第104話
ロマンスカーは次の停車駅となる相模大野へ向けて動き出した。貴子の隣の席に座った春樹は相模大野で降りるので2人が同じ席で隣り合っての旅は10分足らず。貴子にとってはプロボクサーになった当時夢見た幻に終わった恋のロマンスに心を弾ませていた。
「後楽園ホールへ向かう行きの電車で麗奈さんと生徒たちに会って途中まで同じ電車に乗り合わせたんだ。そういえば、麗奈さんの赴任先の西浜学園。来週が文化祭だったよね。」
と貴子が聞くと、
「そうだよ。生徒たちを引率して蒲田へ行ってたんだよ。蒲田で文化祭の出し物の調査をしてから、息抜きに羽田空港へと立ち寄って飛行機を見ながらランチを楽しんだとの連絡があったんだ。羽田からの帰りはモノレールで浜松町を経由して学校へと戻ったとの報告があったんだ。来週の文化祭の出し物。あざみ野から新百合ヶ丘へのバス旅と共に、蒲田での研究テーマも楽しみなんだ。」
と春樹は言った。それを聞いた貴子は
「そうなんだ。」
と答えた。しばらくして、車内放送が流れて間もなく相模大野へ到着とのアナウンスがあった。アナウンスから1分くらいでロマンスカーは相模大野に到着。春樹はロマンスカーから降りた。相模大野の次の駅の大和まで乗る貴子は車内の窓越しから相模大野の駅のホームへと降りた春樹に向かって手を振っていた。
それから2週間後の土曜日。貴子が以前グローブを合わせたライバルの杏奈が仕事が休みとなり、前日の金曜日が早番で午後6時で仕事が終わるローテーションだったことから、仕事が終わった当日の名古屋方面行きの最終便に近い新幹線で、土曜日に試合が予定されている杏奈の妹の奈穂の応援に行くこととなった。前の週の週末に開催された西浜学園の文化祭の帰りに貴子のスマホに杏奈からのメールが届いており、貴子は杏奈と共に名古屋まで女子サッカー観戦に行くこととなった。前日の金曜日は杏奈が予約したビジネスホテルで1泊。奈穂の試合当日に朝にチェックアウトしてから貴子と杏奈は奈穂が試合をするサッカーの試合会場へと向かった。試合は昨年の雪辱を果たして勝利となり、奈穂が所属する順心女学院は神戸で開催される全国大会への出場権を獲得となった。帰りの新幹線での出来事だった。杏奈が西浜学園高校の鉄道研究部の出し物の川崎市営地下鉄の研究関連で、こんな話をしてきた。
「静岡への里帰りは高速バスを利用するケースが多いね。私の里は焼津なんで三島か沼津あたりで電車に乗り継ぐこととなるんだけどね。鉄道の利用だと三島まで踊り子という特急を利用して三島から電車で焼津へと帰るルートが一般的だね。だけど、焼津に住んでいるいとこの遥が鉄道好きで鉄道研究部のある高校に入学して鉄道研究部に入部したんだ。ちなみに、部員は大半が男子で女子は遥を含めて2人。焼津に帰って遥の部屋に入ると四国を中心に運行されているアンパンマン列車の模型を飾っていたんだ。東京から焼津までの電車での移動の運賃のことを遥が私に聞いてきたら、踊り子での移動は新幹線よりは割安だけど、在来線の利用では料金が割高と言ってきたんだ。もっと安く行ける方法はあるのかと聞いたら、あると答えた。どういう方法なのかと聞くと、小田急線の新宿駅始発のJR御殿場線直通の『ふじさん』という特急電車で御殿場まで出て、御殿場から沼津を経由して焼津に行く方が料金が安いとの説明だった。実際に、このルートで焼津へと帰ったことがあったけど、乗り換えが面倒だったけど料金的には安く上がったんだ。」
と杏奈は言った。
「そういえば、この話。はるくんが言っていたよ。ここ最近は、JR線と大手私鉄路線の相互乗り入れが関東では活発だと聞いた。その元祖は小田急で、JR御殿場線の松田駅構内にはJRの線路と小田急の線路を結ぶ引き込み線があり、国鉄時代からJRと小田急は相互乗り入れをしていたとの話を聞いた。もし、このルートで行く機会があったら、一緒に行こうよ。」
と貴子が提案すると、
「おもしろそうね。」
と杏奈は答えた。東京への帰りの新幹線では東京と静岡の間の電車の移動の話で盛り上がった。
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