理佐子は新百合ヶ丘で下車となり、相模大野へ向けて引き続き乗車となる貴子と春樹の2人は窓越しから新百合ヶ丘の駅のホームへと降りた有美子と理佐子の2人に手を振って別れた。

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